スマートスピーカーの広がりで、音声操作に対応したAIアシスタントが徐々に普段の生活に取り入れられてきている印象がある。Cortana、Alexa、Googleアシスタント、Clovaなど、その種類はさまざまだ。

富士通クライアントコンピューティングは2017年12月、「FMV」個人向けPCシリーズにAIアシスタント「ふくまろ」を搭載。同社は2018年1月16日に開催した法人向けPCの製品発表会、および戦略説明会で「ふくまろ」の紹介とデモンストレーションを行った。

  • 富士通のAIアシスタント「ふくまろ」

「ふくまろ」とは何か? 何ができるのか?

「ふくまろ」は、2017年12月26日に発表された、27型液晶一体型PC「ESPRIMO FH90/B3」および、23.8型液晶一体型PC「ESPRIMO FH52/B3」などに搭載される、同社のAIアシスタント。2017年10月以降に発表された富士通製PCにもアップデートで搭載でき、Microsoftストアから対象PCへアプリをインストールすることができる。

  • ふくまろを起動させた「ESPRIMO FH90/B3」

ふくまろを搭載したPCでは、通常は手動で行うようなファイル検索や動画、音楽再生に加え、IRコマンダーをPCに接続することで、テレビや家電、照明などの家電操作を、音声で行うことができる。例えば「ふくまろ、去年行った沖縄の写真を見せて」「ふくまろ、ももいろクローバーZの曲をかけて」「ふくまろ、昨日録画した番組を再生して」などと声をかけることで、目的の操作を手軽に行える。「ありがとう」や「どこの住んでるの?」「特技は?」といった日常会話や雑談にも応答し、お天気情報も教えてくれる。

このほか、Skypeと連携し、家の中の様子を外部から確認することができる(類するものとして、ソニーモバイルのコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」にも同様の機能がある)。ふくまろを起動してSkypeの設定を行い、外出先などから「家の様子を教えて」とメッセージを送ると、PCのWebカメラを利用し、その場の写真を撮影して、Skypeで送信する。

  • ふくまろができること、その1。PC内のコンテンツ再生

  • ふくまろができること、その2。IRコマンダーを使った家電コントロール

  • ふくまろができること、その3。外出先から部屋の中の様子をチェックする

  • PCがシャットダウンしていると、外出先から連絡してもふくまろは起動できない

スマートスピーカーとどう違う?

ふくまろでできることは、スマートスピーカーとほとんど同じのようにも見える。ではスマートスピーカー、引いては他のAIアシスタントとふくまろは、どこが違うのだろうか。

大きな特徴のひとつは、"インターネットの接続なしでも動く"こと。ふくまろは、富士通のAI技術「Zinrai」(ジンライ)をベースにしたAI。「Zinrai」は主にAPIとして提供される法人向けAI技術で、目的に合わせ画像認識や自然分解析、音声合成、感情認識などが行える。

ふくまろでは音声合成などの技術が使われているが、基本的な処理をPC内で行っており、他のスマートスピーカーやAIアシスタントのように、インターネットに接続した処理を行ってはいない。このため「プライバシーという意味では、PCの中でクローズすることが一つの特徴。自分もすべての個人データをクラウドに上げるのは不安がある。(ローカルとクラウドの)いいとこ取りをしていきたい」と、富士通クライアントコンピューティング代表取締役社長の齋藤邦彰氏はコメントする。

多くの機能がPC内で使用でき、プライバシーにも配慮されるが、一方で「●●を検索して」「××への行き方を教えて」といった、インターネット接続を前提とした利用はできない。ただし、天気情報は、一日一度、気象庁のサーバにアクセスしデータを受信している。これに加え、外出先から部屋の様子をチェックしたり、家電を操作したりする場合など、一部の機能にはインターネットが使われる。

  • ふくまろが目指す便利な暮らし

  • 富士通クライアントコンピューティング代表取締役社長の齋藤邦彰氏は、"ふくまろ帽"を着用して「ふくまろ」を紹介した

「かわいさ」や「キャラクター性」も重視

ふくまろの開発を担当する、富士通クライアントコンピューティング ソフトウェア開発統括部の若山氏は、「ふくまろ」ならではの特徴として、明確なキャラクター性を挙げる。AIアシスタントでは強調されていない、ビジュアルとしての"かわいらしさ"や、"人間味のある性格"といった部分だ。

  • ふくまろの公式サイトに掲載されているプロフィール。ふくまろの中央に書いてある文字は、ふくまろが何をしているかによって変わる

FMVに搭載するAIアシスタントの構想、開発は、1年前から行われていた。そのキャラクター案は当初30案ほどあったが、最終的には7案まで絞られた。しかし、最初の30案の中にも、最終候補の7案の中にもふくまろのアイデアは無く、議論を重ねる中で「降って湧いた存在」(若山氏)だったという。他のキャラクター案も検討されたが、最終的に愛されるビジュアルや親しみやすい性格であることが重視され、決定された。

キャラクターの造形は、ふくろうの賢さと、家を守り福を呼ぶ達磨を組み合わせたもの。デザインは、富士通のプロダクト全般を手掛けるデザインチームが担当している。一人称は「まろ」で、話す時の語尾も「まろ」。公式サイトによると、ふくまろは「だるま型アンドロイドで」、「近い未来のだるま市からコロコロ転げ、お寺の池から現代へタイムスリップ。転げすぎて、未来の記憶がない」……と、細かく背景が設定されている。

齋藤社長はふくまろを提供する目的を「PCは何でもできる」ことを訴求するためだと話す。「AIスピーカーは使い方が難しいことが問題だと考えている。(FMVの新モデルは)『ふくまろが何でもやってくれるPC』がコンセプト。ふくまろの一番の目的は、『PCで何でもできる』のを訴求すること」(齋藤氏)。今後はふくまろをアップデートしていき、個人の好みに応じた提案を行うパーソナライズや、感情認識機能なども想定する。需要があれば法人への提供も検討するという。

  • ふくまろの今後の発展。個人の好みに応じた提案や感情認識ができるようになるかもしれない

  • 発表会では、ふくまろのいる暮らしをアピールする寸劇も行われた。家族旅行の行き先で、お父さんはドライブ、おじいちゃんは温泉、お母さんは買い物、娘は海外と意見がわかれ、収集のつかない状態になったが……

  • ふくまろに尋ねると、温泉付きの海外ツアー(レンタカー利用プラン)が提案され、一堂納得する流れに