デロイト トーマツ コンサルティング ヒューマンキャピタル HR Transformationリーダー小野隆氏

デロイト トーマツ コンサルティングは8月27日、世界124カ国1万1000人を超える人事部門責任者および管理職などへのアンケートとインタビューを基に人事部門・人材活用の課題とトレンドをまとめた「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2018」を発表した。

同調査は今年で6回目となるが、ヒューマンキャピタル HR Transformationリーダーを務める小野隆氏は、今回の調査の変化として「個人の力が増大している」「企業は社会に広がるリーダーシップの空白を埋めることを期待されている」「テクノロジーの変化は社会に予期せぬインパクトを与えている」の3点を挙げた。

そして、小野氏は「今日の企業は企業がもたらす社会全体へのインパクトに加え、従業員、顧客、コミュニティとの関係性によって評価されるケースが増えている」と説明した。こうした状況を、同社は「営利企業からソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)への転換」と表現している。

「今後は、デジタルの観点から、ソーシャルなエコシステムの下でEnd to Endのサービスを提供していく必要がある。そうしないと、企業として生き残ることができない」と小野氏。また、これからの企業を担うミレアニル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代)は、企業に対し、社会を変えることを役割として期待しているという。

同レポートでは、こうした変化を促す大きな力として「個人の力」「社会におけるリーダーシップの空白」「継続的な成長のためのテクノロジーの活用」に着目し、それらに関連して、以下のように企業が準備すべき10の人事・組織トレンドを取り上げている。

  1. シンフォニックな経営陣:チームがチームをリードする
  2. 労働力のエコシステム:企業を超えた管理
  3. 新たな報酬:パーソナライズ、アジャイル、ホリスティック
  4. キャリアからエクスペリエンスへ:新たな道筋
  5. 健康寿命延伸による恩恵:人生100年時代における仕事のあり方
  6. 企業市民とソーシャルインパクト:社会は企業を移す鏡
  7. ウェルビーイング:戦略と責任
  8. AI、ロボティクス、自動化:人間参加型
  9. ハイパーコネクテッドな職場:生産性へのインパクトとは?
  10. ピープルデータ:どこまでが許容範囲か?
  • 企業が準備すべき10の人事・組織トレンド

「シンフォニックな経営陣」とは、各自のチームを指揮しながら、経営陣自身もチームとして一丸となって協調することを意味する。経営陣は各人の領域から抜け出し、相互協力を強化しなければならないという。

「労働力のエコシステム」「新たな報酬」「キャリアからエクスペリエンスへ」は「個人の力」というテーマにつながる。

小野氏は「企業は、人に加え、ロボティクス(RPA)やAIをどう組み合わせて、ビジネスを進めていくかということを考えていく必要がある。新たな報酬を提供する仕組みとして、短期間でフィードバックを行ってパフォーマンス管理を行う企業が増えている。報酬に関する選択肢を増やし、それをパーソナライズされた報酬を提供することが求められている」と説明した。

「健康寿命延伸による恩恵」「企業市民とソーシャルインパクト」「ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)」は「健康寿命延伸による恩恵」というテーマにつながる。日本では「高齢化」「少子化」が深刻な課題として議論されているが、人生100年時代における仕事のあり方として、グローバルでも「シニアの活用」が課題になってきているという。

小野氏は、ウェルビーイングについて「健康から企業や個人のパフォーマンスへと概念が広がってきている」と述べた。日本では「働き方改革」と連動して、ウェルビーイングを推進する動きが始まっているが、同社では「企業が提供しているものと従業員が期待するものの間にはキャップが存在する」と指摘している。

「AI、ロボティクス、自動化」「ハイパーコネクテッドな職場」「ピープルデータ」は、「継続的な成長のためのテクノロジーの活用」というテーマにつながる。

小野氏は「AIやRPAが企業に導入されると、人がやる仕事がなくなるという意見があるが、そうとは限らない。AIを導入する場合は、人間が利用するデータの学習などを行う必要があるが、今までにはなかった仕事が増えてきている」と、AIやRPAが企業に及ぼす影響を説明した。

同レポートの詳細はWebで公開されているので、興味がある場合は、これをダウンロードするとよいだろう。