■電波ダダ漏れ? 対応機器や対策は?

新4K8K衛星放送を受信できるチューナー機器のほかにも、受信・伝送の設備が必要です。アンテナや宅内配線の新規導入、または交換となるため、基本的には業者に任せることをおすすめします。助成金制度もあります(後述)。

少し詳しく見ていきましょう。

最初のほうで触れたように、新4K8K衛星放送の電波には、右旋と左旋という2つの種類があります。BS右旋のチャンネルは、従来のBS放送と同じアンテナを使って電波を受信できます。一方で、BS左旋の新4K8K衛星放送を見るためには、新しく右旋・左旋に対応したアンテナの設置が必要です。

さらに、BS左旋の放送を受信するためには、宅内の受信システムとなる分配器・分波器・ブースター・ケーブルなどを交換する必要があります。左旋の信号は従来の右旋よりも高周波数帯に変換されるため、従来の機器を使って伝送できないからです。

  • CEATEC JAPAN 2018の展示から

アンテナで受信した衛星の電波は、アンテナが搭載するコンバーターによって、宅内の受信システムに合わせた周波数帯の信号に変換されて、受信器(テレビやチューナー)に届きます。

もし、BS左旋の番組を受信するシステムとして適切な機器を使わないと、電波が漏洩して無線LANなどの信号に干渉したり、衛星放送の受信不良が発生したりする場合があります。わが家だけでなく、隣家の通信環境にも影響を与えてしまうことなので、避けなければなりません。

8K放送を含めて、BS左旋の放送番組を見るとなった場合は、受信システムの機器交換と配線工事が必要になるわけです。

機器の交換については、JEITAが定める「SHマーク」が目印。SHマークは、アンテナや受信システムなどが、左旋放送の受信に適した機器であることを示します。

  • CEATEC JAPAN 2018の展示から

■助成金制度もある

配線工事については、電波漏洩対策を個人が実施するときの一部に、国からの助成金を活用できる制度があります。申し込みは、個人が役所などに申請するのではなく、家電量販店、電器店、電気工事店といった「登録業者」に対して、助成金の申請と受領を委任する形です。

従って、個人としては、登録業者に左旋番組を聴取するための調査・見積もりを依頼したあとに、確定した助成金の金額を差し引いた分の工事費用などを業者に支払えばよいのです。

  • 戸建て住宅における助成金の一例(CEATEC JAPAN 2018の展示から)

自身が助成対象であるかや、手続き方法については、ケースバイケースで変動する要素が含まれています。実施する前に「電波漏洩対策コールセンター:0570-048-068」に詳細を問い合わせることをおすすめします。

■集合・賃貸住宅で簡単に楽しむ方法

住まいが集合住宅や賃貸住宅で工事しにくい場合も、対策すべき事柄は戸建ての場合と同様です。BS右旋の放送は、従来のBS放送アンテナと受信設備をそのまま使えます。でも、BS左旋の新4K8K衛星放送を視聴するには、共同受信設備の改修工事が必要になります。

  • 集合住宅における助成金の一例(CEATEC JAPAN 2018の展示から)

共同受信設備を管理するのは、大抵の場合でマンションのオーナーや、専任の管理会社です。交渉して工事の合意を得られたとして、実際に工事を行うとなると、高額な費用がかかる場合もあります。もしくは、右旋・左旋対応アンテナと新4K8K衛星放送チューナー(テレビ、レコーダー、単体チューナー)を同軸ケーブルで接続して、ケーブルを使って宅内に電波を引き込んでテレビにつなげば、戸別に視聴できる環境が整います。

あるいはJ:COMのように、トランスモジュレーションと呼ばれる方式で新4K8K衛星放送を展開するサービスを利用する手も。4K対応のSTB(セットトップボックス)を導入するだけで、すで持っている4K対応のテレビに接続して、手軽に番組が見られるようになります。こうした、ケーブルテレビ事業者によるサービスはこれからも拡充されそうです。

  • 新4K8K衛星放送に対応したケーブルテレビ事業者のサービスを利用する方法もあります

新4K8K衛星放送の番組内容については、開始当初はやや玄人向けのものが多い印象も受けます。放送が始まってから徐々に、スポーツや映画など、各局が力を込めて制作した高品質なコンテンツがそろってくるはずです。新4K8K衛星放送、今すぐに導入はしないとしても、必要な機器や環境条件について理解しておけば、さあ導入というときに必ず役に立つはずです。