米スフィロ(Sphero)は、プログラミング対応のボール型ロボットの新製品「Sphero BOLT」の日本発売に合わせ、プレス向けの説明&体験会を開催した。同社のロボットは、日本をはじめ全世界でプログラミング教育にも使われており、同社の教育向けプログラム「Sphero Edu」についても詳細が語られた。

  • 日本での販売が始まった新製品「Sphero BOLT」。実売価格は17,800円(税別)前後

  • Spheroシリーズを利用した教育向けプログラム「Sphero Edu」のロゴ

ドットマトリクスLEDを搭載した「Sphero BOLT」

Spheroは、米コロラド州に本社を置く、コンシューマ向けスマートトイ製品を開発・販売するメーカーだ。同社の製品は、社名を冠するボール型ロボット「Sphero」シリーズのほか、ピクサーの「カーズ」やスターウォーズ関連の公式リモコン玩具などがある。なかでも、Spheroシリーズは2011年の発売以来、着実に市場に受け入れられており、近年は教育市場でも好評を博している。

Spheroシリーズは、ポリカーボネート製の透明な密閉型ボディに身を包んだ主力モデル「Sphero SPRK+」と、ふた回りほど小さくリーズナブルな「Sphero Mini」が販売中だが、今回新たに8×8ドットのフルカラーLEDを搭載し、赤外線通信やデジタルコンパス、光センサーも内蔵した「Sphero BOLT」が最上位モデルとしてラインアップに追加された。

  • 右が、Spheroシリーズの顔といえるメインストリームモデルの「Sphero SPRK+」(実売価格は税別16,800円)、左がドットマトリクスディスプレイや光センサーなどを搭載してパワーアップしたSpheroの新しいフラッグシップモデル「Sphero BOLT」(実売価格は税別17,800円)。中の機構が見えるメカメカしさも、子ども受けする要素といえる

  • Spheroシリーズでもっともリーズナブルな「Sphero Mini」(実売価格は税別5,980円)。この機種のみ無接点充電ではなく、ケースを外してmicroUSBで充電するため、防水構造になっていない

  • SPRK+とBOLTは完全防水だが、シリコン製カバーをかぶせることで遊びの枠を広げられる

  • Sphero BOLTを手にポーズを取ってくれた、Spheroのジョン・キャロルCTO。茨城県にホームステイしていた経験もあるという

Sphero Mini以外のモデルは、高いところから落ちたり水に濡れても平気なので、かなりヘビーな遊び方もできる。

プログラミング教育で注目が高まるSphero

Spheroシリーズが注目されているのは、実は遊びの分野だけではない。プログラミング教育の分野での注目が高まっているのだ。

Spheroシリーズを使い、既存の教材では難しいSTEAM教育を実現するためのシステムが「Sphero Edu」だ。同名アプリとSpheroシリーズを組み合わせ、多様なアクティビティ(課題)を楽しみながらプログラミングを覚えていける。

STEAM教育とは「Science」(科学)「Technology」(技術)「Engineering」(工学)「Art」(芸術)「Mathematics」(数学)の頭文字を取ったもので、これらを統合的に学習する教育手法のこと。といっても難しいものではなく、要はロボットで遊びながら、さまざまな教科が扱っている問題の仕組みを理解していく仕組みだ。

Sphero EduのアプリはiOS、Android、macOS、Chromeに加えてWindows版も登場し、それぞれの環境で同じように利用できる。いずれもきちんと日本語化もされており、低学年の児童も安心して利用できる。

  • Sphero BOLTは、LEDの発光パターンもSphero Eduのアプリで設定できる

プログラミング方法は3種類用意されており、最も簡単な「Draw」(ドロー)では画面に線を引いてロボットを動かす。この段階では「命令を出す」というプログラムの基本に加え、アルゴリズムの概念を学習できる。

次の段階「BLOCKS」(ブロック)では、MITが開発した「Scratch」(スクラッチ)を使ってビジュアルにプログラムを構築できる。Scratchでは、命令があらかじめブロックとして用意されており、そのブロックを並べていくことでフローチャートを構築する。Spheroに搭載された各種センサーの情報を読み出して分岐させるなど、かなり本格的なプログラミングが可能になる。

  • 「Draw」の画面。単純な線だが、自分の操作でロボットが動くのは一種の感動がある

  • 「BLOCKS」の画面。操作が登録されたブロックを積み重ねていくだけなので、子どもでも簡単。その割に、相当複雑なことも指定できる

最後の段階「TEXT」(テキスト)では、JavaScriptを使ってフルスクラッチでプログラムを構築できる。前述したBLOCKSで構築したプログラムをJavaScriptに変換する機能もあるので、大まかなフローを作ってから細かい部分だけ手作業で修正するといった手法も可能だ。

書いたプログラムは、即座にSpheroに転送してリアルタイムで動作を確認できる。Sphero社が用意したコミュニティサイトにアップロードして公開したり、他人が公開したプログラムをダウンロードして動作を確認したり遊ぶこともできる。

  • 「TEXT」の画面。ブロックから変換するだけでもいいし、純粋に手書きで作ってもいい

  • すでに莫大な数のプログラムがアップロードされており、これを試すだけでも十分楽しめそうだ

Sphero Eduは、全世界で2万以上の学校に導入されており、すでに130万人を超える生徒がプログラミングに取り組んだという。操作が簡単なうえ、理解度に合わせて段階的な学習が行えるよう工夫されており、これだけ広く受け入れられたというのも納得できる。

情報通信総合研究所の平井聡一郎氏によると、日本では2020年から小中学校でプログラミング教育が必修科目となり、現在はその猶予期間として各学校が準備を整えているところだ。だが、実際にはプログラミングについて専門に教育を受けた教師はほとんどおらず、国としてもどのような教育をしていけばいいのか手探りの状況だという。

そもそも、プログラミング教育というのは、何もCやJavaなどの言語でプログラムをバリバリ作成することを指すわけではない。特に、小中学生に求められるのは「プログラミングで問題を解決するための考え方を養うこと」だ。Sphero Eduでは、Spheroを操作することそのものではなく、与えられた問題をSpheroを使って表現することで問題への理解を深めることが目的だ。この点、Sphero Eduは多彩な教科に応用が利き、まさに教育の現場で求められているものの多くが詰め込まれていると感じられた。

  • 教育市場向けに、SPRK+×12台、BOLT×15台のセット販売を用意する。一度に15台のSphero SPRK+やBOLTを充電できる写真の専用キャリング&チャージセット「BOLT Power Pack」も販売予定となっている

各地のApple StoreでSpheroが体験できる

日本でも導入している学校が増えつつあるSpheroだが、実際にどのようなものか体験してみたいと考える人も多いだろう。Spheroは、カメラ量販店や家電量販店で購入できるが、各地のApple Storeで実施されている無料プログラム「Today at Apple」の「Kids Hour」などで体験できる。スタッフによるていねいな解説付きなので、入門者や家族連れに最適だ。

  • 全国のApple Storeで開催している無料プログラム「Today at Apple」では、Spheroによるプログラミング講座などが無料で受けられる

東京都港区にある「TEPIA 先端技術館」のプログラミング体験エリアでも、Spheroをはじめとして十数種類ものロボットやドローンなどが体験できる。要予約ではあるが、修学旅行生などの団体を対象に、スタッフがついてインストラクションを受けながらSpheroを試すこともできる。

  • TEPIA先端技術館にあるSpheroの体験コーナー。自由に操作できるほか、ボウリングゲームなども遊べるようになっている