本連載もいよいよ3回目です。第2回ではNASとはなんなのか? バックアップに適しているRAIDとは? などについて解説しました。NASやバックアップについてのウンチクが長くなりましたが、早くデータをバックアップしたい! という人のためにもいよいよ実践編に突入します。
NASは多くのメーカーから発売されていますが、人気が高いのがNASキットです。NASケースと呼ばれる「ガワ」に、ユーザー自身が内蔵用HDDを組み込むといういたって簡単なものです。NASキットが人気の理由としては「比較的安価で大容量のNASが構築できる」「内蔵するHDDを自分の好みで選択できる」などがあります。
デメリットとしては、NASケースとHDDは別々に購入するのが一般的で、メーカーも別々。そのため、HDDやNASケース個々の保証はメーカーや販売店から受けられますが、万が一、相性の問題で動作しない場合は自己責任となってしまう点です。
相性問題を回避するためには、動作実績の報告が多いモデルを選ぶことがキモとなります。今回は、NASケースもHDDも、バックアップ界隈では超ド定番なモデルを使ってNASを構築してみることにします。
今回は超ド定番の製品でいくぜ
ここからは、実際にNASケースとHDDを使ってNASを構築してみようと思います。その前に、筆者は10年以上前からNASを使用しており、何台ものNASを構築してきた経験があります。しかし、今回使用したNASケースの進化ぶりには驚きを隠せませんでした。その辺りは順を追って説明していきます。
さっそく、今回使用したNASケースをご紹介しましょう。現在のNAS市場でひときわ高い人気を誇り、手軽な価格、申し分ない性能を備えた超ド定番モデル、Synologyの「Synology DiskStation DS218j」(以下、DS218j)です。
DS218jは、SATA 3接続のHDD×2基を搭載可能な2ベイタイプ。日本語の管理画面や豊富なアプリケーションに対応し、バックアップ用途だけでなく、さまざまな用途に使える高コスパモデルとなっています。
内蔵するHDDには、こちらも自作PC界隈では超ド定番であるWestern Digitalの「WD Red」を選びました。
Western DigitalのHDDは、BlueやBlack、Purpleといった色になぞらえたブランド分けをしています。RedはNAS向けに最適化されたモデルで、高耐久が特徴で長期間の連続使用に特化しています。NASを構築するのであれば、最有力候補でしょう。
NASケースは2発(2ベイ)のモデルをチョイスしたということで、HDDも2つ用意します。このとき、容量が違うものや別メーカーのものでも動作は可能ですが、同じメーカーの同じモデルの同容量モデルが理想です(というか必須といってもいいレベルです)。特にRAIDをミラーリングで使用することを考えると、容量は同じものでそろえるのが合理的です。
値ははるけど大容量を買った方がよさげ
DS218jとWD Redを2基で、合計7万円弱もコストがかかってしまう計算になります。コストを抑えたい場合は、HDDの容量を少なくするとよいでしょう。
特に6TB以上の大容量モデルは、1GBあたりの単価が高額なので、コスパが良いとはいえません。現在ですとWD Redの3TBモデルが1万2,000円前後、4TBモデルが1万5,000円前後となっており、この辺りの容量帯がオススメできます。
導入コストとの兼ね合いで、HDD容量の選択に迷うところではありますが、予算があるのなら、大容量を選択することに越したことはありません。NASは一度構築すると、再構築するのに手間と時間を要します。
例えば、バックアップデータが数TBにもおよぶ場合、データのコピーだけで数時間、下手すると1日では終わらない場合もあります。ましてや、NASケースが1台しかない場合、単純にPC上のエクスプローラーでコピーするといった手法が使えず、NASの機能を使うか、HDDを1台ずつ入れ替えるなど、初心者にとってはピーキーなやり方を迫られるため、一度構築したNASは退役させるまで使い倒す気持ちでHDD容量を選択すべきだと考えます。
つまり、いまは4TBも容量は必要ないとしても、将来的にバックアップデータが増えそうなことが予測される場合は、少しコストを割いてでも大容量を選ぶほうが、のちのち後悔しなくて済みます。でも、大事なことなのでもう1度いいますと、現在であればHDD容量は3TBか4TBがコスパ的にオススメです。
今回、DS218jとWD Redという超ド定番な組み合わせをチョイスしましたが、NASケースはお好みのを選んだとしても、HDDはWD Red一択と考えるのが筆者の結論です。バックアップ用途と考えたときに、少しでも信頼性の高いHDDが理想だからです。なんといってもデータロストだけは避けたいものなので……。