北海道・東川町を中心としたエリアで開催された「写真甲子園 2018」こと第25回全国高等学校写真選手権大会。今年は、和歌山県立神島高校が2連覇を達成して幕を閉じました。審査委員に高い評価を得て逆転優勝に導いた作品を改めて振り返るとともに、熱戦を終えた神島高校のメンバーの喜びの声と、審査委員長で写真家の立木義浩氏のインタビューをお届けします。

  • 優勝した和歌山県立神島高校のメンバー。左から松下莉子さん、平坂瑠菜さん、岡田あかりさん。右は恵納崇監督

本格的な写真撮影は高校に入ってから、という3人

今回の神島高校のメンバーは松下莉子さん、平坂瑠菜さん、岡田あかりさんの3人。いずれも3年生で、松下さんと平坂さんは昨年の優勝メンバーでもあります。

  • 審査委員長の立木義浩氏(左)から優勝旗を受け取る神島高校のメンバー

3人とも、デジタル一眼レフカメラは高校に入ってから使い始めたそう。松下さんは「一眼レフではないですが、弟の運動会などでは撮影係でした」、平坂さんは「スマートフォンで撮影していました」、岡田さんは「写真はほとんど撮らず、スマートフォンでも撮っていませんでした」というように、程度の差はあれども、本格的な写真体験は3人とも高校から。そんな3人が、見事に優勝を勝ち取ったのです。

本大会の感想を聞いたところ、松下さんは「みんなそれぞれ考え方が違うので、普段から合わせるような練習をしていました。頻繁に連絡を取り合って、どんな写真を撮った、どんな写真が足りないと話し合ってきました」とコメント。大会は3人一組ですが、撮影時はバラバラに動くこともあるので、テーマやストーリーに合わせた写真が撮れるように、3人の連携が重要だったということでしょう。

平坂さんは「2回目の出場ですが、去年より走り回った感じがありました。一生懸命走り回ってやり切った感のある大会でした」と感想を述べています。よい写真を撮るには「足」で稼ぐことも重要で、限られた時間内ではどうしても走り回る必要があったようです。

岡田さんは「北海道の人はみんないい人で、思っていた以上に楽しかったです。いろいろな人と出会えてうれしかった」と、人々との交流を楽しんだ様子でした。特に東川町は、毎年の写真甲子園の開催や「写真の町」としての取り組みもあって住民の理解が深く、写真を介したコミニュケーションがしやすい環境にあるのも大きかったでしょう。

写真甲子園では3日間の撮影期間中、審査とプロの写真家からの講評が毎日あります。「セカンドステージでのアングルで、(審査員の評価が)自分たちの思っていることではなかったので、大げさにやらないようにしました」(平坂さん)と、講評に対してきっちりと対応してきたことを明かしました。

  • 一般の来場客にも公開される公開審査は毎日実施されます

  • 講評を聞く神島高校のメンバー

最終日、ファイナル審査で3人が選んだ組み写真のタイトルは「縁」。モノクロで撮影した人物写真を集めたものでした。この意図について聞いたところ、「変わったことをあまりしないで初心に戻り、露出などの設定は確実に(3人で)合わせるようにしました。今まで数え切れないぐらい撮ってきているので、その成果がこの大会で出るはずだからと話して出発して、そして最後の8枚を選びました」(松下さん)ということです。

  • 優勝を決めた神島高校のファイナルステージの作品『縁』

ファイナルステージはテーマが「自由」でしたが、3人はモノクロ・人物写真を選択しました。その理由を、松下さんは「光を見る練習を1年生の時からずっとしてきて、光はモノクロの方が際立つと思っています。人を撮るのが好きなので、光と表情に注目してもらえたらうれしいと思ってモノクロを選びました」と話します。

モノクロに慣れているという3人ですが、逆に一番難しかったのが初日のファーストステージのテーマ「色(カラー指定)」だったそう。ステージごとに異なるタイプの組み写真を狙っていて、ファイナルステージで人物写真を考えていたといいます。「今まであまりやったことがなかったのですが、モノを多めに入れながら曇った日をイメージして作りました」(松下さん)。

しかし、そうなると最終日以外で最高のシチュエーションがあっても、その日の組み写真には使えません。実際、「カラーで撮っていたけど、モノクロで撮っておけばよかったというものもあった」(松下さん)そうです。

しかし、結果として優勝にたどり着いた神島高校の3人。お気に入りの写真を聞いてみると、松下さんは「ファイナルステージの2枚目」、平坂さんは「セカンドステージの2枚目」、岡田さんは「ファーストステージの白菜」とのことでした。

  • 神島高校ファイナルステージ作品『縁』の2枚目

  • 神島高校セカンドステージ作品『旭川平和通り商店街』の2枚目

  • 神島高校ファーストステージ作品『朝』の白菜