ファーウェイがスマホ新製品「Mate 20」シリーズを発表した。ロンドンで開かれた発表会では、同社の研究開発の集大成といえる新機能が続々と披露された。一部のモデルは日本での発売も期待される。

2018年第2四半期、アップルを抜き、世界のスマホ市場シェアで2位に浮上(IDC調べ)したファーウェイ。同社はスマホ商戦を勝ち抜くため、最新モデルにどのような仕掛けを入れてきたのか。

ロンドンで「Mate 20」シリーズを披露した、コンシューマー部門のリチャード・ユーCEO

「AI」「充電」で他社の1歩先へ

ついにアップルを抜いたファーウェイであるが、年末商戦が含まれる第4四半期では依然としてアップルが強い。とはいえファーウェイは昨年より早い時点で1億台の出荷を達成するなど、サムスン・アップルを追い上げる勢いは増している。

高価格帯から低価格帯まで、スマホの新製品発表ペースも衰えていない。最上位モデルは年に2回、カメラを中心としたPシリーズと、最新プロセッサーのMateシリーズを出しており、今回のロンドンでは「Mate 20」シリーズ4機種を発表した。

最新機能満載の「Mate 20 Pro」

独自のプロセッサー「Kirin 980」では、同社が得意とする人工知能(AI)分野の演算能力を強化。新たに搭載した動画の特定の色を着色する機能や、食べ物の写真からカロリーを計算する機能でAIを活用しているという。

しかし、今回の発表でファーウェイは、これまでのように「AI」を連呼しなくなったように感じた。多くのスマホメーカーがAIの活用をうたい始めた中で、独自プロセッサーを持つファーウェイは”それらの一歩先を行く”と言いたいのかもしれない。現に同社は、AI (Artificial Intelligence)を上回る「AI(A HIGHER INTELLIGENCE)」というキャッチフレーズを披露した。

「WELCOME TO A HIGHER INTELLIGENCE」というキャッチフレーズを強調

最近、中国メーカー各社のスマホは高機能との評価が定着してきたが、ファーウェイのMate 20 Proはその典型だ。画面内に埋め込まれた指紋センサーや、3Dに対応した顔認証、他のデバイスをワイヤレス充電できる給電機能などは、多くのAndroid端末メーカーより半年から1年先を行く機能といえる。

iPhone XSをワイヤレス充電できる機能を発表。会場を大いに沸かせた

台数シェアUPに加え、高価格帯へのシフトも

スマホ世界シェアで2位を狙うファーウェイだが、出荷台数を大きく左右するのはMate 20シリーズのようなハイエンド機種ではない。たとえば日本国内のSIMフリー市場で、最も売れているのは3万円前後の「P20 lite」や、5万円前後の「nova 3」だ。

だが、ファーウェイは台数を追うだけでなく、利幅の大きい高価格帯へのシフトを同時に狙っている。それを象徴するのが、ポルシェデザインとのコラボモデル「Mate 20 RS」だ。最上位モデルの価格は2095ユーロと、iPhone XS Maxを400ユーロも上回る。

最上位は2000ユーロ超のラグジュアリーモデル「Mate 20 RS」

一方、iPhone対抗の主力機で日本での発売も期待されるMate 20 Proは、欧州価格が1049ユーロとなっている。高価格帯の中でも、iPhone XSに対して100ユーロ、XS Maxに対して200ユーロ安く、戦略的な価格設定がうかがえる。

独自規格のメモリ「NM Card」で利益拡大へ

その中でも、ファーウェイが独自の利益を確保する秘策として繰り出してきたのが新規格のメモリーカード「NM Card(Nano Memory Card)」だ。これまでmicroSDが世界的に普及している中で、サイズを小型化。SIMカードと同じ形状にすることでスロットを共有できるのが特徴だ。

microSDよりも小さい新規格のメモリーカード「NM Card」を採用

実売価格は同容量のmicroSDよりも割高になるとみられ、メモリーカードの買い直しが必要な消費者からは反発がありそうだ。特に新興国では、スマホを買い換えてもmicroSDを使い回せる経済性が支持されており、普及は容易ではない。

だが、アップルはこうした独自規格を得意としており、巨額の利益の源泉となってきた。現段階での対応機種はMate 20シリーズに限られるが、今後は他のモデルにも拡大する可能性が高い。ファーウェイの新たなチャレンジとして注目したい。

(山口健太)