JR大宮駅の改札を出て西口のイベントスペースへ向かうと、おにぎりや飲み物が並んだ棚が設置されているスペースが目に入ってくる。

緑色を基調とした内装からJRが運営するコンビニのように思われるが、一般的なコンビニと明らかに異なる点が存在した。店員がいないのである。それも、不在にしているのではなく、店員の立つレジが見当たらないのだ。

実は、このスペース「JR東日本スタートアッププログラム」の1つとして、期間限定で設置されたAI無人決済による店舗。好きなアイテムを手に取れば、商品の会計を自動で行ってくれるので、利用者は交通系電子マネーでタッチするだけで購入できるというものだ。

AI無人決済システムを導入した店舗

237件の応募から選ばれた19件のイノベーションプログラム

JR東日本は11月20日、大宮駅西口イベントスペースにおいて、「JR東日本スタートアッププログラム」のテストマーケティング報道発表会を開催した。

同社は2017年4月から、「TICKET TO TOMORROW~未来のキップを、すべての人に。~」をコンセプトにした、オープンイノベーション型のビジネス創造活動「JR東日本スタートアッププログラム」を実施している。JRグループとの協業によるテストマーケティングを行う「アクセラレーションコース」と、JR東日本が事業構想の具体化を支援する「インキュベーションコース」の2つで参加企業を募ったところ、アクセラレーションコースでは133件、インキュベーションコースでは104件の計237件の応募があった。

書類審査とプレゼン審査の結果、応募の中から、アクセラレーションコース11件、インキュベーションコース8件の実施が決定。報道発表会のあった11月20日からはアクセラレーションコースで採択された11件のうち、7件のテストマーケティングが開始される。

JR東日本の表輝幸氏

発表会で登壇したJR東日本 執行役員 事業創造本部副本部長の表輝幸氏は「我々はこれまでの駅を中心としたビジネスから、街づくり、暮らしづくりへと事業フィールドを広げてきました。今回のプログラムでは、起業家の皆さまのエネルギーと我々の持つリソースを掛け合わせることで、新しいビジネスを生み出し、便利でワクワクするような未来を創っていきたいと考えています」と、同プログラムへの期待を述べた。

本稿では、大宮駅で11月20日から開始されたテストマーケティングの内容を中心に紹介する。なお、11件中4件は、順次テストマーケティングを開始していく予定だという。

改札だけじゃない! レジも待たずにタッチ&ゴー

システムコンサルティングなどを展開するサインポストとの協業プランが「AI無人決済」による無人店舗だ。同社のAI無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を組み込んだポップアップストアでは、天井に設置されたカメラと商品棚に設置されたカメラによって「誰がどの商品を取ったのか」をAIが把握。自動的に手に取った商品の合計金額が計算され、交通系電子マネーをかざすだけで支払いを行うことができる。

店舗の様子

商品の陳列風景

各商品にカメラが設置されている

天井に設置されたカメラで人の動きを把握

デモンストレーションでは、商品選択から購入まで一連の流れを実践してくれた。

まずはストア入り口にあるゲートにSuicaをかざし、入店

いくつかの商品を手に取り会計に進む。ちなみに、一度おにぎりを手に取ってから戻し、別のおにぎりを選ぶというような行動をしても、正しく購入商品を認識していた

決済端末の置かれている場所に立つと会計がスタート

金額が表示される

Suicaをタッチすると会計が行われる

出口のゲートが開くので、レシートを受け取って退店する

なお、テストマーケティングの実施期間は11月20日から26日までだ。

デジタルサイネージで、空席情報が1秒でわかる

空席検索サービスなどを展開するバカンは、駅内にある複数のレストランやカフェなどの空席情報を表示するデジタルサイネージのテストマーケティングを行っていた。サイネージには店舗情報に加えて、空席や行列の状況を表示。ひと目ですぐに入店できるレストランを探すことができる。

空席情報は、各店舗のセンサーやカメラを用いた画像認識技術、管理者の手入力により把握、表示されるという。

空席情報が表示されたデジタルサイネージ

画像認識によってカメラに写った店舗の様子から空席状況を把握

今回は飲食店に加えて、大宮駅のみどりの窓口についてもおよその待ち時間を表示。また、サイネージだけでなく、スマートフォンでも混雑状況を把握できるようになっている。

みどりの窓口の待ち時間がわかる

サイネージ上に表示させたQRコードを読み取ることで、クーポンを入手することが可能だ。

アプリで簡単に自分の腰痛タイプを診断

京都大学大学院医学研究科発のスタートアップであるバックテックは、オンライン腰痛タイプ判定サービス「ポケットセラピスト」と、ジェイアール東日本スポーツのノウハウを組み合わせたトレーニングプログラムを提供する。

テストマーケティングの様子

「ポケットセラピスト」は簡単なアンケートに答えていくだけで、自分の腰痛タイプを診断してくれるアプリ。腰痛といっても人によって痛む場所や痛み方は異なり、同じ改善方法を行ったとしても効果のないケースがあるという。

今回の取り組みは、アプリで簡単に個人の腰痛タイプを見える化し、エキナカフィットネスで改善を目指すというもの。今回のテストマーケティングでは、フィットネスクラブ「ジェクサー」で各人の腰痛タイプに合った対策トレーニングプログラムを提供する。大宮駅での腰痛判定体験会は11月20日から26日まで、トレーニングプログラムの期間は12月頃までを予定している。

ポケットセラピストのアンケート画面

ポケットセラピストの腰痛タイプ診断結果画面

そのほか、仙台空港で取り組みを始めるWAmazingのインバウンド旅行者向け無料SIMカードサービスや、2018年1月からテストがスタートする人間ドック受診者に向けた食事管理サービスなどの紹介も行われていた。