JTBグループはマイナビと日本経済新聞社が共同で行った「2020年卒 大学生就職企業人気ランキング」で文系総合一位になった人気企業だ。

  • 「2020年卒 大学生就職企業人気ランキング」(文系総合)

同社は10年以上にわたってグループ採用を実施。2020年度もグループ14社合計で約600人程度の採用を予定している。またJTBグループでは、独自の自社イベント「JTB Summit」(以下、Summit)を開催し、毎年7000人以上の学生を集めている。

  • これまでのJTB Summit(2018年度実施)

JTBグループでは2013年からインターンシップを実施している。グループインターンシップを行う理由について、JTB 人事部 人事チーム 松西春聡氏は、「JTBは旅行だけでなく、グループ全体でいろいろな事業展開を行っているという魅力を知ってもらう狙いがあります」と説明する。

  • 株式会社JTB 人事部 人事チーム 松西春聡氏

現在の就職活動は、「多様化」と「早期化」という2つのキーワードに集約される。

実際に、マイナビが8月7日に発表した 「2020年卒マイナビ大学生就職内定率調査」によれば、4月の内々定率は39.3%と2018年度卒と比べて16.3%増加。5月の内々定率は61.8%と2018年度卒と比べて8.5%増加するなど、内々定の早期化が進んでいる。

  • 「2020年卒マイナビ大学生就職内定率調査」

JTB 人事部 人事担当マネージャー 小田亜希子氏は、「最近は学生の売り手市場と言われており、世の中の環境変化も加速しており、数年先を予測して戦略を考えていくのが非常に難しくなっています。そのため早い段階から多くの学生にJTBグループについて知っていただく必要があり、そのきっかけづくりとしてインターンシップを実施しています」と語る。

  • 株式会社JTB 人事部 人事担当マネージャー 小田亜希子氏

また同社は多様な学生のニーズに対応するため、採用活動のICT化も進めている。その1つがSummitのWeb化だ。

「経営方針として、デジタルに力を入れていくというメッセージを出しているので、インターンシップ活動においても、それに対応していこうとしています。今回、SummitをWeb化していこうというのもその1つになります」(松西氏)

イベントをWeb化するメリットについて、JTB 人事部 人事担当マネージャー 荒木喜之氏は、「この2年、学生の最適なタイミングを模索しながらイベントの開催時期を変更してきましたが、どのイベントにおいても、『最近、活動を始めました』と話す学生がいます。今年は、10月10日(木)にJTBグループでは初の試みとしてWeb Summitを実施します。これによって、日本国内のすべての学生だけでなく、世界中の学生にも視聴いただくことが可能となります」と説明する。

  • 株式会社JTB 人事部 人事担当マネージャー 荒木喜之氏

ただ、リアルなイベントをすべてWebにシフトしていくということではなく、Webはあくまでリアルイベントを補完するものだという。

「Web Summitは、これまでに接点が持てなかった学生に対して、JTBの基本的な部分を知っていただくというのが主な目的になります。Web SummitでJTBは旅行だけでなく、いろいろなことをやっているということを知ってもらえれば、グループ会社への興味も広がります」(小田氏)

  • Web Summitの放送スタジオ

  • Web化で遠方の学生も自宅で情報を得ることができる

また、最近は実験的な取り組みとして、1分間の自己PR動画をインターンシップ書類選考の1つの要素として採用している。

「一部のインターンシップにおいてもICT化を推進しています。参加者一人ひとりにiPadを貸与し、必要なデータ、課題を参照してもらいながら取り組みを行っています」(小田氏)

インターンシップの広報や選考のICT化について松西氏は、「5、6年先には、『昔は直接足を運んで、説明会に参加していたらいしいよ』と、学生が言っているかもしれません」と冗談を言うが、一方で、Web化が進むとOBとの交流など、ヒューマンタッチが減ってしまう懸念もある。

「OBに会うことによって、実際の現場や仕事の話を聞くことができますが、すべてがWeb化されてしまうと、そういった接点をつくることができなくなります。そのため、Web Summitを入り口としてJTBグループに興味を持ってもらい、リアルなイベント(インターンシップ)に来ていただければと思います」と小田氏は、Web Summitはあくまで最初の接点づくりだと語る。

今後のWebとリアルのバランスについて荒木氏は、「マーケットを見ながら最近のデジタルネイティブ世代に対応しつつ、リアルな接点も持っていきたいと思います」と、一気にWeb化を進めるのではなく、あくまで市場を見ながら柔軟に対応していく意向であることを強調した。