ネットアップは2月26日、都内で同社のHCI(Hybrid Cloud Infrastructure)戦略について記者説明会を開いた。説明会にはネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 部長の神原豊彦氏と、同 システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクトの大削緑氏が出席した。

データファブリックをコンセプトとした新しい「NetApp HCI」

まず、神原氏は同社のHCIが発売されて1年が経過したことに触れ「昨年11月に米国で開催した『NetApp Insight 2018』において、われわれのHCIを従来のHyper Converged InfrastructureからHybrid Cloud Infrastructureというブランド名に変更した」と、述べた。

  • ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 部長の神原豊彦氏

    ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 部長の神原豊彦氏

これは、同社ではストレージベンダーとして25年が経過し、膨大なデータを持つユーザーにおける急速なIT技術・クラウドサービスの進展に伴う現場技術者が直面するデータ活用・管理の共通課題に加え、「新しいアプリの展開を早くしたい」「パブリッククラウドのようなインフラ操作や運用を」「可視化されて予測可能なコンピューティング性能を」といった声が多くなってきたことが背景にある。そのため、同社はテクノロジーでユーザーのデジタルトランスフォーメーションを支えるために、HCI市場に参入したという。

神原氏は「われわれは『データファブリック』というコンセプトをもとに、パブリッククラウドとプライベートクラウド、サイロ型の従来システム間をつなぎ、データをスムーズに動かせるプラットフォームを提供し、ユーザーがデータにとらわれることなく、自由なIT技術の活用を可能としている。HCIもデータファブリックのコンセプトを活かしており、パブリッククラウドにおけるローカルリージョンのような操作性を実現することを支援している」と、説明する。

同社がターゲットに据えるワークロードは、(1)ユーザーデータのクラウド連携とグラフィック性能向上、ハイブリッドマルチクラウドでのデータ管理を行う「End-User Computing:エンタープライズVDI」、(2)クラウド活用と一元管理、DevOpsを取り入れた開発の迅速化と品質向上を図る「従来型(SoR型)業務アプリケーション」、(3)開発者自身のPCからパブリック/プライベート双方のコンテナクラスタを透過的に利用・管理する「コンテナベースアプリケーション」の3つとなる。

  • ネットアップがターゲットに据えるワークロードの概要
  • ネットアップがターゲットに据えるワークロードの概要
  • ネットアップがターゲットに据えるワークロードの概要
  • ネットアップがターゲットに据えるワークロードの概要

これらのワークロードを支援するために同社では1月に「H410Cシリーズ」「H610Cシリーズ」を発表している。

  • 「H410Cシリーズ」の外観

    「H410Cシリーズ」の外観

神原氏は「ハイブリッドマルチクラウドを実現するためのプライベートクラウドプラットフォームであり、パブリッククラウドのローカルリージョンとして使いやすい。また、VMwareやRed Hat、Docker、NVIDIAなどとの戦略的な提携に加え、Google Cloud Platform、Amazon Web Services、Microsoft Azureといった主要なクラウドとの連携、Kubernetesをはじめとしたオープンソース技術を提供できるオープンアーキテクチャだ」と、アピールする。

  • 新しい「NetApp HCI」

    新しい「NetApp HCI」

製品の詳細については大削氏が説明し「データを活用するために従来のHCIの課題に着目し、エンタープライズにもクラウドライクなインフラを提供する」と、力を込める。これを実現するためにストレージを分離することで従来のHCIのメリットそのままに多様な課題を解決するという。

  • ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクトの大削緑氏

    ネットアップ システム技術本部 ソリューションアーキテクト部 シニアソリューションアーキテクトの大削緑氏

特徴としては「予測可能」「柔軟性」「シンプル」の3点を挙げている。予測可能に関してはパフォーマンスを保証、オーバーヘッドなし、重複排除・圧縮は常時ON、制御用VMの負荷影響なし、クラウド状態監視、オンデマンド・消費型インフラモデルとなる。

柔軟性についてはコンピュートとストレージを自由に拡張・組み合わせでき、ノードの追加・削除が用意、外部ホストからの利用が可能、ハイブリッドクラウドインフラとしてデータファブリックを構成。

シンプルに関しては、容易なUIで45分で構築可能、シンプルなオペレーション、オンラインアップグレード、充実したAPIで自動化が用意、Vmwareとの運用環境を統合している。

  • 特徴の概要

    特徴の概要

H410Cシリーズはサイズが1UでCPUにSkylakeに刷新し、H610Cシリーズはサイズは2UでNVIDIA M10 GPUsボードを2枚、1ボードあたりMaxwell GPUを4基搭載し、32GBのGDDR5メモリ(GPUあたり8GB)、2560個のNVIDIA CUDAコア(GPUあたり640個)となり、まずはWindows 10のVDIに対応、その後はディープラーニングやHPCなどに対応した機種の販売を予定している。

最後に大削氏は「現状のHCI=VDIという限られた世界観をNetApp HCIでは領域をエンタープライズ全域に拡大していく」と、意気込みを語っていた。