もちろん、DJIにも課題はある。現状のドローンは日々の改良があってもバッテリー上の制約、搭載貨物重量の限界、カメラの映像データを活用したインテリジェンス機能の限界から、「世界中のどこでも、誰もが使える」というレベルには至っていない。

「日本に限らず世界中で、ドローンを活用する分野・事例のイメージがまだまだ湧いていないと思う。今はある程度のレベルに達しており、『どうやったら仕事を効率化できるか』『人の命をどう救えるか』を考え、知るための準備期間。その期間だからこそ、私たちは新しい技術をツールとして提供し、企業や消費者がそれをどう使うべきか、考えてもらえればと思う。ドローンの可能性は、すなわち利用する人たちのイマジネーション次第ではないか」(On氏)

技術的制約は自分たちの手で解決していく。むしろ、その成長過程を見守り、ロードマップの先にどう活用できる未来を描けるかがドローンの未来を作るというのがOn氏の考え方だ。「投げっぱなし」にも思えるが、それはスマートフォンのビジネスモデルに近しい部分がある。

スマートフォンはあくまでディスプレイとカメラとOSを手のひらサイズに押し込んだ「ミニPC」。それが、「手のひらにPCがあれば何ができるのか」を真剣に考えたアプリ開発者たちの手によって、エコシステムが回り出し、世界中で使われる存在になった。iOSやAndroid OSは、あくまで世界を広げる「場」を提供したに過ぎないのだ。

現状のドローンは各国の法規制からどこでも、誰もが簡単に飛ばせるわけではない。また、前述の課題だけでなく、飛行時の騒音や将来的には管制システムによる地域制御といった問題が生じるとも予測されている。それでもDJIは技術的課題を一つずつクリアしてドローンの可能性を広げようとする。この姿勢こそが、次の「グローバル・スタンダード」へと繋がるのではないかと感じた。