アップルが米ニューヨークで開催したスペシャルイベントにて、小型デスクトップ「Mac mini」の新モデルが発表されました。このイベントでは、iPad Proの新型がお目見えするとみられていたものの、久しくモデルチェンジしていなかったMac miniの新製品が登場するとは予想されていなかったので、サプライズでの“復活”となりました。同じくサプライズでのお披露目となったMacBook Airとともに、会場からは大きな歓声が上がりました。
圧倒的にコンパクトなボディーを採用するMac mini、これまでは「低価格で買える入門用デスクトップ型Mac」というイメージがありました。しかし、今回登場した新しいMac miniは、同じスペースグレイのボディーカラーをまとうMacBook ProやiMac Pro並みの高性能に引き上げつつ、扱いやすさをしっかり維持した「幅広い層のユーザーが満足でき、Windowsにはないインパクトを持つ意欲作」に進化したと感じます。11月7日の発売を前に、ひと足早く試用してみました。
USBやHDMIなどの端子を残し、使い勝手のよさを維持
前述の通り、Mac miniはここしばらくモデルチェンジしていませんでした。最後にアップデートされたのは2014年の秋で、iPhoneでいえば実にiPhone 6/6 Plusが登場したタイミング。最新のMacBook Proと比べるとCPUの世代が古いばかりか、ストレージはSSDではなくハードディスクが用いられるなど、見劣りする点が多かったのが事実です。ファンの間では、「Mac miniはもうモデルチェンジされないのでは……?」という見方が広がっていました。
しかし、その予想を裏切って、新しいMac miniが姿を現しました。CPUを最新世代に置き換えたことに加え、ストレージがSSDになったことで、処理性能が飛躍的に向上しています。特に、SSDは最新世代の高速タイプを搭載しており、動画編集やデジカメ写真現像などもサクサクとこなせました。ただ、独立したグラフィックスチップは搭載していないので、グラフィックスの描画性能はそこそこにとどまります。本格的なゲーミングPCとして使うのは厳しいでしょう。
さらに、背面にズラリと並ぶ接続端子も一新。ほかの最新Macと同様に、高速転送が可能なThunderbolt 3を中心とした構成になりましたが、おなじみの四角いUSB端子やHDMI端子、有線LAN端子も残されたのがポイントです。
MacBook ProやMacBookなどのノート型MacはThunderbolt 3端子のみが搭載され、USB端子やHDMI端子は省かれています。それらの端子に対応する機器を使いたい場合は、変換コネクターや変換ケーブルを利用しなければならず、使い勝手はいまひとつでした。
新しいMac miniは、手持ちのキーボードやマウス、外付けディスプレイがそのまま接続できるので、古いパソコンからの乗り換えの際も余計な出費を抑えられるのが魅力。キーボードやマウスをワイヤレスタイプでそろえれば、自宅の薄型テレビをディスプレイ代わりにする…といった使い方も可能です。
ACアダプターいらずのスマートで美しい薄型ボディーは健在
これだけの性能向上を図りながら、従来モデルで定評のあったコンパクト&薄型ボディーを継承したのは大いに評価できます。アルミニウムを用いた外装は質感が高く、見ているだけでもホレボレします。特に、本体色がMacBook ProやiMac Proなどの上位シリーズと同じスペースグレイになったことで、より高級感が高まりました。
ちなみに、新しいMac miniの外装に使われているアルミニウム、すべて使用済みの製品からリサイクルされたアルミニウムが用いられています。再生アルミニウムといっても表面にムラがあったりザラザラしているわけではなく、見る限りはまったく分かりません。限りある資源を保護し、さらに製造時の二酸化炭素排出を大幅に抑えていることは、地味ながら評価できるポイントといえます。
Mac miniで実にスマートだと感じるのは、このスリムなボディに電源を内蔵しており、ゴロンと大きく重いACアダプターが不要なこと。細い電源ケーブルをコンセントに接続すればよいので、コンセント周りがスッキリできます。
「NUC」と呼ばれる手のひらサイズの自作Windowsパソコンや、一部メーカーが販売している超小型デスクトップパソコンは、その多くが電源にACアダプターを用いており、「本体はとても小さいのにACアダプターが大きい」という残念な構成になっています。それを考えると、Mac miniのスマートさが光ります。
もう1つスマートだと感じたのが、駆動時の騒音の少なさです。内部の冷却装置が大型化され、大口径のファンを搭載できたことが功を奏しているようで、ふだんはほぼ無音で動きます。デジカメ写真の現像を実行して負荷が最大級に高まると後方のスリットからの排気が増えますが、甲高さのない「フォーッ」としたノイズのため、あまり耳障りではありません。本体もほんのり熱くなる程度で収まりました。