虹から降りてきたユニコーンみたいだ。これがiPhone Xの第一印象だった。その美しいフォルムは目も及ばず、筆舌に尽くしがたい。前面部の殆ど全部がディスプレイで、それとボディを継ぎ目の分らないように成型するというエレガントなカーブを描くデザインに魅了された。
筆者は今、iPhone Xを目の前に、あらためて"言葉の無力さ"を切実に感じとっている……どんな言葉を、どんな形容詞を劇的に並べたとしても、その文章はiPhone Xのあまりにもインテリジェントな機構と溢れる未来感の前に化石と化してしまうのだから。
本体前面と背面のパネルはこれまでの50%深い強化層を持つカスタムメイドのガラスを使用。これは、かつてスマートフォンに採用されたものの中で最も耐久性に優れるという。ガラスの仕上げは、インクを7層にわたって重ねるプロセスが正確な色相と不透明度をもたらし、リュクス感漂うものとなっている。ガラスパネルが採用されたのは無線充電機能に対応させるためだ。ボディを囲むステンレススチール製フレームも、Apple特別開発によるもので、ルックスの良さだけでなく、医療に使われるレベルの耐久性も兼ね備えている。今回のカラーはスペースグレイとシルバーとなっているが、スペースグレイのほうは、フレームの色とガラスの色が正確にマッチするように、物理蒸着と呼ばれる処理が施された。これが継ぎ目の分らないデザインの秘密である。対してシルバーはApple Watchのステンレススチールケースが採用されたモデルを思わせる仕上がりだ。それぞれに味わいがあり、どっちが好みかは意見が分かれそうではある。本体は汚れや指紋をサッと拭き取れるよう撥油コーティングが施され、耐水、防沫、防塵性能も採用。このあたりはiPhoneスタンダードな仕様と言って良いだろう。
前面。ホームボタンがなくなった |
背面。デュアルカメラは縦方向に配備 |
右側面。電源ボタンを兼ねるサイドボタンとSIMスロットを配備 |
左側面。音量ボタンとミュートボタンを配備 |
上部。ボタンおよび端子類は無し |
底部。スピーカー、Lightning端子を配備 |
そして、ディスプレイ。「Super Retina HDディスプレイ」と命名されたディスプレイは有機EL(OLED)を採用。大きさは5.8インチで解像度は2,436×1,125ピクセル(458ppi)と、iPhone史上、最高の解像度を誇る。コントラスト比は1,000,000:1と液晶ディスプレイとは比較にならないほど高い。その反面、OLEDは、色域や明るさが弱点となるのだが、iPhone Xでは、デジタルシネマ規格であるDCI-P3の広色域に対応させている。周囲の光に合わせてディスプレイの色と明度を自動的に適応させる「True Toneテクノロジー」ももちろん採用されているが、その技術を支える環境光センサーはiPhone 8/8 Plusの4チャンネルに対し、6チャンネルと2チャンネル多い。これにより、環境光が持つ色温度に合うように画面上のホワイトバランスを調整してくれる。実際にディスプレイを覗いてみると、実際にそこに紙が貼り付いているかのように見える。より自然に、より快適にテキストを読めるようになるのだ。さらにディスプレイはハイダイナミックレンジ(HDR)に対応。映画などをDolby VisionやHDR 10で楽しめる。再現性も高く、特に黒い部分の階調の滑らかさに驚かされる。前面部は殆どディスプレイということもあって、映像に対する没入感もかなりのものだ。折り曲げ技術と回路積層技術で本体のカーブに沿ってコーナーの先端まで広げられたとのことだが、ひとつひとつのピクセルを調整する「サブピクセルアンチエイリアス」と言う処理と相俟って、端の部分までしっかり「絵」を作っているという印象だ。