6月のComputexで、2018年第3四半期の発売が予告されていた第2世代Ryzen Threadripper(Gen2 Threadripper、以下Threadripper 2)だが、正式な発売日が8月13日に決まったことが明らかになった。

これに合わせる形でAMDがThreadripper 2の事前説明会を開催した(Photo01)ので、ここで公開された情報を基に、Threadripper 2の製品ポジションや特徴をお届けしたい。

  • 説明はいつものJim Anderson氏(SVP&GM, Computing & Grpahics Business Group)

Threadripper 2は2系統のラインナップ

まずは気になるラインナップや価格、それと出荷時期の話である。Threadripper 2ではエンスージアストやゲーマー向けと、クリエイターやイノベイター向けという2つにラインナップが分かれることになった(Photo02)。

  • Photo02:もちろん消費電力とか発熱を考えなければ、多コアと高動作周波数が両立できるわけだが、現実問題としてそれも厳しいわけで、動作周波数に振ったのがXシリーズ、コア数にふったのがWXシリーズということになる

この理由はComputexのレポートでもちょっと触れたが、ワークステーションにおけるニーズの高まりを反映したものである。

CADやCGのレンダリング、動画の編集やエンコード/トランスコードといった用途では、CPUのコア数が多いほど有利なのだが、フロントエンドのワークステーションでは、EPYCほどのメモリ搭載量やI/O性能は過剰で、そうした用途においてEPYCではなくThreadripperの採用例が多かったという。ここでは、動作周波数は控えめでもいいが、コア数が多いほど有利である。

一方の、本来のThreadripperが目指したエンスージアスト向けの場合、ゲームのプレイ動画を配信するときは、コア数が効いてくるが、純粋にゲームだけであれば16コア/32スレッドでも多すぎるほどで、それよりも動作周波数を引き上げたほうが性能が出しやすい。

エンスージアスト/ゲーマー向け、クリエイター/イノベイター向けそれぞれで求められるものが異なるため、製品ラインを分けた格好だ。

エンスージアスト/ゲーマー向けはXシリーズ

さて、エンスージアスト/ゲーマー向けはX Seriesと呼ばれる(Photo03)。ラインナップは12コア/24スレッドの2920Xと16コア/32スレッドの2950Xの2製品である。

  • Photo03:第1世代の動作周波数は、1920Xが3.5GHz/4.0GHz、1950Xは3.4GHz/4.0GHzと(それぞれBase/Max。XFRは別)になっており、Baseはあまり変わらないが、Maxが300~400MHzほど引き上げられている

スペック的には第1世代にあたる1920X/1950Xと同じ構成だが、動作周波数が若干引き上げられている。

もう1つ異なるのが価格である。2017年8月の発表時には、1920Xが799ドル、1950Xが999ドルという価格付けになっていたのだが、その後2017年10月ごろにIntelのCore-Xシリーズ投入を受けて値下げを行っており、直近の価格だと1920Xが522.23ドル、1950Xが749.99ドル(原稿執筆時点でのUS Amazonでの価格:税・送料は別)になっている。

そんなこともあってか、Threadripper 2の価格は第1世代に比べるとやや高いが、その差は決して大きくない。Computexのレポートにもあるように、Threadripper 2のXシリーズ投入後も第1世代の製品は価格改定せずで併売というのが現在の予定だそうで、その意味ではちょうど手ごろな価格差、という気もする。

ちなみに性能の一端として示されたのがPhoto04。対抗馬はCore i9-7900Xで、ゲームではちょっとだけビハインドはあるが、その他のアプリケーションではおおむね高い性能を実現できているとする。このあたりは実際にテストを行って確認することになるだろう。

  • Photo04:とはいえ、ゲーマー向け製品でGaming Suiteが競合比平均-6%というのは、もう一頑張りしてほしかった気もするが

ちなみにこちらは引き続き2ダイ構成である。つまり2つの実働ダイと2つのダミーダイが搭載されるという構成である。このためL3キャッシュはトータル32MB(16MB×2)。またTDPはどちらも180Wとなっている。

クリエイター/イノベイター向けはWXシリーズ

一方、クリエイター/イノベイター向けと位置付けられるのがWXシリーズ。ラインナップは24コア/48スレッドの2970WXと、32コア/64スレッドの2990WXの2製品である。コア数がXシリーズのきっちり倍(つまり4ダイのフルパッケージ)になっている分、動作周波数がやや控えめ(定格で3GHz)に落ちている。

  • Photo05:コア数がXシリーズの倍な分、価格もXシリーズのきっちり倍になっている

もっともコア数が倍だから、マルチスレッドが効果的に利用できるアプリケーションでは大きく性能を伸ばすことになる。実際Core i9-7980XEとの性能比較(Photo06)では、結構大きな性能差を実現したとアピールする。こちらも性能比較は別途行うことになるわけだが。

  • Photo06:もっともこちらについては、Intelが予告した28コア製品が本命の対抗馬、という気はする

WXシリーズはコアの数からわかる通り4ダイ構成だ。L3キャッシュはトータル64MBである。4ダイということで動作周波数は低めに抑えられているが、それでもTDPは250Wになっている。

気になる出荷時期だが、13日の時点で投入されるのはハイエンドの2990WXのみとなる。8月末には2950Xも追加で投入される。2920Xと2970WXについては10月に出荷予定、というのが現時点でのタイムスケジュールである(Photo07)。

  • Photo07:ハイエンドから先に、というのは初代RyzenとかRyzen Threadripper、Vegaなど最近のAMDの製品ラインナップで常に守られているやり方で、今回もこれを遵守した形だ

ついでにパッケージについて。CPUそのものは既存のSocket TR4のままで、見た目にはシルク印刷されたOPN位しか見分ける術が無いが、販売されるパッケージはアタッシュケース風のものに変更された(Photo08~10)。

  • Photo08:この状態で販売されることになる模様

  • Photo09:蓋を開けるとこんな感じ。なんか中身を取っ払ってMini-ITXを仕込めそうな気もする(可能かどうかまだ寸法を測ってない)

  • Photo10:Photo09でCPUの下の箱を引っ張り出すと、トルクスドライバーとCPUクーラー用マウントが収められている