Appleの直営ショップ「Apple 京都」のオープンを前に、23日、プレス向けの内覧会が実施された。

  • 8月25日午前10時にオープンするApple 京都

Apple 京都は、2018日8月25日午前10時にオープンを予定しているが、それに先立ち、プレス向けの内覧会が実施された。これに合わせて、Appleのシニアマーケットディレクター・Denny Tuza氏が来日、詰め掛けた報道陣に新店舗のコンセプトなどを紹介した。

  • Appleのシニアマーケットディレクター・Denny Tuza氏

Tuza氏は「文化とテクノロジーの中心地である京都に、Apple Storeをオープンでき、とてもワクワクしている」と喜びをあらわにする。京都にApple Storeをオープンさせるのは念願叶ってのことだとも。思い起こせば、京都はスティーヴ・ジョブズが愛した街でもあった。

  • 一階の様子。iPhoneやiPad、Apple WatchにMac、Beats by Dr.Dreのヘッドホン/イヤホン、各種アクセサリが並ぶ

また、京都には有力なiOSデベロッパーが拠点を構え、Appleのテクノロジーを駆使して創作活動に勤しむアーティスト、大学でApple製品とともに勉学に励む学生が多く住む。Appleにとっては完璧なロケーションだと言える街なのだ。Apple 京都は、そうした街の発展に寄与する存在となっていくことだろう。

  • 先頃発売されたMacBook ProをはじめMacBookシリーズ全モデルを取り揃える

  • iPhone Xなど、iPhoneも各種ラインナップ

周辺に京都の有名な寺社が多く集まる四条通は、1600年代から目抜き通りとして栄えてきた。Apple 京都の建築デザインは、その歴史ある景観にマッチするようなコンセプトが採用されている。一階はガラスで囲まれた、これまでのApple Storeのスタイルを踏襲しており、賑やかな通りと落ち着いた店内の境界を感じさせないものになっている。この店外と店内が続いているというアイディアはここ数年オープンした各国のApple Storeでも取り入れられているようだ。二階は薄く透けた建具で囲まれていて、内側から灯りが点ると建物全体が「行灯」のように見える。正面部分(ファサード)の上部は木造家屋と障子をイメージして、格子と和紙を思わせる素材をあしらった。近くに寄ってみると、障子紙のような模様が入っており、細部までこだわった作りになっているのがわかる。壁は漆喰でできているが、Apple Parkや各国のApple Storeで使用されている石材や木材、金属部と調和が図られており、「伝統的な日本家屋との融合」という印象を受ける。

  • 吹き抜けのアトリウムにはToday at Appleのセッション向けに「フォーラム」を設置

建物の中央部にあり一階から二階にまたがる吹き抜けのアトリウムでは、無料の学習講座「Today at Apple」のセッションが毎日開催される。この日は二階でiPhoneを使ったポートレート写真のテクニックを伝授するセッション、Swift Playgroundsを利用したプログラミングの基本講座をショートバージョンで実施。また、一階では京都を拠点に活動しているグラフィックデザイナー、三重野龍(みえの・りゅう)さんの特別セッションが行われた。

  • 京都を拠点に活動しているグラフィックデザイナー、三重野龍(みえの・りゅう)さん

三重野さんは京都精華大学グラフィックデザインコース卒業後、フリーランスでグラフックデザインの仕事に携わる。ペイントユニット「uwn!(うわん)」のメンバーとして活動し、フリーマガジン『AT PAPER.』のデザインを手がけるほか、2013年よりパフォーマンスグループ「MuDA(ムーダ)」に参加。幅広い分野で活躍するアーティストだ。特別セッションはiPad ProとApple Pencil、Apple純正のワープロアプリ「Pages]を利用して、京都の「京」の字をグラフィカルなロゴデザインを作っていくワークショップ形式で進められた。「京」の字の「口」の部分を手描きにして、新しい「京」を作ろうというもので、参加者はイマジネーションを膨らませながら、思い思いの「京」の字を描いて、セッション最後の発表会へとなだれ込む。五山送り火をモチーフにした作品には、三重野さんから絶賛のコメントが寄せられた。

  • iPad ProとApple Pencil、Apple純正のワープロアプリ「Pages」でロゴデザインに挑戦!

  • 三重野さんは五山送り火をモチーフにした作品を絶賛

三重野さんのセッションで利用されたビデオウォールは、米国・シカゴの「Apple Michigan Avenue」などで導入されている自立型のもので、これは日本では初となる。Apple 新宿にも6Kのビデオウォールが設置されているが、こちらは壁に埋め込まれたタイプであった。

  • ビデオウォールは、国内初となる自立型のものが導入された。その脇の階段はSteve Jobs Theaterと同様のデザインが採用されている

二階に上がる階段はSteve Jobs Theaterと同様のデザインが採用されていて、建材も同じものが使われているようだ。そして三階には日本では初となる法人向けの商談スペース「BOARDROOM」が設置されている。ここはスタートアップ企業や教育関係者らを招いての利用を想定しているということで、一般客は入れない。あくまで、商談用のスペースであるとのことだ。なお、BOARDROOMの内装はApple Parkの会議室と同じで、あたかも本社を訪れたかのような気分に浸れる。BOARDROOMの壁にはApple Parkの写真や、ノーマン・フォスターによるものと思われるイメージスケッチが飾られている。

  • 法人向けの商談スペース「BOARDROOM」

Apple 京都は前述した通り、これまでのApple Storeのスタイルを踏襲しながら、新しい側面を打ち出す。クリエイティビティ溢れる、文化を生み出し続けてきた街で次の創造力の源になるインスピレーションを届けるべく。建築デザインに伝統的な日本家屋のテイストを加えたのは、ローカライズのわかりやすい提示とも言えるが、他にもToday at Appleでは京都をベースに活動するクリエイターを講師に迎えるだとか、「ここ京都」ならではの展開ができそうなのだ。もともと、世界中どこの店舗に行っても同じサービスを受けられるのがApple Storeの特徴だったのだが、それをベースに、近年は地域の事情に合ったローカルなサービスも併せて提供するようになってきている。コミュニティデザインの視点から、リージョンごとの商慣習に寄せていくということなのだろう。そう考えると、開発者や作家、有名大学が多いところにBOARDROOMを設置したのは大いに頷けるところである。

  • 二階にもMacが並ぶ。キャリアとの契約用スペースや、Today at Apple向けのテーブル、Genius Grooveなどのサービス用のテーブルが置かれている。写真奥の障子状のファザードは和紙のような素材が使われており、昼間は柔らかい外光が入るようになっている

繰り返すと、Apple 京都のオープンは8月25日午前10時。台風20号は通り過ぎていると思うが、日差しと厳しい暑さが戻ってくるのが予想される。Apple Storeの新規オープンで恒例となっているプレゼントも用意されているので(今回はTシャツ、ピンバッチ、ステッカーのセット。エンボス加工のボックス入り)、それ目当ての大行列ができるのは想像に難くないが、くれぐれも熱中症には注意されたい。当日は安全に、楽しく開店をお祝いしようではないか。

  • オープン初日にプレゼントされるTシャツ、ピンバッチ、ステッカーのセット。エンボス加工のボックス入り。一緒に写っているパスはプレス用に配布されたものでエンボス加工が施されている。