「オペレーショナルエクセレンス」実現に向け、RPAに注目
みずほ銀行を中心とする、みずほフィナンシャルグループがRPA活用の検討を始めたのは、2016年のことだという。「2016年度からの3年間を対象とした中期経営計画の中で、オペレーショナルエクセレンスを目標に掲げています。オペレーショナルエクセレンスとは卓越した業務遂行力という意味であり、業務オペレーションが磨き抜かれ、それが競争力になっている状態をいいます。オペレーショナルエクセレンスの実現にRPAが有効ではないかと考えたのです」と語るのは、みずほグループのシステム面を担うみずほ情報総研 ソリューションビジネス部 リードITエンジニアの井筒雄介氏だ。
RPAツールについて調べ始めた2016年末には、すでに日本市場向けに展開している製品が複数存在した。みずほ情報総研ではベンダー各社の説明を受けた上で、100項目以上に及ぶ独自の比較項目を連ねた質問票を送ったという。
「みずほグループの業務は多岐にわたり、内容も複雑です。1つの製品に限定してしまうのはリスクがあると考え、機能面はもちろん価格や動作環境についても質問しました。さらに、みずほ銀行内の開発環境を利用し、仮想のシナリオを用いた動作検証も行い、製品選定は厳格に行いました」と井筒氏は語る。
身の回り業務の効率化には「WinActor」をファーストチョイスに
現時点で採用しているRPAツールは4製品で、すべてがデスクトップ環境で動作するタイプとなっている。
「多彩な業務に対し、1つのRPAツールで対応しようとは元々考えていませんでした。ある程度使い分けが必要になるだろうと考えながら、調査と検証を重ねた結果、4製品を採用しています。中でも、身の回り業務の効率化に利用するRPAツールのファーストチョイスとしているのが、WinActorですね」と井筒氏。
現場では、RPAの活用方法が大きく2種類設定されている。1つは大量処理を行う業務への適用であり、もう1つは各現場で身の回りの業務改革を行う比較的小規模な「セルフ型」だ。
大量処理を行う業務はビジネスへの影響も大きいため、みずほ情報総研のRPA専任チームがロボットの作成を行う。これに対し、身の回りの業務改革は、現場の人間が自身の業務を自動化するためのロボットを作成する。
「大量処理を行う業務についてはエンジニアが担当しますから、対象の業務システムの環境で動作させやすいことを重視してツールを選択しています。一方、現場で利用するセルフ型ツールにおいてはインタフェースのわかりやすさが重要です。画面が日本語化されていること、基本的なテンプレート処理がしっかり用意されていること、サポートが充実していることなどを重視し、WinActorを第一選択としました」と、井筒氏はRPAツールの選定基準を語る。
使いやすさ、わかりやすさ、サポート力で現場の人間が利用するツールはWinActorを優先しつつ、大量処理を行う業務には、操作性などから最適なツールを選択して使用している状況だ。
研修会で使い方を学んだ現場スタッフが独自にロボット作成
「2種の使い方のうち、先行スタートしたのは大量処理型です。こちらは2017年春に投資信託の口座開設業務に採用し、本格稼働させました。従来はデータをプリントした紙を見ながらオペレーターが入力していたのですが、紙を印刷することなく、PDFからデータを抽出してロボットに入力を任せることで自動化しています」と語るのは、みずほ情報総研 ソリューションビジネス部 リードITエンジニアの潮見茂氏だ。
一方、セルフ型についても2017年度中に50人程度がテストケースとして取り組みを開始。半日×2日程度の研修会を経て活用がスタートしているという。
「セルフ型は身の回りの業務を改革するということで、部門内で自由にロボットを作成できるようにしています。結果的に使われないロボットが出来てしまうのもある程度は仕方がないと考え、効果測定はしていません。RPA専任チームが開催する研修会の参加人数は、現時点でグループ全体で400名以上まで拡大しました」と井筒氏は語る。なお、研修会の参加者が業務の中で周囲に広げていっていることもあり、実際にRPAを活用できる人数はさらに多くなっている。
セルフ型の利用にあたっては、事前に承認を受ける必要はなく、出来上がった後にRPA推進部署に事後報告すればよいという簡易なルールになっているという。
「研修会には、各部署の管理者によびかけて部署から数人ずつ参加してもらっています。基本的にはやる気のある人、積極的な人が参加している状態です。若手とベテランの偏りはなく、部署から若手とベテランを1人ずつ参加している場合もあります。ある程度業務がわかっている必要があるので、数年目の新人というよりはもう少し業務がわかってきた頃が向いていますね」と潮見氏は語った。