クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンが再び攻めに転じる。2015年度下期の大量閉店から出店を抑制していたが2018年度から一転、年間10-20店の出店を目指す。店舗改装や新業態の展開も実施するなど、再成長への挑戦が始まった。

  • 3月15日にリニューアルオープンした旗艦店の有楽町イトシア店

大量閉店の真相

クリスピー・クリーム・ドーナツは米国発のドーナツチェーンだ。日本には2006年に上陸、かつては店舗前に行列ができ、大きな話題となった。それも今や昔。行列を目にすることはなくなった。

ドーナツに関する大きな動きを見れば、最大手のミスタードーナツが長年苦戦を強いられている。市場も緩やかに縮小しており、ドーナツそのものの人気が低下しているとも思わせる状況だ。だからこそ、流行が去り、業績が悪化してクリスピー・クリーム・ドーナツは大量閉店に追い込まれたのでは? と想像されてしまう。

  • 2015年度下期に大量閉店を開始。最盛期には64店舗あったという

しかし実態は違うようだ。同社の若月貴子社長は次にように説明する。

「業績が悪いから大量閉店をしたのではない。当社が20年、30年と日本で残っていくために、店舗の営業力の再評価をする必要があった。関東、東海、関西に店舗を集中させて建て直しを図ろうと考えた」(若月貴子社長、以下、発言同氏)

2015年度下期に実施した大量閉店の真相は、再成長に向けて、経営資源の集中の結果に過ぎないというのが同社の説明だ。

今は第2創業期

では、大量閉店以降、現在まで同社は何をしてきたのか。若月社長はこの間を「第2創業期」と位置づける。これまでは再成長のための地盤固め、今年度からが飛躍という位置づけだ。

これまでに実施したのは商品力とサービスの向上。商品では看板商品のオリジナルグレーズドに迫る人気のブリュレグレーズドを日本発で企画・開発。ブリュレグレーズドは2017年度のグローバルの商品開発賞を受賞したほどだ。その他、日本発の企画・開発商品が多数生まれており、日本での開発商品は、世界のクリスピー・クリーム・ドーナツでも注目を集めているという。

  • クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンにはブリュレグレーズドなど日本発の開発商品が多い

サービス面では属人的ナレッジに依存したやり方から、トレーニングツールと評価ツールを刷新。サービスが生み出す顧客単価の違いなど具体的なデータを提示しながら、意識を改革し、スタッフの育成に努めた。

結果として、顧客・従業員満足度が上昇。既存店売上も2017年8月以降7カ月連続してプラスになっている。あらゆるところから上向いていることについて「目新しいことはやっていない。QSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)といった当たり前のことに取り組んだだけ。社員一人ひとりがよりよい品質を、よりよいサービスをと意識したことで業績に結びついた」とする。

  • スタッフ育成にはデータという納得感も必要かもしれない

  • 業績改善の秘訣は顧客・従業員満足度にありそうだ