トーメックスでは、IoTパッケージ導入による業務効率化や若手育成に関する効果を感じているという。さらに「エラー自体は同じでも、その発生に至る流れが実は違っていたということもあります。また同じエラーが頻発するのならば、その原因究明や改善につなげることができます」と業務改善への活用も滝沢氏は期待する。

IoT活用が、工場を抱える中小企業への普及が進まない理由について、浅子氏は「メーカーも以前から機器の稼働状況を遠隔検知できる方法は提供していました。しかしそれを利用すると具体的に何が変わるのかが現場では実感しづらかったと思います。また、大規模なIoTソリューションだと機器内部の基板に手を入れる方式が多いので、コスト負担が大きく、メーカーとの煩雑なやりとりも発生します。効果があるのかもしれないですが手はつけられないという状況でした。我々も導入したことで、いろいろなことが見えて、意識が変わってきました。業界的にもようやくIoTで何を見るべきかがわかってきたというところでしょう」と語る。

NTT東日本の「工場向けIoTパッケージ」では、パトライト製の信号機が取り付けられることだけが条件となっており、この信号機は後付けできる。また、信号機自体を保有しているならば、センサーの追加も簡便だ。稼働、正常停止、異常停止という簡易な信号だけが取得され、それに連動してカメラを活用する状態だが、現場としてはこれで十分だという。

「知りたいのは稼働率です。機器内部から情報を得る大規模なIoTでは多彩な情報が得られるのでしょうが、正直なところ情報が多くても我々現場の人間はどこを見ていいのかわかりませんし、数字で示されても実感しづらいのです。必要な情報をグラフ等を利用して稼働率をわかりやすく見せてくれる、これで十分です。まだグラフがわかりづらいと感じるので、どんどん意見を出してもっと直感的にわかるようにして欲しいと依頼しています」(小林氏)

トーメックスでは今後、さらに他の機器へのIoTパッケージ導入や、本社工場のネットワーク設備刷新、他工場への展開なども見込んでいるという。

NTT東日本 ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 阪本友一郞氏

「工場向けIoTパッケージは、専任のIT担当者がいない企業はもちろん、パソコンのことはまったくわからないくらいの状態でも利用していただけるように作っています。サービス自体にIoTサポートが含まれているものですから、安心して使っていただけます。現在、すでに工場向けIoTパッケージを展開中ですが、さらに安全管理や材料管理、HACCP取得といった多彩なニーズに対応するための実験も行っています」と、トーメックスをサポートするNTT東日本 ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当 阪本友一郞氏は、IoTの活きる場として「見える化」だけではないエリアにも注力していきたいと語った。