今年も3月にスペシャルイベントを実施
Appleは各国のメディアに向けて、3月25日(現地時間)にApple本社「Apple Park」内にあるSteve Jobs Theaterでスペシャルイベントを開催することを告知した。毎年9月のiPhoneに関するイベントでのみ活用されてきた会場であり、3月のイベントで利用されるのは初めてとなる。
Appleは必ずしも毎年3月にイベントを行ってきたわけではないが、新製品は毎年リリースしている。2016年はiPhone SEと9.7インチiPad Pro、2017年は第5世代となるiPadをiPad Air(初代)と同じきょう体でリリースした。2018年はシカゴでイベントを開催し、Apple PencilをサポートするiPad(第6世代)を登場させている。
そのことから、イベントの主題になるかどうかはさておき、iPadシリーズのうちProに属さないモデルのアップデートはあるかもしれない。また、Mac系は6月のWWDCが最適なタイミングかもしれないが、iMac、MacBook、Mac Proといった昨年刷新されなかった製品がアップデートされる可能性もある。
今回の主題は映像やエンターテインメント関連?
毎回、Appleはイベントにちなんでデザインされた招待状を用意してきた。今回の招待状では、ちょうど古い映画フィルムで映像が始まる前のカウントダウンから、Appleロゴが現れるアニメーションが配置されていた。そのあとに現れるメッセージは「It's show time.」。これらの演出から、映像やエンターテインメント関連の新しいストリーミングサービスの立ち上げに関する発表が想起される。
Appleはこれまで、ハリウッドやニューヨークを中心とした著名プロデューサーや有力なスタジオにオリジナルコンテンツの制作を依頼してきた。2018年にAppleが費やした金額は実に10億ドル(約1116億円)以上にのぼる。競合となるNetflixが80億ドル(約8931億円)を投じていることに比べれば、その規模は業界で決して大きくはないが、少なくない投資だ。米国のテレビで流れるトップコンテンツの制作費用は、1話あたりおよそ500万ドル(約5億5800万円)といわれている。つまりAppleは、200本前後のオリジナルコンテンツを制作するだけの投資を既に済ませたことになる。
オリジナルテレビサービスが開始される以前から、AppleはApple Musicを通じてコンテンツの配信を既に行っている。アプリ開発のリアリティショーである「Planet of Apps」はさほどドラマティックではなく、若干退屈にも見える番組だった。James Cordenが運転するクルマに乗り込んでくるセレブが車内で熱唱する「Carpool Karaoke」も配信されている。
いずれも、Appleのサービス部門に属する「App Store」「Apple Music」と、それに関連するオリジナルコンテンツの影響を測る試験的な側面を、筆者は感じていた。
Appleが声をかけたクリエイターやコンテンツはまだまだある。
- 女優で映画監督のBrie Larsonが手がける「CIA biography」
- X-Menで知られる英国出身の映画監督Simon Kinbergと、Amazonでナチ・ハンターの作品を手がけるDavid Weilがタッグを組んだサイエンス・フィクション
- 東京を舞台にして日本でも話題になった「Lost In Translation」のSofia CoppolaとBill Murrayが再び取り組む「On the Rocks」
- 日本でも人気のあるスヌーピーシリーズ。J.J. AbramsとJennifer Garnerの「My Glory Was I Had Such Friends」
- Reese Witherspoon、Jennifer Aniston、Steve Carellが参加する朝の情報番組を制作するドラマ「Top of the Morning」
- ベストセラーとなったサスペンス「Defending Jacob」
- 気候変動を扱った「Losing Earth」
- 象を題材としたドキュメンタリー「The Elephant Queen」
- アイルランドのアニメスタジオが手がける「Wolfwalkers」
- Charlie DayとRob McElhenneyのコメディ
- 日本、米国へと点々と移り住んだ韓国系4世の移民を題材にしたベストセラー小説「Pachinko」
- Appleがテレビシリーズ向けの権利を取得したタイムトラベルコメディ「Time Bandits」
- Steven Knight原作、Francis Lawrence監督の未来的なドラマをテレビシリーズ化する「See」
- フランスのプレミアムケーブルチャンネルが手がける、毎回、飛行機のフライトレコーダーや緊急通報などなんらかの録音からストーリーが展開される「Calls」
- セサミストリートが設立した子どもの教育向け非営利組織「Sesame Workshop」のコンテンツ
- 米国でトーク番組の最高峰と称されるOprah Winfreyとの複数年契約
- 12歳の少女が事件を追う「Hilde Lysiak」
- 人気のある小説「Shantaram」
- J.J. AbramsとSara Bareillesが手がける「Little Voices」
- 19世紀を舞台に社会の様々な制約などの問題を少女の視点から描く「Dickinson」
- アイザック・アシモフの著名フィクション「Foundation」
- ニューヨーク・セントラルパークの周辺に住む管理人たちが公園と世界を救う20世紀FOX制作のアニメ「Central Park」
- M. Night Shyamalanプロデュースのサイコサスペンス
- NBAのスーパースターとなったKevin Durantを描いたドラマ「Swagger」
- 1980年代のドラマでエミー賞を5つ獲得している「Amazing Stories」
- Kathleen Barber著の実際の犯罪を元にしたドラマ「Are You Sleeping」
- 米国へやってきた移民を題材にしたコメディ「Little America」
- Ronald D. MooreのSF作品
- 裕福な家庭と人々を描くドキュメンタリー「Home」
- アカデミー監督賞を受賞したDamien Chazelleが手がけるドラマシリーズ
これらすべてが2019年に放映されるわけではないが、オリジナルコンテンツの初期のラインアップとしては十分なバラエティさを誇るといえる。こうしたAppleの取り組みの全貌や、新たにスタートするサービス、展開する国などが、3月25日のスペシャルイベントで明らかになると期待している。
Appleが新たに始めるとみられるストリーミングサービス、Appleのビジネス全体における意味や予測される展開については、次回の原稿で触れていきたい。