「妖精になってみません?」と連絡があった。40代の太ったおっさんにナニを言っているんだと思ったが、それを実現できてしまうのがPlayStation VR専用タイトル『Déraciné(デラシネ)』だ。古典的なアドベンチャーゲームを最新VRで作るという意欲的なタイトルではあるが、なによりも妖精と子どもたちの交流がいいんだなぁこれが……

  • PS VR専用タイトル「Deracine(デラシネ)」

    妖精と子どもたちの交流を描く。寄宿学校は静謐で暖かな雰囲気に包まれている
    (C)2018 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by FromSoftware, Inc.

妖精になってみませんか?

2018年、年の瀬、この連載の担当編集から「妖精になってみませんか?」とメールが届く。どういうことかと思ったら、『Bloodborne』などを手がけたソニー・インタラクティブエンタテインメントとフロム・ソフトウェアのタッグによるPS VR専用タイトル『Déraciné』のことだという。妖精となって少年少女たちと交流ができるアドベンチャーゲームとのこと。40代の太ったおっさんを妖精にしてやろうというのか。面白い、やってやろう。そう思った途端にインフルエンザ(A型)になった上、階段で転んで右足の親指を骨折する。妖精にしたくない不思議な力が働いた気がしてならないが、これによってレビューをお届けするのが遅くなってしまったことは申し訳ない……

『Déraciné』は2018年11月8日発売されたPS VR専用のアドベンチャーゲーム。プレイするにはPS VRに加えてPlayStation Move モーションコントローラーが2本必須だ。モーションコントローラー1本だけやDUALSHOCK 4(PS4のコントローラー)では操作できない点は気を付けてほしい。フロム・ソフトウェアでしかも意味深なタイトルということで、高難易度であったりホラーであったりと想像しがちではあるが、寄宿学校を舞台にした6人の少年少女、そして老年の校長とプレイヤーとなる妖精の交流を描いたハートフルなストーリー。ただ、子どもたちの純粋で優しい心がゆえの……という面があるのがまた奥深かったりする。

プレイヤーは妖精として寄宿学校に降り立つ。そして、妖精は人間とは異なる時間の止まった世界の存在であることが最大の特徴だ。そのため、子どもたちは妖精を直接認識することはできない。40代のおっさんでもまったく問題ないワケだ。止まった世界ではあるが、2本のモーションコントローラーが両手となり、トリガーで指を動かせる。これによって手紙を読んだり、アイテムを入手したりして子どもたちと関わっていける。

  • モーションコントローラーでアイテムを掴んだりできるのがとてもリアル

ヒントを元に少年のズボンを調べる筆者。どう見ても怪しい。そして、ある条件を満たしていないのでこの状態で調べてもムダなのである。ただの怪しいおっさんになってしまっている。でもゲーム内では妖精なんですよワタシ……。だから大丈夫です

しかし、その姿を実際に見るとかなり怪しい動作をするおっさんになってしまうのが悲しいところ

特定の箇所に触れることで、言霊と呼ばれる光の球が表示されることがある。この言霊に触れることで子どもたちの心情やその場の出来事を声として聞くことができる。これによってストーリーを進める上のヒントを得たり、子どもたちの性格や想いを知られるのもこのゲームの大きな特徴だ。

子どもたちは妖精の存在を信じていて、いたずらの協力や困っていることの解決をお願いしてくる。プレイヤーは、それに応えるべく寄宿学校を回って、宝箱を開けたり、アイテムを子どもに渡したりと奔走する、というのがゲーム進行のスタイルだ。あちこち動き回ってクリアのための「フラグを立てる」という点が"古典的アドベンチャーゲーム"と公式サイトで明記している理由だろう。

  • 光の球に触れると子どもたちの心情を聞くことができる

しかし、それを最新のVRで描くと新たな体験を生み出してくれる。美しく描かれた寄宿学校を動き回り、アイテムを入手するため覗き込んだり、しゃがんだり、そしてモーションコントローラーで実際に掴むという動作が、自らが物語を動かしている、関わっているという感覚を強めてくれる作用がある。

  • ストーリーを進めるための条件を満たすべく奔走することになる

立ってプレイすると妖精になった気分がアップ!

ちなみに、このゲームは立ってプレイすることをオススメしたい(立った状態でのプレイは推奨していない)。机の下を見たりする場合のしゃがみ動作はボタンでも行えるが、自分でリアルにしゃがんでから回りを見てアイテムを探す方が臨場感がグッとアップする。ちょっとした前後の動きも認識するので、子どもに近づいたり、箱の中を覗き込んだりといった動作も立っているほうがずっとやりやすい。自分が妖精になった気分をよりアップさせてくれる。それがおっさんだとしてもだ。周囲に机やぶつかりそうなモノがないことを確認してプレイしてほしい。

  • 命を吸い出す指輪の存在がストーリーのキーになる

このゲームのキーになるのが植物などから命を吸い出して、それを別の生物に与えて生き返らせたりできる指輪の存在。そして、妖精は時を移動できる力を持っていること。これが、どのように物語に関わっていくかはぜひともプレイして確かめてほしい。それにしても、見えないはずの妖精を見ようとして、一方向をジッと見るシーンなどでは、「ここにいるよ!」とこれはキモイなぁと思いつつ、ついキャラクターの正面に立ってしまうのであった。

  • ついキャラクターの目の前に立って、ここにいるアピールをしたくなる

タイトル:Déraciné(デラシネ)
対応機種:PlayStation 4※PlayStation VR専用タイトル
PlayStation Move モーションコントローラー必須
ジャンル:VRアドベンチャー
価格:パッケージ版 Collector's Edition 4,000円(税別)、パッケージ版 3,000円(税別)、ダウンロード版 3,240円(税込)
プレイ人数:1人
CERO:B(12歳以上対象)
発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発元:フロム・ソフトウェア
(C)2018 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by FromSoftware, Inc.