フォーティネットジャパン 社長執行役員 久保田則夫氏

フォーティネットジャパンはこのほど、2018年の事業戦略に関する記者説明会を開催した。初めに、社長執行役員の久保田則夫氏が、2018年の国内における事業戦略について説明した。

久保田氏は、企業ではビジネスのあらゆる領域にデジタル技術を導入してビジネスを変革しようとする「デジタル・トランスフォーメーション」が進んでいるが、デジタル・トランスフォーメーションに取り組むにあたっては、デジタル領域に対しセキュリティ機能、継続的な信頼性、アセスメントを提供する「セキュリティ・トランスフォーメーション」が必要となると説明した。

「現在、サイバー攻撃の領域が拡大しているが、これに伴い、ポイント・ソリューションが増え、新たな規制に対応しなければならなくなっている。また、変化する標的型攻撃に対応する要員とスキルの不足も問題となっているが、その解決策は自動化となる」(久保田氏)

久保田氏は、セキュリティ・トランスフォーメーションを実現するネットワーク・セキュリティ向けのアーキテクチャとして、「フォーティネット・セキュリティ・ファブリック」を紹介した。同アーキテクチャでは、「ネットワークの可視化と攻撃対象を包括的に保護」「最新の脅威の検知」「インシデント対応と継続的な信頼性」を実現する。

  • 「フォーティネット・セキュリティ・ファブリック」の概要

2018年の日本市場における取り組み

久保田氏は、2018年に国内市場で注力する取り組みとして「拠点拡大」「クラウド対応」「IoT/OT向けビジネス」「サービス拡充」「セキュリティ人材の育成」の5点を挙げた。

「拠点拡大」については、東京、名古屋、大阪、福岡に加えて、仙台に拠点を新設する。「われわれはSMBビジネスを手掛けているので、お客さまの駆け込み寺のような場を地方に増やしていきたい。加えて、現地のパートナーとの連携も深めていきたい」と、久保田氏は国内拠点を拡大する目的を説明した。

「クラウド対応」としては、同社が提供するクラウド型のセキュリティサービス「FortiCloud」のサーバを国内で展開する予定だ。FortiCloudでは、管理&ログ分析(FortiGate/FortiWiFi/FortiAP)、サンドボックス、ゼロタッチ・デプロイ(FortiDeploy)を提供している。

  • 「FortiCloud」の概要

「FortiCloud」は2009年から提供されているが、久保田氏が入社した2011年当初、バージョンアップが多いことから機能の入れ替わりが激しいなどの理由から、日本の顧客には不評だったという。そこで、安定した環境ができるようにしたことで日本のユーザーが増え、最近では、日本のサーバにログを保管したいというニーズが高まっており、それに応える格好だ。

「IoT/OT向けビジネス」について、久保田氏は「われわれの製品はこれまで工場にたくさん導入されており、OT側のセキュリティは得意分野。昨年から、制御システムセキュリティセンター、CC-Link協会、VECといった業界や協議団体への参画を進めている」と述べた。

また、同社の製品はICSの主要プロトコルに対応しており、2018年4月時点で、制御システム向けのシグネチャの数は1303に達している。

「サービス拡充」としては、2018年の第3四半期(7月-9月)に、24時間365日のサポートサービスの国内提供、障害時の部品先出し対応、利用しているハードウェアと同じビンテージハードウェアの保守部品提供サービス(Assure RMA)、24時間サポートおよび遠隔からの監視型サポートサービスなどの提供が予定されている。

「セキュリティ人材の育成」については、フォーティネット製品を最大限に活用するためのトレーニングプログラム「NSE(Network Security Expert)」、「Fortinet Fast Tracks」を推進するほか、グローバルで展開している「Fortinet Network Security Academy(FNSA)」を国内でも開始する。FNSAは、国公私立大学、IT関連の専門学校、非営利機関に対し、NSEプログラムの活用を可能にするもの。

2018年のソリューション戦略

フォーティネットジャパン 副社長兼マーケティング本部長 西澤伸樹氏

副社長兼マーケティング本部長の西澤伸樹氏からは、2018年に注力するソリューションの領域について説明があった。

その1つの領域が「専用機としてのFortiGateの訴求」だ。FortiGateは次世代ファイアウォールであるため、アンチウイルス、アンチスパム、IPS、Webフィルタリングなど、さまざまな機能を搭載しているが、あえて単一機能の用途での導入を増やす。

西澤氏は、「これまで、SD-WAN、IPS、Secure Web Gatewayにおいては、専業ベンダーがいたが崩れてきた。われわれとしては、セキュリティ・ファブリックに取り込める、これらの機能を搭載する専用機を出していく」と語った。

FortiGateのIPS機能は、調査機関であるNSS Labsから「recommended」という認定を受けており、「FortiGateのIPS機能は標準的なIPS製品よりすぐれており、FortiGateはIPSとして使っても問題ない」とアピールした。

2018年に力を入れるもう1つの領域が「顧客のクラウドシフトへの対応」だ。まず、プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドといったマルチクラウドに対するセキュリティ対策を提供する。パブリッククラウドについては、Oracle、Amazon Web Services 、IBM、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった主要なパブリッククラウドに対応している。

  • マルチクラウドへの対応

また、クラウドアクセスセキュリティブローカー・サービス「FortiCASB」を、セキュリティ・ファブリックに統合していく。「多くのCASBのベンチャーは大手のベンダーに買われてしまった。これは、CASBをプラットフォームの中に組み込まないと、ビジネスにならないという証拠」と、西澤氏はCASBの方向性について述べた。

久保田氏が述べた「セキュリティ・トランスフォーメーション」については、「グローバルでは、デジタル・トランスフォーメーションにおいてセキュリティの変革が必要だというのが共通認識。日本はデジタル・トランスフォーメーションが進んでおらず、いわば"受け身の"デジタル・トランスフォーメーションと言える。日本企業のデジタル・トランスフォーメーションをベースに、セキュリティ・トランスフォーメーションを提供していく」とした。

デジタル・トランスフォーメーションにおいては、プログラムはマイクロサービスに転換することから、変化に柔軟な対応が可能なネットワークが必要になることから、同社としてはSD-WANに注力していくという。