日本では民泊新法(住宅宿泊事業法)が2018年6月に施行され、少なくとも法制度上は民泊のGoサインが明確に出ることになる。Airbnb=民泊というイメージが定着しつつある中で、いかに「体験」を、トリップという付加価値を広めていくのか。

「『体験』は私たちにとってあくまで一部です。2011年~2012年頃に『滞在(民泊)』が順調に軌道に乗り、次のステップとして総合的な旅行体験の一部に『体験』があると考えました。レストラン予約も含め、私たちの価値は一つのアプリですべてを完結できること。それは、『差別化の中心は人』という私たちの考えも含め、既存のパッケージツアーにない『人と触れ合う体験』を大切にすることが、これまでとは違う価値だと思います」(Zadeh氏)

例えば「体験」を利用した1週間あたりのユーザー数は、今年の1月から20倍に伸びたという。主なユーザーはミレニアル世代で、2/3が35歳未満だという。これは、口座の開設でさえアプリの利便性で銀行を選択する若年層ならではの「一つのアプリですべてが完結できる」ことを重視した結果だと言えよう。

  • 福田氏(左)のような上質なホストを多く抱えられる仕組みがAirbnbのメリットだが、絶対数ではアソビューに大きく劣る

Zadeh氏は、現在の東京の「体験」が訪日外国人ばかりであると前置きした上で「サンフランシスコで言えば地元が多い。長期的には、市場に対してたくさんの上質な『体験』を提供していけば、東京でもこの傾向は変わっていく」(Zadeh氏)と話す。

現状のAirbnbは全世界の「体験」が約3100件であり、日本で「体験」を提供する代表格のWebサービス「アソビュー」の1万7864件(12月4日時点)と比較すると格段に少ない。アプリUI・UXの統合体験が重視される世の中になりつつあるのは説明するまでもないが、コンテンツ量の格差は集客する上で少なからず足かせとなるだろう。

また、福田氏のカヤック体験ページに代表されるように、マルチ言語表示にも対応しておらず、現状は「インバウンドビジネス」としての魅力に偏っている。これでは、いくらホストが「人柄」や「情熱」を持ってユーザーに接しても、インバウンドと両輪となる「日本人のユーザー増」というZadeh氏の描くロードマップにも支障をきたす可能性がある。

Airbnbとしては、昨年7月に東京・新宿にオフィスを開設し、日本人スタッフの拡充も進めている。MicrosoftやGoogle、Facebook、Twitterのように日本に根ざしたサービスと成長できるかは、Zadeh氏ら米Airbnbが抱くビジョン以上に、日本法人の働きにかかっていると言えそうだ。