米国時間の1月15日、動画配信大手のNetflixが米国での動画ストリーミングサービスの料金を値上げした。3種類のサービスで13%~18%の値上げと過去最大の引き上げだ。新規契約はすでに新料金になっており、既存の契約者には3カ月中に新料金が適用される。値上げが報じられた直後、Netflix株は約6%上昇した。
プランごとの旧月額料金と新月額料金は以下の通り。Standardの値上げ率が最も大きく、Basicは今回が初めての値上げだ。
- Basic:7.99ドル → 8.99ドル
- Standard:10.99ドル → 12.99ドル
- Premium:13.99ドル → 15.99ドル
BasicはSD品質のみで、同時に視聴できるデバイスが1台まで。Standardは最も人気のあるプランで、HD品質のコンテンツを受信でき、最大2台までの同時視聴が可能。PremiumはさらにUltra HD品質のコンテンツも利用でき、同時視聴デバイスが最大4台になる。
米国の動画配信サービスは、年内にDisneyがMarvelやStar Warsなどフランチャイズを活かした「Disney+」を開始する予定で、Appleの参入も噂されている。また、14日にNBCUniversalが広告ベースの新しい無料ストリーミングサービスを2020年に開始すると発表するなど、競争が激化している。そうした中、Netflixはオリジナルコンテンツを強みとしている。昨年末に公開したオリジナル映画「バード・ボックス (Bird Box)」が公開初週に米国だけで視聴者数が2,600万人に達するなど、同社のオリジナルドラマや映画はすでに世界的な定評を得ている。
今回の値上げは、オリジナルコンテンツへの投資とエンターテインメント体験の強化を継続していくためと見られている。Netflixは良質なオリジナルコンテンツを追求し、制作やマーケティングに巨額の投資を行ってきた。同社の2018年度のオリジナルコンテンツの予算は80億ドルだったが、多くのアナリストが予算枠を超えて90億ドル近くを投じたと見ており、約130億ドルだったという分析もある。
米国では、そうしたNetflixの方針への期待感が高く、値上げ報道後にNetflix株が上昇した。米国のNetflix契約数は約5800万アカウント。これは米国のTVを持つ世帯数のおよそ半数に相当する。その中にはかつて月額100ドルを超えるようなケーブルTVサービスのプレミアプランを契約していて、それを解約してオンラインストリーミング・サービスに乗り換えたいわゆる「コードカッター」が少なくない。かつてのケーブルTVサービスの体験と比べると、ケーブルTV世代にとって今のNetflixのサービスの価値は数ドルの値上げ以上に大きい。
しかしながら、サービス初期からNetflixの成長を支えてきた若い世代の契約者の中には、自身でケーブルTVサービスを契約したことがないNetflix世代が多い。そうした契約者にとって値上げは負担増であり、オリジナルコンテンツ制作を含めて競争が激化する中、値上げに踏み切ったNetflixが契約数の伸びを維持していけるかが注目点になる。