12月1日、幕張メッセにて「クラロワリーグ 世界一決定戦 2018」が開催された。優勝したのは中国代表のNova Esportsだ。決勝でラテンアメリカ代表のVivo Keydを破り、世界一の称号を獲得した。

クラロワリーグ初となる世界大会が、12月1日に幕張メッセにて開催された

クラロワリーグは、Supercellが開発、運営するスマートフォンゲームアプリ『クラッシュ・ロワイヤル』を使ったプロリーグ戦。アジア、中国、北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパの5つの地域でリーグが開催され、各リーグの優勝チームが「クラロワリーグ 世界一決定戦 2018」で世界一の座を争う。

日本のチームはアジアリーグに所属しており、「クラロワリーグ アジア」では圧倒的な強さで日本のPONOS Sportsが優勝したが、世界一決定戦への出場をかけたプレイオフで惜しくも敗退し、「開催国枠」での出場となった。

会場だけでなく、配信映像でも趣向を凝らした演出が見られた

会場の幕張メッセには、今回の大会のために特設アリーナが設営されており、その豪華さは「1日で取り壊すにはもったいない」と思うほどだった。天井からは円筒状の巨大スクリーンが吊り下げられており、選手がプレイする中央ステージには、プロジェクションマッピングによってゲームのステージに即したステージが出現。『クラロワ』の対戦チームカラーの赤と青で分けられた客席も、まるで常設会場のようなしっかりとした作りだった。

ステージの上には円筒状のスクリーンが吊り下げられており、どの席からでも、プレイの様子とゲームの内容が確認できるようになっていた
観客席は階段状に設置されており、前の席に人がいても視界良好。椅子はベンチシートではなく個別のシートで、長時間でも疲れずに観られた
日本開催をイメージする和太鼓の演出なども行われた

また、今回は会場での演出のみならず、配信映像にクラロワのキャラクターが登場するなど、動画の視聴者向けの演出にも力が入っていた。準決勝開始直前には、映像上で「P.E.K.K.A」というキャラクターがステージに登場。剣を地面に突き立てると、ステージが「水辺」から溶岩の流れる「P.E.K.K.Aシアター」に変わるというファンにとってうれしい演出が行われた。

準決勝1回戦目の準備中に行われたステージ変更演出。ステージ上にP.E.K.K.Aが現れ、溶岩が流れるP.E.K.K.Aシアターに切り替えた

世界一を決める白熱した戦いが繰り広げられる

世界一決定戦は、シングルエリミネーションのワンデイトーナメントで行われる。6チームが出場するトーナメントなので、2チームが2回戦からのシード枠。開催前日までに各チームの代表者による総当たりリーグ戦が行われ、成績上位2チームにシード権が与えられる。

今回、シード権を獲得したのは、Nova EsportsとVivo Keyd。どちらも決勝まで残った2チームだ。そういう意味では実力通りの結果だったと言えるだろう。

当日の初戦、日本代表のPONOS Sportsは、北米代表のImmortalsと対戦。セット1は、PONOS Sportsのお家芸である2v2での対戦で、その実力を遺憾なく発揮して勝利を収めた。続くセット2は1v1での対戦。PONOS Sportsは、ここ1番に強いライキジョーンズ選手を投入するも、Immortalsのエース・Royal選手が得意とするゴーレムを抑えきれず、敗退してしまう。

迎えたセット3は、King of Hill(KOH)と銘打たれた3対3の勝ち抜き戦だ。PONOS Sportsは、フチ選手が初戦を落とすも、中堅のライキジョーンズ選手が連勝して勝利カウントを優位に。続くRoyal選手との再戦では、残念ながら雪辱を果たすことができなかったが、大将のみかん坊や選手が相手チームの予想を超えた「エアバルーン」による攻撃で一気に勝負を決めた。エアバルーンはみかん坊や選手が得意とするカードであるものの、リーグ戦ではほぼ使用されなかった。世界大会の大一番で使用し、決めてくるところは、さすがのひと言だ。

2v2を戦うみかん坊や選手(写真左)と天GOD選手(写真右)
1v1に出場したライキジョーンズ選手
KOHの先鋒で出場したフチ選手。今大会2人しかいない前大会の経験者だ
ImmortalsのエースRoyal選手とPONOS Sportsのエースみかん坊や選手との対決

2戦目はアジア代表のKING-ZONE DragonXとヨーロッパ代表のTeam Quesoの対戦だ。多くのチームが大会前日の記者会見で対戦したいチームとして挙げていたTeam Quesoだが、KING-ZONE DragonXのエースX-boe Masterの活躍により初戦敗退となった。

準決勝1戦目はPONOS Sportsとラテンアメリカ代表のVivo Keydの対戦。ビザの申請に手間取ったことで、Vivo Keydは選手1人とコーチが来日できず、3人での出場となった。しかし、圧倒的不利な状況ながら、エースJavi14選手の八面六臂の活躍でPONOS Sportsを圧倒。特にPONOS Sportsが得意であった2v2での敗北が大きく響き、KOHに入ることなくストレート負けを喫してしまった。Javi14選手は、シード枠を決める総当たり戦からその強さを発揮しており、ほぼ負けなしで勝ち続けている大会屈指の選手だ。

準決勝の1v1でJavi14選手と対戦したRolaporon選手。PONOS Sportsでは、もっとも1v1で好成績を残した選手である

準決勝2戦目は中国代表のNova Esportsとアジア代表のKING-ZONE DragonX。Nova Esportsは、昨年行われた個人戦のクラロワ世界一決定戦で優勝したセルジオラモス選手が所属するチームだ。

しかしながら、今回、セルジオラモス選手はレギュラー登録されておらず、その事実から選手層の厚さがうかがえた。実際、Nova Esportsは選手全員がエース級と呼べるほどの実力を持っており、クラロワリーグ アジアのプレイオフで圧倒的な強さを見せたKING-ZONE DragonXのX-boe Master選手すら及ばず、Nova Esportsが決勝へとコマを進めた。

決勝戦は、中国代表のNova Esportsとラテンアメリカ代表のVivo Keydの対戦だ。決勝は3勝で勝ち抜けのBO3方式。2v2のあと、1v1を3戦行い、そこでも決着が付かない場合、KOHへとなだれ込む。

Vivo Keydは2v2の選手が来日できなかったため、ほぼ経験のない選手が出場することになったが、みごと初戦を勝ち取ることに成功した。

セット2はVivo KeydがエースJavi14選手を投入するも、敗北。セット3も落とし、後がなくなったVivo Keydは再びエースJavi14選手を投入して勝負にかけた。しかし、ここでも白星を挙げることができず、セットカウント3-1でNova Esportsが優勝を決めた。Nova Esportsの選手層の厚さと、対策立案から実践までを短期間で行えるチーム力の高さは、出場6チームの中では群を抜いており、文句なしの優勝と言えるだろう。

総合力の高さで優勝を勝ち取ったNova Esports

エリアごとにリーグを行い、代表チームを選出するといった本格的なeスポーツ世界大会の日本開催は、この大会が初めてとも言える。その現場に居合わせたのはeスポーツに携わる者として幸せだ。その気持ちは会場に訪れた1000人の観客も感じていただろう。

日本でのストリーミング配信も同時視聴者数が4万人を超え、少しずつながらもeスポーツの魅力が浸透してきたように感じる。そのなかでも、世界的な大会である今回の「世界一決定戦」は、1つのターニングポイントとなるのではないだろうか。クラロワリーグ史としても、日本のeスポーツ史としても、記録と記憶に残るに違いない。

(岡安学)