日本マイクロソフトは2018年11月5日から3日間、都内で年次イベント「Microsoft Tech Summit 2018」を開催。ここでは、基調講演の一部を紹介したい。昨今のMicrosoft/日本マイクロソフトはビジネス領域での活動が目立つが、AI(人工知能)に関する話題はエンドユーザーとしても興味深いのではないだろうか。
今回のイベント、日本マイクロソフトの代表取締役 社長 平野拓也氏は、「りんな」と会話しながら舞台に現れるという珍しい演出で登場。11月5日に発表した「共感視覚モデル」がキーとなる。
ソーシャルAIチャットボット、女子高生AI「りんな」は日々進化していおり、今度は視覚を備えるという。スマートフォンのカメラを通じて得た風景や人物を認識結果ではなく、「共感モデル」を通じて、AIの感情を込めたコミュニケーションを実現する。
さらに、会話の「次」を予測して電話のように自然な会話を実現する全二重方式や、以前の記事でも取り上げた「共感チャットモデル」で自然な会話を演出可能だという。日本マイクロソフトはAI技術について「人の創造性を拡張することに趣きを置いている。日本市場においてもAI技術でワクワクする環境を、ビジネスでもプライベートでもイノベーションを推進したい」(平野氏)と語った。
今回の基調講演にはMicrosoft CEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が登壇することから、多くの聴講者が集まったが、そのNadella氏はテクノロジー時代のビジネスモデルや、基盤となるITソリューション、AI、各事例について語っている。ここではAIにフォーカスして紹介したい。
Microsoftは、R&D部門であるMicrosoft Researchから独立する形で、数千人規模の研究組織となるMicrosoft AI and Research Groupの設立など、以前からAIに注力してきた。その成果が「この数年間、AIの大きなマイルストーンを達成した」(Nadella氏)という。
2018年1月には、SQuAD読解力テストで機械読解精度が人間と同等の認識率(88.5%)を達成し、同年3月も機械翻訳精度が人間と同等の精度(69.9%)になった。これらの技術をさまざまなソリューションに展開するMicrosoftは、「全員がAIの会社になれる」(Nadella氏)とアピール。
AIが内に抱える課題についても警鐘を鳴らす。
Microsoftは、「技術がもたらす予期しない問題に対しては、『プライバシー』『セキュリティ』『AIと倫理』について責任を持つ必要がある」(Nadella氏)と述べ、自社の取り組みを披露した。プライバシー問題に対しては透明性の担保を努力し、セキュリティ問題は自社ソリューションの強化に努めると語る。
そして倫理問題については、「コンピューターが何をすべきかを考える時代」(Nadella氏)と定義付け、包括的なデザインの原則を設けるべきだと強調した。Microsoftは社内に、AETHER(エーテル)の名で知られるAI倫理委員会を設けており、AI開発の検討を重ねている。「結果は顧客やパートナー、教育機関、政府にも伝えている。将来を見据えて各業界として協力し、グローバルの(AIに関する)原則を作るべきだ」(Nadella氏)と語った。
阿久津良和(Cactus)