サントリー提供の緑茶「伊右衛門」が切り開いたとされるプレミアム緑茶セグメント。その成功を受けて日本コカ・コーラが上林春松本店の監修を受けて開発した「綾鷹」もまた、その地位を確かなものにしている。綾鷹が2007年に誕生してからこの10月で10周年。その節目のタイミングに、コカ・コーラは通常の綾鷹の一段上を行く「綾鷹 珠玉の深み」をリリースした。
コカ・コーラは、この珠玉の深みこそが「プレミアム・ラインナップの製品」だと謳っており、綾鷹を監修する上林春松本店 代表取締役の上林 秀敏氏も「自信を持っている」と話す。上林氏と、日本コカ・コーラ マーケティング本部 ティーカテゴリー 緑茶マネージャーの吉田ミシャール氏に、話を聞いた。
創業450年の歴史、上林春松本店が得たもの
綾鷹といえば「選ばれたのは綾鷹でした」のキャッチフレーズでお馴染みであり、競合の伊右衛門と同じく京都の老舗茶舗の監修を受けてプレミアム緑茶として販売されてきた。緑茶市場は伊藤園「お~いお茶」の一強とも言われているが、2004年から販売されている伊右衛門、そして2007年に登場した綾鷹も緑茶ブランドとして親しまれていることに違いはない。
上林氏によれば10年前、綾鷹のリリース時には「(自社監修と謳う製品を出すことに)かなり心配していた」と話す。それは、本業における長年付き合いのある顧客や小売部門、法人販売への悪影響を懸念してのことだったという。
「製品開発に協力するという立場から、緑茶の専門家としての技術、知恵を提供してきました。それが、茶葉を組み合わせる合組(ごうぐみ)や、茶葉の味わいや品質を最終確認する茶葉認定式といったものです。一方で私たちも、お手伝いして名前を出している以上、お客さまの期待を超える出来に仕上げてこそ、本業との相乗効果が生まれます。そういう意味ではこの10年の成果は最初に抱いていたイメージ以上のものでした」(上林氏)
またこの10年で、日本コカ・コーラとの信頼関係を築けたことはもちろん、マーケティングデータを活用するといった従来の茶舗としてのビジネスとは異なる文化が上林春松本店にいい影響を与えたそうだ。
「私たちの本業の製品開発は『市場調査』というものはなく、お客さまとの対話を積み重ねることで嗜好を探っていくビジネスの手法でした。もともとは茶葉に対する知見の提供がミッションでしたが、製品開発のプロセスの中でさまざまなデータに触れられたことは財産。マーケティング用語などは最初、一つひとつの言葉の理解にも苦労していましたが(苦笑)、そこで触れたものを自社で取り入れられるものは積極的に取り入れました。ある意味で一番良かったことは、私たちが大量生産品とどう違いを生み出すのかを反面的に見いだせたこと。茶園限定商品、タイアップ商品というものを大切にして高い品質を保つ。さらにその製品のPR、売り方などには、綾鷹で取り入れたものを利用しています」(上林氏)