Bluetoothデバイスをスマートフォンやパソコンで利用するときは、原則として事前に「ペアリング」という登録作業が必要になります。イヤホン/ヘッドホンやスピーカーなどBluetoothオーディオ機器も、ペアリングが完了した2台の機器間でオーディオデータをやり取りする決まりです(A2DPプロファイル)。
しかし、ペアリングは機器導入のハードルになるため、その処理を軽減する技術が開発されました。Appleの「AirPods」で実現されているペアリングアシスト機能はそのひとつで、充電ケースのフタを開けると近くにあるiPhoneが反応、ボタンをタップする程度でペアリングが完了するしくみです。この機能は、AirPodsに搭載されているApple独自の通信チップ「W1」(最新モデルでは進化版の「H1」)とシステムソフトウェア(iOS)の連携により実現されており、他の組み合わせでは通常のペアリングになります。
Googleが開発した「Fast Pair」は、AirPods同等の機能をAndroid端末で実現します。2017年の発表当初はGoogel Pixel専用でしたが、現在ではAndroid OS 6.0/Google Play 11.7以降が動作するAndroid端末すべてで動作します。
Fast Pairを利用するには対応するイヤホン/ヘッドホンが必要になりますが、ペアリング前のイヤホン/ヘッドホンをAndroid端末へ近づけるだけで画面に通知が現れ、それをタップするとペアリングが完了します。AirPodsとは異なり専用ICを使わず、Bluetooth LEとGoogleのクラウドサービスを使い同等の機能を実現しています。次期OSのAndroid Qでは、充電ケースバッテリー残量の表示や紛失したイヤホンを探す機能も追加される予定です。
なお、2019年7月現在、Fast Pair対応イヤホン/ヘッドホンはGoogle Pixel Buds(日本未発売)など多いとはいえない状況です。イヤホン/ヘッドホンメーカーの協力なくしては実現できない機能ということもあり、開発支援体制強化が期待されます。