受注時には、氏名、電話番号、住所といった基本情報が得られる。氏名からは性別も判断でき、住所からは戸建てか集合住宅かといった部分もおおよそ判別可能だ。Webでは任意登録として生年月日等も入力してもらっているが、電話ではさらに多くの情報が得られるという。

「会話の中からさまざまな情報が取得できます。例えばペットを飼っている、新聞をとっているといったことが読み取れることもあります。オペレーターの画面には100項目以上のラジオボタンを用意してあり、わかったことは次々にチェックを入れて顧客情報として保存しています」と、伊藤氏は電話受注ならではのデータ取得方法があることを語った。この情報を、次回以降のアウトバウンド時に活用するのだ。

コールセンターはバンコクにあるトランスコスモスのグループ会社を利用しており、オペレーターはすべて日本人。テレビ放送時にはアクセス数が跳ね上がるため、バンコクで受けきれなかった分は大阪の事業本部で受け、それでもあふれた分は伊藤氏が取ることもあるという。

「関係者総出で対応しています。私も週に1度は電話を取りますが、お客様の声を直接聞くことは大切だと感じています。お客様の話を聞き、時にはあえて売らずで終わらせることもあります。ロイヤルカスタマーのお客様には、年に1度、自宅訪問も行っています」と伊藤氏はユーザーに向き合う姿勢を語る。

そうして会話を重ねる中で、ユーザーも運営側に親しみを感じているようだ。地震や天候の異常があると、そちらは大丈夫ですかと心配の電話をもらうこともあるという。

「実は受けているのはバンコクなので、地震は感じていないわけですが、海外で対応していることを感じさせないのであれば良かったと思います。お客様対応のため、日本とは毎日情報交換をしており、天候などはもちろん、芸能ニュースなども含めて日本では何が話題になっているのかなども共有しています」(伊藤氏)

丁寧な対応でファンを作り、集めた情報を使っての再販を促す手法は販売業の基本ではあるが、画面を介した交流に止まるECに比べ電話がベースとなる情報収集は圧倒的に精度が高く、接触も多くなる。それを強みとして限りなくオーダーメイドの対応を行うことで、現在8割程度の受注率を伸ばすことが同社の目標だ。

顧客属性×購買データでカタログを送り分けて購買1.5倍超に

「顧客属性と購買情報は10年以上、100万人以上を保有しています」と伊藤氏は多彩なデータ保有状況を紹介。残念ながら従来はこれを活用することができていなかったが、4年前からコールセンター部門で日本直販をスケールすべく活用が進められている。

活用は、主としてカタログやDMの送付の自動化だ。日本直販では年8回発行する総合カタログのほかに、メンズカタログ、シニアカタログ、名盤チラシ、ゴルフチラシという合計5種のカタログを定期発行している。これに圧着はがきを利用したDMを加えた6媒体を、既存ユーザーの年齢や性別、購買履歴をもとに送り分けることで、リピート率を向上させる狙いだ。

  • 発行カタログ

  • チラシ

「従来は手作業でしたが、DataRobotを利用することで、どのカタログをいつ送れば良いのかを自動出力するようにしました。これによって受注数は1.5~1.6倍に伸び、さらに従来の手作業を外注していた分が内製できたことで工数の削減にも役立っています」と伊藤氏は成果を語る。

もちろん、カタログの送付方法を変更しただけではない。カタログに掲載する商品点数も需要のあるものに絞り込んだ。さらにAR技術を活用し、カタログにスマートフォンを向けるとより詳細な商品情報を閲覧し、オンライン注文できるような仕掛けも盛り込んだ。

  • メディアプラン

「失敗もありました。たとえば客単価アップを狙って、従来の1万円台程度が中心の商品群に10~20万円するようなアクセサリを入れてみたのですが、反応が悪く止めました。これは急激な変化にお客様がついてこれなかったのが原因だと思っています。もっと徐々に上げる工夫をするべきだったと思います」と施策を振り返りつつ、伊藤氏は「通信販売は、いかにリピーターになってもらうかが勝負です。たとえば、健康食品など定期購入のものを伸ばすのは有効だと思っています」と語った。