ソフトバンク・ビジョン・ファンドは「グッドスタート」
ソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)では、この半年間で1案件平均1,000億円の大型投資を20社ほど行った。孫氏は「この短期間でこれだけの大型投資をしたベンチャーキャピタルはこれまでなかった」と自負する。投資の事例として、ビジネスコラボレーションプラットフォームの「slack」、登録ディベロッパー90万社以上の地理情報プラットフォーム「mapbox」、インドで市場シェア60%を持つEコマース「Flipkart」などを挙げた。氏が掲げる"群戦略"に沿った「グッドスタートだと思っている」と述べた。
これに加え孫氏は、サウジアラビアで計画されている新都心計画に、ソフトバンクが積極的に関わって行くことを明らかにした。その一つとして同社は、同国内の電力供給を一手に行うサウジ電力に大株主として参画する。これまでオイルに頼った火力発電を行ってきたものを、SVFが中心となり、恵まれた太陽光と土地を生かして世界最大の太陽光発電のインフラを立ち上げる計画だという。
ソフトバンクはすでに30件ほどの太陽光発電案件を動かしている。そのノウハウを元に、サウジ国内で設備の生産も行い、1社独占の会社の経営に参画することで、世界で最も自然エネルギー使用比率の高い企業にしようという考えだ。同時に、SVFがベンチャーだけでなく、電力会社のような大きな既存企業であっても、ビジョンを持って革新を目指すところには投資を行っていく姿勢を示す形となった。
質疑応答で太陽光発電に積極的な理由を問われると、孫氏は3.11直後の国内の電力危機を挙げた。電気がないと通信ができないことを改めて認識し、原子力発電に危機感を持ったことから、一時はソフトバンクの社長を辞めてでも福島の問題を解決に行きたいと、役員会では「大げんかになる勢いだった」。その時に、本業は情報革命だが、一部自然エネルギーについての事業を行うことになり、結果として「事業としても成り立つことがわかった」という。
「地球に生きている人間として、ノウハウを得た以上は地球規模で問題解決に貢献したい。AI、IoTを使って最先端、人に優しい、自然に優しいものを、これまでよりも安価にできるように、ということで解決策が見えたと思っている。それをサウジから積極的に広げていきたい」
しかし、それを日本へ広めることについては「書き物に書かれていない」ものも含めた規制のがんじがらめで「難しい」とこぼす。だが「地球に貢献するにはどこでやっても同じ」と、できるところから押し拡げて行く意思を示した。群戦略と並び、SVFの活動する方向に孫氏の思い入れの色が一層濃くなっていることが現れている。