日本電気(以下、NEC)とダイキン工業は、2016年より取り組んでいる知的生産性を高める空気・空間を実現するための共同研究において、オフィスなどの執務空間での知的生産性向上には空調による温度刺激が特に効果的であることを実証した。さらに、眠気の兆しが見えた早期の段階で刺激を与えることが、覚醒度を保つのに効果的であることも明らかにした。
同実証実験は、NECとダイキン工業の共同研究によるもので、同実証実験の成果は、9月4日~6日に東北大学にて開催される「2018年度日本建築学会大会」で発表される。また、NECは覚醒度推定技術について、7月17日~21日に米国ホノルルにて開催された医工学分野のフラグシップ国際会議「IEEE The 40th International Engineering in Medicine and Biology Conference」で発表を行った。
同実証実験では、知的生産性を高めるため、覚醒度を適切に保つにはどのような方法・タイミングの刺激がよいかを確かめることを目的とし、定期的に被験者の覚醒度を測りながら、空調(温度)・照明(照度)・アロマ(芳香)それぞれの刺激を与え、覚醒度の変化を検証した。
検証方法としては、環境条件を所定のタイミングで変化させた際の、被験者の覚醒度変化を確認した。被験者には、環境条件1〜4の中で、眠くなりやすいタスク(2桁の加算暗算)を与え、5分毎に眠気を5段階で申告してもらうとともにカメラにより眠気を推定した。
その結果、空調による温度刺激では、環境変化を与えない場合と比較して平均の覚醒度が5段階中、最大で約2段階分上昇し、さらに45分以上眠気を抑制し続けることがわかった。また、照明やアロマによる刺激では、環境変化を与えない場合と比較して、覚醒度が最大0.5段階分上昇することが確認された。さらに、既に眠い状態になってからではなく、眠気の兆しを検出した時に刺激を与えることで覚醒効果が大きくなり、その効果は温度・照度・芳香刺激など、刺激の与え方や組み合わせで高められることがわかったという。
同検証をもとに、まぶたの開度から眠気の兆しを検知して、空調・照明を組み合わせた刺激を与えるプロトタイプの制御システムを構築。7月よりダイキン工業(40平米)・NEC(200平米)の検証用オフィスにて、執務中の覚醒度データを取得して空調・照明の環境制御を行うフィールド実験を開始しているということだ。