ランボルギーニ・マセラティ・ポルシェなど高級外車メーカー11社の正規ディーラーであるSKY GROUPは自社の採用サイトにWatsonを搭載したAIチャットボット「Talk QA for Recruit」を導入し、就活生からの質問に24時間365日対応している。
同社では、より志望度の高い就活生を集客するため2年前に自社採用サイトを立ち上げた。狙い通り採用サイト経由でエントリーした就活生の方がリクルートサイトや就活イベントでのエントリーに比べが遥かに多く採用試験に進んでいる。
「以前はビックサイトなどで行われる就活イベントへ頻繁に参加していましたが、企業名を露出する機会になるものの志望度の高い学生に出会える機会は少ないのが現状でした。そのため、参加費やリソースを考え、最近は自社の採用サイトに訪問する就活生に注力する方針へと変わっています」と採用担当の宮森氏は話す。
採用サイトは自社の採用コンセプトを全面に打ち出せることもあり、「高級外車ブランド」を取り扱うスカイグループらしく、ビジュアル重視でテキストを少なく抑えラグジュアリーなイメージに統一した。しかし、ラグジュアリーなイメージを優先しテキストを少なくしている分、採用担当者へ直接問い合わせが寄せられることも多くあり、就活生の知りたい情報を反映しきれていないのが課題だった。そこで目を付けたのが採用に特化したAIチャットボット「Talk QA for Recruit」だった。
同氏は「自社サイトへ訪問する学生にとって必要な情報が十分に掲載できているのか?と懸念していたこともあり、学生がリアルに知りたい情報を取得し、それを分析したうえでサイト構築したいと考えていました。AIチャットボットであれば、就活生が直接質問を打ち込んでくれるので、問い合わせに自動回答するだけでなく、リアルな疑問・要望を収集できると思い導入を決めました」と話す。
自社採用サイトを立ち上げたことで、年末年始やお盆など休暇中のサイト訪問者が多いことも分かった。AIチャットボットであれば採用担当者が不在時に就活生をフォローできるのも魅力だ。
「新卒だけでなく中途採用の募集もしています。そうした方々は休み期間中に就職活動を行う方が多く、我々が問い合わせに回答できない際にAIチャットボットが回答することで、他社とのアドバンテージにもなると思っています」
応募者側からすると、いつ何時でも問い合わせに回答してもらえるのは好印象である。さらに、新たな取組みを先駆けて行う姿勢も学生にはプラスに映るのではないだろうか。
AIチャットボットというと、作り込みに工数がかかるイメージもあるが、同社が採用した「Talk QA for Recruit」は、採用に特化したAIチャットボットのため、事前に学習されテンプレート化された約100の質問に回答を用意するのみ。就活生がよくする質問を厳選しているので、自社の回答をアレンジして入力するのみで一定の回答率が見込める。
「予め用意された質問(エクセルシート)に複数の回答を入れるのみだったので、2日間で学習データは完成しました。その後ベンダーであるエクスウェアに微修正をしてもらい、約1カ月で構築しました」(宮森氏)
新卒の採用活動が活発化する12月にスタートした同社のAIチャットボット。開始から約1カ月が経過したが、これまでに約200人からの問い合わせを受け、質問数は約1,000件にも上る。就活生からの問い合わせは同様の内容が多いことから、正答率も6~7割と開始1カ月にしては比較的高い。
すでに多数の質問が寄せられていることから、当初の狙い通りAIチャットボットを通じて得た情報は、自社採用サイト改修ヒントにもなっている。さらに非対面だからこそ質問をしやすい一面もあり、「どれくらい稼げますか?」など、採用担当者には直接寄せられない質問も多くあったようだ。
「非対面だからこそ質問を投げかけ易いというのはあって、採用担当者に直接聞けないことも積極的に質問してもらえています。そうした質問は担当者が見ることで、就活生が知りたい情報や疑問を把握できる機会にもなり、早速採用サイトの改修を検討しています」(宮森氏)
さらに「Talk QA for Recruit」の導入は、就活生のリアルな要望を吸い上げると同時に、採用担当者の負荷軽減にもなっている。
宮森氏は、「AIチャットボットが一定の問い合わせをカバーすることで、採用担当者の電話やメールによる問い合わせ対応は約3割弱減少しています。基本的に直接問い合わせをする就活生は志望度の高い学生なので、連絡をいただいた1人1人に手厚い対応ができるようになりました」と、対応の質が向上したと話す。
「AIチャットボット」は業務の効率化を目的に導入する企業が多いが、それだけでなく、エンドユーザーの「リアルな声」の収集にも適していると言そうだ。回答精度を高めることが難しいと言われるAIチャットボットだが、採用に特化したソリューションを使えば短期間である程度のレベルにまで仕上がり導入ハードルも低い。AIは早くから導入し、使ってみることが重要だと言われる今、まずは企業の採用チャットボットとして導入してみるのもいいかもしれない。