2019年の年頭にあたり、リバーベッドテクノロジーのSVP-CIO & CISO (上級副社長兼最高情報責任者、最高情報セキュリティ責任者)を務めるリチャード・ヒルブレヒト氏は、以下の年頭所感(抜粋)を発表した。

新たなテクノロジーの融合が起こす変化

新年明けましておめでとうございます。

旧年中は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます



2019年にテクノジーがもたらす大きなトレンドとして、私は下記を予測しています。

ブレークスルーはテクノロジーの組み合わせによって発生する

特定の一つのテクノロジーが大きな変化を生み出すわけではありません。この数年のうちに、異なる技術の組み合わせがもたらす大きなブレークスルーが発生するでしょう。例えばブロックチェーン、IoT、グリッドコンピューティングの組み合わせなどです。モバイル、クラウド、SNSのように、私たちの生活や仕事を変えうるような、次のなんらかの技術の融合が現れるでしょう。

ブロックチェーン、IoT、AIの融合が、ビジネス効率を可能な限り高めた、より近代的なサプライチェーンの変化をもたらすでしょう。実際にガートナーによると、2018年末までに、IoT、ブロックチェーン、AI、ビッグデータになどの技術に対する世界の支出は、3.7兆USドルにのぼるとされています。今まで考え付かなかったような新しい技術の組み合わせが、変化をもたらし、成功をおさめるでしょう。

柔軟性を求める顧客の声が、ライバル企業間での相互運用性向上と協業を促していく

どのテクノロジーにおいても、柔軟性を求めるときには、顧客はベンダーロックインを避ける傾向があり、そしてベンダーが顧客志向を打ち出していけば、ライバル企業間での協業の機会が増えていくことになります。シンプルでシームレスな顧客体験の追求が、ライバル企業間、あるいはその競合するプラットフォームにおける仲介者間でのパートナーシップをうながしていくでしょう。

どのようなことが起きていくのでしょうか。例えばサイバーセキュリティとデータ保護は全ての人々にとって課題の多いものですが、異なるベンダーによる異なる分析ツールを使えば、同じデータを分析していたのだとしても、物事は複雑化してまいます。異なるベンダーとの付き合いがあれば、複数のツール群を使うようなことはよく起きます。その結果、人々は製品間が連携するエコシステムを期待し始めます。このようなことは、アナリティクスエンジンから、ネットワーク管理、そしてさらなる領域において拡大していくでしょう。

ミレニアルズとジェネレーションZが現実世界の問題を解決するためのテクノロジー活用を促進していく

多くの組織では4つの世代が働いています。ミレニアルズ (1980年代から 2000年初めまでに生まれた世代)、ジェネレーションZ (1990年代後半以降の、インターネットや携帯電話の環境に生まれ育った世代)、ジェネレーションX(1960年代初頭または半ばから1970年代に生まれた世代)、ベビーブーマー(1946年から1964年頃までに生まれた世代)です。多くの従業員がミレニアルズとジェネレーションZになっていけば、彼らは仕事を通じて自分の使命や役割を果たすことに強い意識を持っているため、この世代が成長するときに存在したテクノロジーをこの使命感に適用することによって、緊急性の高い社会的な問題の解決を図ろうとするでしょう。

例えば、どのようにすれば、食品宅配サービスアプリ(例えばUber Eats)のようなものを、世界の食糧不足のような大きな社会問題に適用できるのか。食品宅配サービスアプリで使われているテクノロジー(アナリティクス、AI、機械学習)は、食品生産者の背後にある流通経路に適用することができます。

現実世界の大きな問題に対するアプローチはこのように進化するでしょう。よりよいアナリティクスと素早い意思決定によって、世界の問題を解決するべく行動できるかもしれません。私たちは、シリコンバレー以外の世界にインパクトを起こす領域に、今後より多くの投資が行われることを望んでいます。

2019年、ITへの新しい要求とコンシューマライゼーションに対する準備が、CIO達の大きな関心事となる

ITへの新しい要求に対する準備

「私たちは、正しい領域に投資しているか」このような質問は常に存在します。例えばセキュリティとコンプライアンスは今日の組織にとってとても大切なことであり、大容量のデータが企業の中を動き回りながら、それらのデータ全てを適切に扱うという要求はますます増加していきます。CIO達の大きな関心事は、リスク管理の観点から、サイバーセキュリティとコンプライアンスを気にかけながら、正しい考え方を持つことです。完全に正しい正解は存在しないが、リスクの追及とビジネス目標の正しいバランスを保持するには、セキュリティについての重大性と緊急性をかなりの程度まで理解していなければなりません。

デジタルビジネスモデルは、企業を自由放任主義的な態度から、より戦略的な投資を行う方向に変えています。今日のデジタルエンタープライズにおいては、防御可能な姿勢を保つことが重要であり、情報資産を守り、契約上およびコンプライアンス上の合意事項を尊重しながら、引き続きガバナンスとセキュリティの意識を企業全体において保つことが重要となります。

ITのコンシューマライゼーション(消費者向けの技術がエンタープライズに適用されること)が大きな関心事となる

この問題は新しくはないが、再形成され続けています。Siriのような音声によるユーザーインターフェイスは、徐々にエンタープライズアプリケーションにも採用され始めている。営業予測、品質測定、最新の製品機能、などに対する音声での問い掛けが行えるようになってきています。クリックもできないダッシュボードがいくつも並んでいる中で自ら答えを見つけ出すのとは違い、質問をし応答があればそれに従って質問内容を変えていくことで答えにたどり着くのは、人間にとって自然な流れだといえます。

現在はかつて以上に従業員と顧客とのスムースなやり取りが期待されています。顧客側が自らが利用したいビジネス上のやり取りの手段を決めていくものです。企業が幅広い選択肢を持ち、テクノロジーの流行を取り入れることは、顧客体験において重要となるでしょう。

同様の領域での関心事は、拡張現実(AR、VR)の企業での利用です。例えばテクニカルサポートやトレーニングにおける拡張現実の活用は増えていくでしょう。2018年においては起きなかったし、2019年にも間に合わないのかもしれませんが、企業に利点をもたらすような拡張現実の活用が多く見られるようになるでしょう。

データサイエンスのスキルを持つ人材が不足する

IDCは、データ量は2025年までに163ゼタバイトに膨らむと予測しています。その結果、多くの企業ではアナリティクスの手法をデータサイエンスの手法に変えていくことになります。大量のデータを前に、「私たちは何をしているか?どのようにそのデータを管理、利用、収益化しているのか?」という質問は以前とは変わりません。

今日的なよりよい顧客理解から、価値あるアナリティクスに基づく新しい収入源の発見に至るまで、企業はデータこそが成功につながるものだと気づき始めています。多くのプロフェッショナルたちがデータサイエンスのスキルを手に入れようとしますが、そのスキルに対する需要は、供給をはるかに上回ります。多くの企業において内部的にAI、機械学習などのテクノロジーを利用するようになり、アクション可能な洞察や分析に活用するようになるでしょう。

データサイエンスと予測分析はメインストリームになる

顧客の成功にフォーカスすれば、顧客や見込み客のデジタル上の足跡、やりとりの内容を理解することはますます重要になります。AIや機械学習を導入すると、顧客のデジタル上の足跡(例えばランディングページの訪問、ホワイトペーパーのダウンロード、アナリストとの会話)を製品に結びつたうえで、パターン化することができます。そして膨大な量のデータを理解し企業がそのデータ理解を適切な顧客体験に結び付けるには、AIや機械学習の導入が必要となります。つまりデータサイエンスと予測分析はメインストリームになるでしょう。

加えて、幅広い業種においてSaaSモデルが採用されるでしょう。SaaS企業がかつてサブスクリプションのモデルを発明したが、いまやそれは普通であり、利用量に応じた課金や、サブスクリプションでの支払いなどのセールス上のモデルが今までとは異なる多くの業種において見られるようになります。このSaaSモデルの採用は、顧客のデジタル上の足跡をどのように企業が管理するかという点において、企業ITの成長を促すでしょう。

データコンプライアンスは、ITにおける課題であり続ける

世界経済と国際的なビジネスにおいてセキュリティとコンプライアンスにおける厳重な注意は今後も増加するばかりです。プライバシーと国境を越えて収集されるデータは、多くの関心を呼びます。それぞれの国でスタンスは異なりますが、個人情報と重要な情報は保護されるべきだという点では皆同じ考えでしょう。特に企業にとっては、従業員やパートナーがデータセキュリティについて十分な注意を払っているかを確認することが特に重要であり、この問題はもはや単なるITにおける課題というだけではなく、企業にとって難しい問題となるでしょう。

複雑な各種のコンプライアンス目標を管理することは、全ての組織にとって重荷となります。データの分類を理解し、相互接続されるエコシステムを理解することから始まり、全体にわたって明確なガバナンスが必要となります。例えばセールスフォースのようなクラウド技術を見てみれば、データを扱いアクセスする、各種のアプリケーションがいくつも存在することがわかるでしょう。コンプライアンスのレビューは大量のデータを管理するという意味において非常に複雑な課題です。

パートナーと顧客との連携モデルが多く見られるようになる

パートナーは顧客に含まれます。パートナーとの連携は相互の成功のためとても重要なものです。継続的にパートナーの話を聞き、うまくいっていない何かに対してアクションを起こすような、よい連携モデルを持つことは最も大切なことです。時間と労力をかけて、ビジネス上の連携の回数、効果を改善し続けることは、パートナー、企業、顧客全てに価値をもたらすでしょう。

ユーザーインターフェイスとデータ仮想化は、強力なツールとなる

データを閲覧する新しいやり方であるデータ仮想化は、ユーザーインターフェイス周辺でのイノベーションであり、主要なデータに即座にアクセスしやすくなります。ユーザーインターフェイスは製品を作る全ての人々にとって重要な領域であり、強力な仮想化機能を持つ直感的なユーザーインターフェイスは、アクション可能な知見を得るために必須のものになるでしょう。

新しいITサービスが常に求められる

CIOにとっては古いテクノロジーを素早く新しいテクノロジーに置き換えて導入していくことが重要であり、サービス志向の組織にとって常に新しいITサービスを導入し続けることが日常的なものとなるでしょう。

本年も引き続きご指導、ご鞭撻頂けますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。