プロジェクトを説明する土屋敏男氏

土屋氏がなぜこのプロジェクトに関わることになったのか。「『鎌倉今昔写真』という企画がスタートだった。『カマコン』という運営団体が日本テレビと共同でこの企画を始めたことで、ほかの地域でも同様のことができるのではないかと思った」(土屋氏)。そこで白羽の矢が立ったのが渋谷だったというワケだ。

そして、なぜ1964年なのか……これはもう明白だ。1964年といえば、東京オリンピックが開催された年。2020年に東京オリンピックをひかえ、当時と2020年の東京の様子を比較できるというのがねらいだ。そこでこのプロジェクトが始動したというわけだ。

写真から作成された1964年の渋谷。中心に五島プラネタリウムのドームとかまぼこ屋根が確認できる。ともに今はない

では、どのように当時の渋谷を再現するのか。前述したとおり、過去の写真を広く集め、それをスキャンしデジタル加工することで街並みを甦らせていく。そのためには1人でも多くの方に協力してもらい、写真を集めなくてはならないと土屋氏は話す。公式サイトに写真投稿機能を設けるほか、郵送での投稿も受け付けているそうだ。デジタルにあまり馴染みのない世代の方々も参加できる仕組みを作っている。

異なる世代をつなぐ取り組みに!

ここに、もうひとつのねらいがある。写真をスキャンしデジタル加工するのは、デジタルハリウッドやバンタン高等学院の生徒だ。おそらく、昔の渋谷の写真を所持しているのは年配の方々だろう。そうした方々が、学生たちとコミュニケーションできる場にもなるはずだ。ある意味、世代をつなぐ取り組みともいえる。

そして、このプロジェクトに強力な援軍が現れた。ひとつは渋谷区。そもそも1964年の渋谷をVR化しようという取り組みだ。区として参加するのは当然だろう。渋谷区長の長谷部健氏は、「あの電波少年の土屋プロデューサーからの協力要請とあって、どんな無茶振りをされるのかドキドキでしたが、お話しをうかがって、区にとても有意義と感じました」と話す。そして早速、約400枚の写真を提供したそうだ。

そしてもうひとつの援軍が東京急行電鉄。取締役社長 野本弘文氏は、「渋谷は東急にとって、もっとも関わりのある場所。90年間おせわになった土地に恩返しができれば」と語る。そして、東急も約400枚の写真を提供した。

東急電鉄 取締役社長 野本弘文氏(左)と長谷部健渋谷区長