米Googleは3月19日 (現地時間)、米サンフランシスコで開催中のゲーム開発者カンファレンス「GDC (Game Developers Conference)」において、クラウドベースのゲーミング・プラットフォーム「Stadia」を発表した。同社のデータセンター、YouTubeを活かし、本格的なゲームをいつでもどこにいても、あらゆるデバイスでプレイできる新たなゲーム体験を提供する。年内に、米国、カナダ、欧州で、ゲームストリーミングサービスを開始する計画だ。

Googleは昨年10月、「Project Stream」というストリーミングゲームのプロジェクトを発表、今年1月まで米国で招待制の技術テストを実施していた。同プロジェクトでは、ハイエンドゲーム用のグラフィックカードを備えていなくても、ブロードバンド回線とChromeブラウザが動くPC環境だけで「Assassin's Creed Odyssey」をプレイできた。Stadiaは、Project Streamを正式サービスに発展させたものになる。

  • Stadiaのゲームを遊べるデバイス

    あらゆるスクリーンで、いつでもすぐにハイクオリティなゲームを楽しめる

Stadiaのゲームは、PCだけではなく、スマートフォンやタブレット、スマートTV、Chromecastなど幅広いデバイス (スクリーン)で遊べる。クラウドでゲームを駆動させるカスタムサーバは、1つのインスタンスのGPU性能が10.7Tflopsになる。これはXbox One X (6.0Tflops)やPlayStation 4 Pro (4.2Tflops)を大きく上回り、そして必要に応じてシームレスにスケールするため、従来のようにゲーム開発者がゲーム機やPCのハードウェア構成の制約を受けることがなくなる。

  • インスタンスのスペック

    AMDがカスタムGPUを提供、OSにLinux、グラフィックスAPIにVulkanを採用。Unreal EngineとUnityがサポートする

Project Streamは「最大1080p (60fps)、ステレオ」だったが、Stadiaはサービス開始時に「最大4K (60fps)、HDR、サラウンド」をサポートする計画だ。将来的には「最大8K (120fps以上)」を目指す。プレイするのにダウンロードや待ち時間は不要。ゲーミングPCで遊ぶようなハイクオリティのゲームを、YouTubeでビデオを再生するような"インスタントアクセス"ですぐに遊べるようにする。

  • 従来のプラットフォームの問題

    クライアントとサーバが複雑に接続する従来のオンラインゲームのプラットフォームでは、マルチプレーヤーゲームの中で最も遅いクライアント接続の影響が全体に及んだ

  • 安全で高速なStadia

    StadiaはサーバもクライアントもGoogleの環境であり、安定して高速。最高のマルチプレーヤー体験を実現する

  • チートなし、ハッキングなしをアピール

    チートやハッキングのない、フェアに楽しめるゲーム環境

コントローラは、遊べるデバイスで使用可能なコントローラ、キーボード/マウスを幅広くサポートするほか、Googleが「Stadia controller」を用意した。Wi-Fiを通じてクラウドのStadiaに接続。最大4Kでゲーム映像を記録するキャプチャ用ボタン、Googleアシスタント用ボタンを備える。

  • Stadia controller

    ゲーマーの声に耳を傾けてデザインした「Stadia controller」

発表イベントで、GoogleのSundar Pichai氏 (CEO)は「Building a game platform for everyone」というスローガンを示した。みんなのためのゲームプラットフォーム、「みんな」には、ゲームで遊ぶ人だけではなく、開発者、クリエイターや配信者なども含まれる。

  • Sundar Pichai氏

    みんなのためのゲームプラットフォーム

タブレットやスマートフォンの普及によってモバイルゲーム市場が成長し、モバイルデバイスの性能向上によって、PCやゲーム機、モバイル機器の間でデバイスを問わず遊べる環境を求める声が高まっている。Stadiaはデバイスやプラットフォームの制約からプレイヤーやゲーム開発者を解放する。

かつてゲームの体験はゲーム機やPCの中で完結していたが、ネットの普及でゲームの楽しみ方が変わってきている。例えば、YouTubeやTwitchでゲーム配信を見て、そのゲームに興味を持って遊び始め、コミュニティのイベントに参加したり、他のプレイヤーのプレイ配信を見ながら上手くなっていくというように、オンラインメディアやソーシャルメディアがゲームの体験に大きな役割を持ち始めている。しかし、そのためにゲームプレイヤーはPCやゲーム機、スマートフォンなどを行き来しているのが現状だ。

Stadiaは、YouTubeとの連携でプレーヤーやクリエイター、視聴者がつながる新しいゲーム体験をシンプルに実現する。例えば、ゲームの公式YouTubeチャンネルで新作ゲームのトレーラービデオを視聴した人が、ビデオに埋め込まれた「Play」ボタンを押して、そのままブラウザでゲームをプレイできる。ゲーム配信者による視聴者参加型イベントでも、YouTubeでライブ配信を視聴している人が「Join this game」ボタンを押して待ちラインに加わり、そのままゲームに参加できる (Crowd Play)。他にも、ゲームに行き詰まった時にYouTubeなどで攻略法を検索しなくても、Stadia controllerからGoogleアシスタントを呼び出して助けを求められる。

  • Crowd Playに参加

    ライブ配信を視聴していた人がYouTubeから直接、視聴者参加型マッチに参加

  • Crowd Playのロビー

    ロビーでゲームの順番を待つ

発表イベントでは、Project Streamで協力したUbisoftがパートナーとして紹介され、id Softwareが「DOOM Eternal」をリリースすることを明らかにした。すでに100以上のゲームメーカーに開発キットを提供し、幅広く協力を得られているとした。しかし、「2019年のサービス開始」を除いて、価格やサービス体系の詳細などには言及しなかった。今夏に改めて発表するという。