大手キャリアの顧客流出措置によって、昨年に入りこれまでの絶好調から一転して、苦境に陥っているMVNO。LINEモバイルがソフトバンクの傘下になるなど引き続き大手キャリアの攻勢が続く一方、「強いMVNO」となるべく新たな戦略を打つMVNOも出てきている。

LINEモバイルがソフトバンク傘下に

一昨年まで大手キャリアから顧客を奪い絶好調だったMVNO。だが昨年、大手キャリアがグループ外への顧客流出阻止を徹底したことにより、MVNOへと流出する顧客が大幅に減少し、一転して苦境に立たされている。その傾向は今年に入っても大きく変わっておらず、むしろ大手キャリアの攻勢が目立つくらいだ。

そのことを象徴しているのが、ソフトバンクが4月に、LINE子会社の「LINEモバイル」と資本業務提携し、実質的に傘下に収めたことだ。LINEの子会社として、2016年よりMVNOとしてスマートフォン向けの通信サービスを提供。LINEなど特定のサービスを利用した時の通信量をカウントしない「カウントフリー」を大きな特徴として打ち出し、鳴り物入りで参入したものの、市場環境の厳しさを受けてか単独での生き残りを断念。ソフトバンクの傘下に入ることとなった。

  • ソフトバンクはLINEモバイルを傘下に収めたことを発表。「LINE」の高いブランド力を活用し、ソフトバンク回線の契約獲得を推し進めるものと考えられる

LINEモバイルはソフトバンクの傘下となったことを受け、現在のNTTドコモの回線を利用したサービスに加え、ソフトバンクの回線を用いたサービスも展開することを表明している。一方でソフトバンク側は、知名度が高い「LINE」のブランドを活用したユーザー獲得ができるようになったほか、ワイモバイルで提供している「Android One」のオリジナルスマートフォンを、LINEモバイルでも販売することなどを表明。ソフトバンクの後ろ盾を得たことでLINEモバイルの会員獲得が強化され、ソフトバンク外へのユーザー流出阻止に大きく貢献する可能性は高い。

また4月27日には、NTTドコモが5月より、新しい料金プラン「ベーシックパック」「ベーシックシェアパック」を提供することを発表。これはauの「ピタットプラン」と同様の、通信量に応じて通信料が変化する段階制のデータ定額サービスで、NTTドコモはデータ通信量が少ない人向けの料金プランを、両プランへと一本化する方針を表明している。

  • NTTドコモは通信量に応じて料金が変わる新料金プラン「ベーシックパック」などを発表。他の割引サービスを適用し、家族で月額1980円で利用できる低価格を打ち出す

同日に実施された決算説明会で、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、「利用者分析の中で、通信料が少ない人の流出が少し多くなる兆候があった」と話している。そうしたことから両プランの提供も、顧客流出阻止の新たな取り組みの一環と見ることができ、大手キャリアのグループからの顧客流出を見込むMVNOにとっては一層厳しい状況になったといえる。