Windowsストア改め「Microsoft Store」は、これまでアプリケーション(以下、アプリ)やゲーム、楽曲、映像といったコンテンツを配信してきたが、いまその枠を大きく広げようとしている。新たな名称についてMicrosoftは明言していないが、すでにWindows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)ではUWPアプリが「Microsoft Store」という名称に改まっている。

  • 名称が「Microsoft Store」に

    改称したUWPアプリ「Microsoft Store」

過去に何度か触れてきたように、「Windows」から「Microsoft」への改称は大きな意味があると筆者は考えている。Microsoftは1980年後期から培ってきたWindowsブランドの存在を消してしまうかのように、Windows AzureをMicrosoft Azureへと改め、そしてWindows 10+Office 365+EMS(Enterprise Mobility+Security)のセットをMicrosoft 365として提供している。本アプリの名称変更も少なからず同社のブランド戦略が影響していると見るべきだろう。

さて、名前以外でもアプリに注目すべき点はいくつかあるが、1つはMicrosoft Store経由でダウンロードできるコンテンツの増加である。以前からWindowsでは、Windows Updateを始めとするコンテンツ配信システムを用意しているが、更新プログラムやデバイスドライバー、OS関連ツールの配信に留めてきた。だが先日、Microsoft Store経由で、欧文フォントであるArialファミリーの1つ「Arial Nova」をダウンロードできることを確認した。

  • Arial Nova

    Microsoft Storeからダウンロードできる「Arial Nova」

以前からコンテンツ配信システムで言語パックをダウンロードできたが、フォントに関してはあらかじめ用意したパッケージ単位でしか入手できなかった。今後Microsoft Store経由でフォントが個別にダウンロード可能になると、利用者は必要なフォントだけをローカルストレージに保存し、同じMicrosoftアカウントを使う別PCでも環境を整えられるなど、メリットは多い。

もう1つの注目点は、ハードウェアの購入も可能になったことである。筆者は通常の検索方法で見つけられなかったが、コマンドラインから「ms-windows-store://navigatetopage/?PageName=ShopSurface」を実行すると、Microsoft StoreからSurfaceシリーズ本体や関連アクセサリが購入できるようだ。

実際には購入していないので、推測の域を超えないが、ページレイアウトはWeb版Microsoft Storeと類似し、<購入>ボタンを押すとWindows Helloによる本人認証を求められる。そのまま認証を進めれば、おそらくMicrosoftアカウントに紐付けたクレジットカードでデバイスを購入できるだろう。

  • Surface購入ページにもアクセスできる

    Surface購入ページもMicrosoft Store経由でアクセスできる

  • レイアウトはWeb版に似ている

    ページレイアウトはアプリと異なり、Web版Microsoft Storeに似ている

Microsoft Storeという名称はUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリ版とWeb上のEコーマスサイト、そして実店舗で使っている。今後Microsoftはブランド構築の観点から、これらを統合しつつ、UWPアプリ版Microsoft Storeを、ハードウェアの販売やOSコンポーネントを配信する新たなコンテンツ配信システムに位置付けるのだろう。

  • Web版Microsoftストア

    Web版Microsoftストアの同ページ。察する同じコンポーネントを使って、UWP版Microsoft Storeのページを構築しているのだろう

筆者はMicrosoft Storeがどんなコンテンツでも取り込み、新しい販売チャネルになっても利用者の利便性につながるのであれば、それでよいと思う。冒頭で述べたようにMicrosoftは改称について黙して語らず、日本マイクロソフトも準備中であると示唆していた。両社には何らかの形でMicrosoft Storeのビジネス戦略を明らかにして、新たな価値を提示してほしい。

阿久津良和(Cactus)