自転車といえば、いろいろなメーカーやブランドを思い浮かべる人がいると思います。なかには、パナソニックを筆頭に挙げる人がいるのではないでしょうか。そう、電動アシスト自転車です。

まず電動アシスト自転車の国内市場ですが、自転車全体の総需要が700万台、うち60万台(約8%)が電動アシスト自転車といわれています。その電動アシスト自転車で、40%のシェアを持つのがパナソニック サイクルテック。なので、自転車といえばパナソニック……という人もいるわけです。

今後、自転車需要における電動アシスト自転車の割合をもっと上げていくべく、パナソニックはラインナップの強化、コト体験の提供、レンタル市場の拡大を目指すとのことです。その一貫として開催されたプレスツアー、ひょいひょいと行ってきました。

場所は大阪にある柏原工場です。新大阪からバスで小一時間でしょうか。この柏原工場は、国内の自転車メーカー、特に電動アシスト自転車としては唯一、一貫生産の工場となっています。敷地面積(21,200平方メートル)には、フレーム製造ラインから塗装ライン、組み立てライン、完成品の倉庫があり、月産1,000台の生産力を誇ります。ということでさっそく、工場内の見学です。

  • パナソニックの電動アシスト自転車、こんな風に作られてる

    電動アシスト自転車を生産しているパナソニック サイクルテックの柏原工場

まずは展示から。最新モデルをはじめとして、電動アシスト自転車の初期型モデルまで並んでいます。今では、いわゆるママチャリタイプだけでなく、後ろに子どもを乗せるチャイルドシート付き、大きな荷台のある3輪自転車、そしてスポーツタイプと、さまざまな電動アシスト自転車がラインナップとしてそろっています。現在、パナソニックは32タイプの電動アシスト自転車を抱えており、すべてをこの柏原工場で生産しています。

  • パナソニックの電動アシスト自転車、こんな風に作られてる

    1980年に発売された業界初の電気自転車、DG-EC2

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    子どもを快適に乗せて運べるギュット・アニーズシリーズ

工場の中へ……

工場内に入ると、フレームの元となるパイプがずらっと並んでいます。これだけの量でも、たった数日で全部が自転車になってしまうというのですから驚きです。

このパイプをそれぞれの部品サイズに切断し、加工します。加工したパイプ同士を溶接でつなげてフレームにするのですが、この溶接には、見た目のキレイなロー付け溶接(ガス溶接)、ロボットが行うMAG溶接(電気溶接)、チタンフレームに特化したTIG溶接(電気溶接)の3つを使い分けています。

  • パナソニックの電動アシスト自転車、こんな風に作られてる

    工場内には自転車の材料となるパイプが並んでいました

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    切断したパイプを加工し、それらを溶接で接続していきます

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    見た目がキレイな仕上がりになるロー付け溶接

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    ロボットによる溶接で効率的に生産できるMAG溶接

溶接が終わると塗装です。塗装は3コート3ベイクの静電塗装で行っています。つまり下塗り、中塗り、上塗りの3回塗装を行い、その都度乾燥させているわけです。使えるカラーは2018年モデルで31色とかなり豊富。登録色自体は200色あるので、年度によってちょっとしたカラー変化が見られますね。

塗装が終わったら組み立て。ひとりで一台を担当するセルライン、少人数でまわるミニライン、大人数で行うロングラインという3つのラインによって、自転車が組み立てられます。組み立ての次は検査です。自転車技師という資格を持った技師がチェックし、最終的には梱包の仕様検査まで行われます。

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    2018年モデルは、カラーを全部で31種類用意しています

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    職人の手によって組み立てられていきます

  • パナソニックの電動アシスト自転車、こんな風に作られてる

    高級スポーツ車はひとりが1台を担当するセルラインで組み立てられます

さらに、POS(Panasonic Order System)というオーダー専用のラインもあります。受注から出荷までハンドメイドで行い、クロモリ(クロムモリブデン鋼)フレームが9車種、チタンフレームが5車種、そこからオーダーメードの自転車を生産しています。また、完成車だけでなく、フレーム体だけで出荷するのもPOSの特徴です。

一通り見学して、思った以上に手作業が多い印象です。成形時に歪みを調整したりと、人間の目や手で作業したほうが安心、かつ早いのかもしれませんね。また、一貫生産なので、POSのような細かい発注ができたりするのも大きな利点です。

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    電動アシスト自転車以外のスポーツサイクルをオーダーで作れるPOS

急な坂道もラクラク?

最後に、試乗コースでいろいろな車種に乗せてもらいました。工場内に設置してある試乗コースは、4度、8度、12度の勾配があり、角度によって電動アシストの具合を確認できます。4度の坂であれば、もはや坂でも何でもないようにぐんぐん進んで行きます。ギアチェンジの必要もない感じです。

8度になると、ちょっとペダルに負荷を感じるようになります。アシスト力を強化したり、ギアを軽めに設定すると快適です。12度ではアシスト力を最大、ギアを軽くするのは必須でしょう。“立ちこぎ”まではしなくてもなんとか登れますが、勢いによっては途中で失速して止まってしまうことも。ただ、この角度をアシストなしで登るとなると、かなりしんどそうです。

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    工場内に試乗コースを用意。左から4度、8度、12度の坂。見た目にも角度が違うのがわかります

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    8度の坂は、無理せずに軽く登り切れました

筆者が以前住んでいた横浜では、紅葉坂がそこそこ急な坂道として知られていますが、勾配でいうと実は6度くらいです。体験した12度の上り坂となると、そんなに出合うものではありません。もちろん、急勾配の坂道が多い場所に住んでいる人にとっては、電動アシスト自転車の魅力は言わずもがな。

最近はスポーツタイプやマウンテンバイクタイプの電動アシスト自転車も伸びてきており、趣味として楽しむ人が増えています。一度乗ったら病みつきになる電動アシスト自転車、試乗可能な店舗や試乗会の情報を探して、ぜひ体験してみてください。