ダイソンが2018年4月に発売した「Dyson Pure Cool 空気清浄ファン」。もとは2009年に羽のない扇風機「Air Multiplier」として登場したものですが、2015年にフィルターを装備し、空気清浄機能を兼ね備えた初代「Dyson Pure Cool」がデビューしました。

ここ数年「Dyson Pure Cool」シリーズは、ヒーターを搭載した亜種など、改良版が毎年発売されていますが、今回は本体の構造ごと見直され、大きく変貌を遂げました。そこで「Dyson Pure Cool 空気清浄ファン」の特徴と、自宅に3週間ほど設置して実際に試用してみた所感をまとめてみたいと思います。

  • Dyson Pure Cool

    筆者宅に設置したのは、右側の「テーブルファン」。3週間ほどリビングに設置してみました。写真は後日届いた「タワーファン」と並べて記念撮影した兄弟写真です

本体にディスプレイを搭載した

今回発売した「Dyson Pure Cool 空気清浄ファン」(以下Dyson Pure Cool)のラインナップは、背が高いタワーファンと、空気の放出口が丸いテーブルファンの2機種。空気清浄の目安は、いずれのモデルも30分で12畳。60分の場合はタワーファンが34畳、テーブルファンが36畳となっており、ともに従来モデルより性能が向上しています。

見た目からわかるように、Dyson Pure Coolにおけるもっとも大きな進化ポイントは、カラー液晶ディスプレイの搭載です。微粒子(ホコリ)、有害ガス・ニオイ、温度・湿度を検知する3つのセンサーで室内の空気状態をチェックして、リアルタイムにディスプレイ上で表示することが可能になりました。

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    送風部と、空気の吸引部の間に搭載されたカラー液晶ディスプレイ。グラフィカルに部屋の空気のモニタリングデータやリモコン操作の状態を表示します。写真は空気質を表示しています

従来製品でも空気の状態は、AndroidとiOSに対応したスマホアプリ「Dyson Linkアプリ」を通じて確認可能でした。もちろん、スマホ連携機能はDyson Pure Coolでも引き継がれていますが、空気の状態を本体側でも一目で確認できるようになり、空気清浄の効果をより実感しやすくなりました。

しかし使用して気になったのは、液晶ディスプレイに表示できるのが、室内の空気質(AQI)、粒子状物質(PM 2.5)、粒子状物質(PM 10)、VOC(揮発性有機化合物)などの項目のうち、1項目だけであること。ディスプレイに表示されていない項目を知りたい場合は、リモコンを使用して、表示を切り替えなければなりません。空気の状態が本体から確認できるようになったのは喜ばしいことですが、リモコンで切り替える必要があるのは少々手間。めんどうになり、次第にあまり画面をチェックしなくなってしまったというのが正直なところです。

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    リモコンの右上にある「i」ボタンを押すと、液晶ディスプレイの表示が切り替わります

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  • 写真左はNO2(二酸化窒素)の濃度。緑であれば安全、赤は濃度が高いということ。写真右は湿度。AQ(空気の質)のほかに、PM2.5やPM10の量、VOC(揮発性有機化合物)濃度、NO2(二酸化窒素)濃度、室温、湿度、フィルターの寿命まで本体だけで確認できます。ガス類は実数値でモニタリングできないのが残念……

それとは反対に、スマホアプリの画面を定期的にチェックするのがいつの間にか習慣になっていきました。というのも、アプリ側では時系列に従い、空気の状態が変化していく様子を折れ線グラフの表示で確認できるからです。窓を開けたり、掃除をしたり、料理をしたりといった室内の状況に応じて空気の質が変化していく様子が手に取るようにわかり、空気に対する感度と意識が知らないうちにアップしていきます。オート設定をしていると、空気の状態に合わせて本体側の風量が自動で変わり、空気が浄化されていく様子もアプリに記録されます。空気清浄機能がしっかり働いているとわかってうれしくなりますね。

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  • スマホアプリ「Dyson Link」のメイン画面。自分が暮らす地域の屋外データと、Dyson Pure Coolを設置した部屋の空気の状況を比較できます。空気の状態に応じて、アプリの部屋の色が緑、橙、赤に色が変わるのです。毎日観察していると、PM2.5やPM10は室外の汚染度に応じて、室内の値も高くなる傾向にありました

細かい心遣いがうれしい

Dyson Pure Coolにおけるもう1つのハード的な進化点は、「ディフューズドモード」の追加。風を本体正面ではなく、本体後方の開口部から風を送り出すことができる機能で、冬場の使用時に「風が当たって寒い」という問題が解消されました。この機能を実現するため本体の送風部分には、空気の流れを後方に誘導できる「バルブ機構」が採用されています。

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    Dyson Pure Coolの送風部。本体左側にあるのが通常の送風口です

  • 通常モードとディフューズドモード。途中でディフューズドモードに切り替えると、背後にある植物の葉が揺れているのがわかります

サーキュレーターとしても進化!

首振り角度の範囲も拡大し、サーキュレーターとしての実力もアップしました。45度、90度、180度、350度の4段階で設定が可能になり、ピンポイントでの集中送風から広範囲での空気の攪拌まで対応します。ダイソンの扇風機は羽根で風を巻き起こすのではなく、本体下側から吸い込んだ周囲の空気を増幅させて、風を勢いよく送り出す仕組み。直進的な風が特徴の1つでもありますが、首振り範囲が広がったことと掛け合わせてより風が拡散するようになりサーキュレーターとしての優秀さを感じました。

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    首振り角度はリモコンで切り替え可能。ボタンを押すごとにディスプレイに角度が表示されます

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  • スマホアプリからも遠隔操作できます。風量や首振りの設定についてはリモコンより直観的で操作性も良好

<mov02>首振り角度を350度で設定したときの様子

  • 首振り角度を350度で設定したときの様子

空気清浄の仕組みは?

空気清浄の仕組みは、本体下部へ360度にわたって配置された小さな穴から吸い込んだ空気を、フィルターを通してろ過して送り出すというもの。フィルターは外側から順にグラスHEPAフィルター、活性炭フィルターの2種類を装備。グラスHEPAフィルターは、従来よりも厚く表面積が増したうえ、HEPA材も6割増しとなり、PM0.1レベルの微細な粒子を99.95%除去する能力を持ちます。活性炭フィルターも含有する活性炭の量が3倍以上になり、有害なガスの吸着能力が向上しているとのこと。

リビングに3週間設置したあとでフィルターを確認したところ、外側は結構ホコリが吸着していたので、交換目安時期である1年後はどれほど汚れているのかと想像が膨らみます。

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    本体下部の小さな穴(プレフィルター)で360度から空気を吸引します

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    プレフィルターはすぐに取りはずしができ、中のフィルター着脱もカンタン! HEPAフィルターはこれまで以上に密度が高く、活性炭フィルターも活性炭がギッシリ。フィルターが本体と密着する部分にはゴムパーツを採用し、隙間からホコリなどが入り込むのをガードしてくれます

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    自宅のリビングに約3週間設置したあとのHEPAフィルターの外側。短期間ながら既に結構汚れており、空気中に含まれる汚れをしっかりキャッチしてくれているのだと実感