なお、基板の高密度化では、層ごとに場所をずらしてビア(層の異なる基板を接続する配線コネクタのようなもの)を設ける「スタッガードビア」の採用も効果を発揮します。

ただ、dynabook U63/同U53で採用したこの技術は、生産コストが高く製品価格を押し上げてしまう一面もあります。そこで、dynabook Gではスタッガードビアを廃止し、全ての基板層を貫通するスルーホールビアを採用しました。基板レイアウトはスタッガードビアほど自由にできませんが、生産コストを抑えることで価格も引き下げられたといいます。

  • システム基板に直付けしたCPUとオンボードメモリ。ほかにメモリスロットが1基用意されており、サポートセンターでメモリの拡張が可能だ(ユーザーが底面を開けてアクセスすることもできるが、保証対象外となる)

  • システム基板裏側にSSDを搭載する

狭額縁ベゼルに収まる小型カメラを開発

顔認証カメラの小型化と軽量化は、カメラモジュールを新しく開発することで実現しました。これまで、Webカメラとして使うHDカメラと、顔認証に使うカメラは、それぞれ別のものとして分かれていました。これは、Webカメラが可視光対応、顔認証カメラが赤外線対応なので、それぞれに対応するカメラモジュールを用意する必要があったからです。

dynabook Gでは赤外線と可視光に対応できるカメラモジュールを採用することで、搭載するカメラモジュールが1台になりました。これでカメラモジュールが占める面積と重さが、従来の半分で済みました。

  • HDカメラと顔認証用の赤外線カメラを一体化して、軽量省スペースを実現したカメラモジュール

ノートPCが小さくなると困るスピーカー

このように、ノートPCの軽量化は構成パーツの小型化が大きく貢献します。それはボディの小型化につながり、ボディ容積の縮小につながります。ノートPCの持ち歩きにボディ容量の縮小は好ましいことですが、一方でノートPCの性能にとって不利に働く面もあります。

大きいほどいい音で再生できるスピーカーの音質は、ボディの縮小が不利に働く要素の1つ。

そこでdynabook Gでは、声の帯域である300~2000Hzの再生音質向上を優先することと、スピーカーユニットの薄肉化、そして、新しい音質補正技術「DTS Audio Processing」の導入によって、小さなスピーカーユニットを搭載しながらも、音声チャットや動画視聴で聞き取りやすい音質を可能にしたと説明しています。

  • 中身が見えるボディの前より両脇に見える黒い部品がスピーカーユニット。手にしているのはスピーカーユニットだけを別に用意していたサンプル。スピーカーはオンキヨー製だ

「たわみ発生予測」からキーボードのネジ位置を決定

キーボードの打ちやすさも、ボディの軽量化が不利になることがあります。キーボードユニットの過度な軽量化は強度不足を招き、タイプしたときにたわみが発生することになりかねません。

そこで、キーボードユニットに穴を追加したり、バックライトを廃止したりすることで軽量化を図りながらも、シミュレーションで見積もった「たわみ発生予測」を考慮してボディにキーボードユニットを固定する64本のネジ位置を決め、キーボードの耐性を確保しました。

ボディが軽くなると、ボディの堅牢性にも影響が出ます。開発陣は、dynabook Gでもボディの部分ごとに最適な素材を割り当て、ボディ内部に配置するリブ(補強材)のレイアウトと厚さを最適化し、加えて、基板間や部材間の配線接続部が衝撃で外れることがないようにコネクタ形状や配置を検討することで、軽量化と堅牢性を両立させています。

  • キーボード面パネルの内側に設けたリブ(垂直に取り付けられた補強材)の形状と配置が分かる。リブの追加と補強でも最適化を考慮し、例えば、天板部分では周辺部を肉厚にしてコーナーのリブを強くすることで堅牢性を向上。キーボード付近では周囲に「T字型」のリブを追加してタイプした指の力を受け止め、ボディがたわまないようにしている

ボディ素材の選択では、天板と底面パネルの両方で、衝撃に強いマグネシウムアルミ合金のプレス加工を施し、ボディの厚さを抑えました。

dynabook R63 天板厚0.75mm、キーボード面0.6mm、底面厚0.5mm すべてダイカスト加工
dynabook G 天板厚0.6mm、キーボード面0.75mm、底面厚0.4mm 天板と底面はプレス加工(耐衝撃性の向上)。キーボード面はダイカスト加工

キーボード面のボディは、リブなどの追加が容易なマグネシウムアルミ合金のダイカストで、キーボードベース(板)やバッテリ搭載部分にリブを追加することで、ボディの堅牢性を確保しています。