本田財団(石田寛人理事長)は、半導体不揮発性メモリー「フラッシュメモリー」を発明した東北大学名誉教授の舛岡富士雄博士(75)に「2018年本田賞」を授与した。手軽で安価、省エネ型のフラッシュメモリーは現在、スマートフォンやUSBメモリーといった多様な携帯型電子機器のほか、自動車、家電製品、カメラなど、幅広く活用されている。

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    本田賞受賞の喜びを語る舛岡富士雄博士

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    本田賞授与式の会場の様子(19日午後、東京都千代田区の帝国ホテルで)

本田賞は、次世代のけん引役を果たす新たな知見をもたらした優れた科学者をたたえるために1980年に創設された。ことしの授与式は19日午後、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれ、舛岡博士にメダル、賞状と副賞1,000万円が贈られた。博士は「この度は伝統ある本田賞をいただき誠にありがとうございます」などと受賞の喜びを語った。

コンピューターのデータを外部媒体に記憶させるためには、電源を切ってもデータを記憶できる不揮発性が求められ、電源がなくてもデータを記録し続ける必要があった。舛岡博士は電気的に一瞬にして256キロビットのデータを一括消去できる半導体不揮発性メモリーの技術を1984年に発表した。

当時、データを記憶する半導体メモリーデバイスで多く使われていたのは1970年代に発明された「DRAM」だったが、DRAMは電源が切れると記憶されたデータが自動的に消去される揮発性メモリーだった。フラッシュメモリーは不揮発性で、小型で電気がなくても記憶できるため、多様なデータを手軽に保存したり、持ち歩くことが可能になった。1985年にはフラッシュメモリーと名付けられた製品が発表され、その後世界的に普及。IT機器の小型化とコストの低減、省電力を実現した。現在、世界のフラッシュメモリー市場は約6兆円という。

舛岡博士は1971年東北大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程修了。同年東京芝浦電気(現・東芝)入社、94年同社退職し、東北大学大学院情報科学研究科教授に就任。2007年東北大学教授定年退職し名誉教授に。13年文化功労者。

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