お湯を注ぐだけという簡単さで、すぐに食べられるフリーズドライ食品。トップブランドとなったアサヒグループ食品のアマノフーズが業界を引っ張っている。
しかし、アマノフーズはメイン顧客が60代で、30~40代の若年層を取り込めていないことに問題意識を持っていた。『今後、高齢化が一層進んでいくにつれ、若い層にもフリーズドライ食品を手にとってもらいたい』。そんな思いで2015年7月に開設したのが、Webマガジン「アマノ食堂」だ。
2015年7月の開設当時は10万にも満たないPVだったが、2018年10月には月間100万PVを達成、人気のオウンドメディアに成長した。そこで、「アマノ食堂」を立ち上げ、現在も媒体に携わる、アサヒグループ食品 食品事業本部 食品マーケティング部主任 中村勇也氏に、これまでの道のりやPVを伸ばすための工夫を聞いた。
6つの記事カテゴリすべてで「目的」を決めた
テレビや新聞、雑誌などの旧来型メディアよりも、スマホでネットを見る時間のほうが圧倒的に多い若年層に向けて、メッセージを効率的に伝える目的で作った「アマノ食堂」。約半年の準備期間を経てリリースし、現在は狙い通り、30代の利用者が圧倒的に多いサイトとなった。
開設前にターゲット像を「30代女性」にしたのは、女性のほうが男性よりもわれわれの商品を多く取り扱っているスーパーなどで買い物をする機会が多いからだという。さらに、「体験することが好き」「アウトドアやフェスが好き」「ジャンクフードは好まない」「アートや写真が好き」「本が好き」「シンプルなファッションを好む」「流行に左右されず自分のスタイルを持ちたいと思っている」など、ターゲット像のプロフィールを具体的に書き出していった。ただ、プロフィールを詳細に絞り込めば、どんどんターゲット層が絞られてしまう。
「ターゲット像に完璧にハマる記事を作ることはできないでしょう。だからこそ、記事が届けばいいなと思っているのは、われわれが定めたターゲット像と趣味や志向を共有できる“友人”たちです。30代女性が面白がってくれるヒト・コトを企画に落とし込むよう努めています」(中村氏)
記事カテゴリは、旬の食材に関する基礎知識や雑学などを紹介する「旬の食材」、著名人を招いた対談企画「お客さん対談」、多様なジャンルで活躍するクリエイターによる連載「常連さんコラム」など6つを用意した。
「各カテゴリには役割を持たせていて、『お客さん対談』は作家や棋士、スナックのママなど、アマノフーズとは一見関係のない方に出ていただいています。彼らに興味を持った方が記事を読みに来てくれて、アマノフーズに興味を持ってもらうことを目的としています」(中村氏)
ベーシスト・漫画家の劔樹人さんとエッセイストの犬山紙子さんのご夫婦や発酵デザイナーの小倉ヒラクさんなど、ネットの人気者を起用した「常連さんコラム」は、彼らのファンが見に来ることを想定。著者のSNS経由で流入してきた新規ユーザーの中には、新着コラムだけではなく、過去コラムを遡って読む人も少なくない。