4月15日、NTTドコモが新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表しました。6月1日から提供を開始します。同社では「シンプルな2択、最大4割おトク」とアピールしていますが、発表会場では「使い方によっては、あまり安くならない」「期待していたものと違う」といった声もあがりました。このドコモ新プラン発表会の模様をお伝えしましょう。
約束されていた新料金プラン
昨年(2018年)10月の決算会見で、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏は「2019年の第1四半期に、携帯電話の料金を2~4割ほど下げる新料金プランを発表する」と約束していました。これにより、最大4,000億円規模のお客様還元になる、とも。15日、突如発表されたこの新プランで、早くもその約束が果たされた形になりました。
最大4,000億円の中身は?
その「最大4,000億円のお客様還元」の内容について、改めてメディア関係者から説明を求められると、吉澤社長は「新料金プランの適用により値下げが実施されるため、減収となります。しかし、現行プランの『月々サポート』『docomo with』『端末購入サポート』が終了する(新規受付は2019年5月31日に終了)ので、これは収益にプラスに働く。そのプラスマイナスを勘案したものが最大4,000億円のお客様還元であり、新料金プランの適用が落ち着いた数年後に、この規模になっていると予想しています」としました。
2019年度は減益で考えており、収益が元の水準に回復するのは2023年頃と見込んでいますが、2023年という期間にこだわるつもりはなく、極力、回復を前倒しする努力を続けていくとしました。
他社プランとの比較
今回の新プランは、総務省が提言する「端末代金」と「通信料金」を分離する「完全分離プラン」に沿ったものといえます。
他社の提供する分離プランと比較したときの強みについては「ギガホ利用時にデータ容量の30GBを超えたとき、速度制限が1Mbpsのまま使えます。これは動画、SNSなど、ほぼすべてのコンテンツを利用できるということ。MVNOのサービスのように、混雑時に速度が落ちることもありません」と回答。また他社とは違い、使うデータ容量の大きさに関わらず、すべてのプランで家族割を適用できるのも強みとしました。「細かな分かりにくい条件は撤廃しました」とも語りました。
さらに値下げの可能性も
今後、さらに値下げをする可能性については「楽天さん、2社さん(KDDIとソフトバンク)の出方によっては、対抗プランを出すことも否定できません。中身を見た上で判断ということ。料金だけでなく、サービス、LTEの品質、アフターケア、スマホ教室など、総合的な観点で今後ともお客様還元を実施していきます」としました。
「分離プラン」でスマホは高くなる?
「端末代金」とデータ通信などの「通信料金」を分離した分離プランの導入により、キャリアが端末代金を割り引けなくなる(=つまりスマホの販売価格が高くなる)ことが予想されます。
そこで端末の購入補助について聞かれると「まったく提供しない、ということではありません。お客様が少しでも新規端末をお求めやすくなるよう、アイデアを検討中です。新しいモデルの発表会でご紹介できたら」とコメント。何らかの方法で、今後も購入補助を提供していきたい、という考えのようです。ただ、不健全な値引き、キャッシュバックはなくなると断言する吉澤社長。
この後も、スマホの価格について質問があがりました。吉澤社長は「例えばミッドレンジと呼ばれるような4万円以下のスマホについて、最近のモデルでは性能はほとんど見劣りしません。キャリアアグリゲーションに非対応、という違いはあるかも知れませんが、デザインも良いものが増えている。そうしたラインナップを、これまで以上に強化していく。その一方で、フラッグシップ機についてご興味、関心、愛着をお持ちのお客様に向けても、お求めやすい工夫をする。端末の補助についてどんなアイデアが出せるか検討している段階です」と説明しました。
テザリング料金は?
テザリングの料金について聞かれると「従来はネットワークの設備に対する懸念があり、テザリング料金を設定した上で、キャンペーン期間中として無料で提供していました。いまは懸念がないことが分かったので、テザリング料金は設定していません」と回答しています。
新料金プランがこのタイミングで発表されたことについては「昨年の中期戦略で宣言した、約束の時期になったということ。今年度の下期には、新規の通信事業者も参入します。市場環境が変化することを想定して、先んじて競争力を強化する必要があります。マーケットリーダーになるべく、早めに実行に移したということですね」。
2年縛りは?
次世代の通信規格5Gを見据えたプランか、という質問には「そういうことではありません」と否定。5Gの商用化がスタートしたときに、改めて別プランを用意する考えを示しました。その上で、5G時代の料金体系のあり方については「新しいサービスと通信料金を一体化した形も考えています」としました。
2年縛りについては「今回の新料金プランも、2年契約が前提。途中解約は違約金が発生します」と説明。なお、新たにガイドラインが示された際には、その規則に従うとしています。違約金は9,500円のまま、更新期間についても25カ月目からの3カ月間で変更はありません。
あまり安くなっていないのでは?
メディア関係者からは、あまり安くなっていないのではという意見も出ている、と指摘されると「現在、ドコモのスマホ利用者の40%は月のデータ使用量が1GB未満。この利用者が4割安くなります。また、キャンペーンや細かい条件を撤廃して割引できる対象者を増やしました。ギガホでは30GBを超えても下り1Mbpsでインターネットが使えるので、ほぼ使い放題に近い。このあたりは、自信を持っている部分です」。
しかし「使い方によってはそんなに変わらない、あるいは1人で使う方には必ずしもすごい恩恵がない場合も出てくる。個別には、値下げ効果が薄いと感じる方もいらっしゃるかも知れません」と、やや回りくどい言い方をした吉澤社長でした。
メディア関係者の間でも、様々な意見が出たドコモの発表会。では現行のドコモユーザーは、すぐに新料金プランに移るべきなのでしょうか。もちろん使い方にもよりますが、大半のユーザーは「月々サポートが終了したタイミングで新料金プランに切り替えると安くなる可能性がある」というのが実際のところでしょう。すでにドコモのホームページでは、料金シミュレーションが提供されています。まずは、そちらを利用してみると良いかも知れません。
夏モデルの価格はどうなる?
囲み取材には、NTTドコモ 経営企画部の田畑智也氏が対応しました。
新料金プランのスタートは2019年6月1日。しかし、夏モデルは毎年5月末頃に発表されます。そこで、新端末の価格はどうなるのか、という質問には「個々の端末の発売日は異なるので一概には言えませんが、販売の仕方も分離プランがベースになる見込みです」との回答。
シェアパックプランを止めた理由については「好評いただいてきましたが、割り算をしないと1人あたりの割引額が分からなかった。また、家族の誰がデータを使ったのかも分かり辛かった。今回の新料金プランは、分かりやすさがポイント。そのあたりも考えて見直しました。家族を対象にした戦略は変わっていません」。
現行プランの利用者は、いつプラン変更すべきか。そのタイミングについて、通知などはあるのかと聞かれると「月々サポートを適用している場合、プランを変更しない方が安いケースもあります。そこで、個別にご案内をしていければ」と回答しました。