右から順に1位のソンカ選手、2位の室屋選手、3位のマクロード選手。「インディ500」の聖地で決戦を迎えた (c)Red Bull Content Pool

千葉大会で室屋義秀選手が2年連続優勝し、注目を集めたレッドブルエアレース。その年間8戦の最終戦となるインディアナポリス大会が、10月14日・15日(日本時間は15日・16日未明)に開催される。室屋選手の年間成績は総合2位で、インディアナポリス大会の結果によっては初の年間総合優勝が視野に入った。

大空を駆けるスポーツ、エアレース

千葉大会では海上にコースが設置された (c)大貫剛

ラウジッツ大会では陸上にコースを設置 (c)Red Bull Content Pool

まず、レッドブルエアレースとはどんな競技かについては過去の記事(大空を駆けるスポーツ、エアレースの魅力をゼロから解説)で詳しく解説しているが、要点を簡単にまとめよう。

レッドブルエアレースを一言で言えば、モータースポーツの飛行機版だ。世界最高のアクロ飛行パイロット14名がプロペラ機を操り、1機ずつコースを周回してタイムを競う。コースはエアパイロンと呼ばれる巨大な風船状の塔でできており、パイロンを正しく通過できなかったり、衝突したりするとペナルティが課される。

「ラウンド・オブ・14」の組み合わせは予選の10位と5位、11と4位といった具合に決定される。7組の一騎打ち(ヒート)の勝者と、敗者の中で最速だった者が「ラウンド・オブ・8」に進み、タイム順に4つのヒートに割り当てられる。それらの勝者4名は「ラウンド・オブ・8」の飛行順で「ファイナル4」で飛行する (Redbull Airraceプレスリリースより)

パイロンは特殊な布でできた風船で、機体が接触すると絡み付かないよう裂けるようになっている (c)大貫剛

競技は1大会につき4回の飛行で行われる。

  • 予選では14人全員が順に飛行し、そのタイム順で本戦の組み合わせが決定される。予選と言っても全員が本戦に進出する。
  • 本戦の1回戦は14人の選手が順に飛行し、7組に分かれて一騎打ちする「ラウンド・オブ14」。それぞれの勝者7名と、敗者のうち最も速かった1名の合計8名が勝ち残る。
  • 2回戦は8名の選手が飛行して4組に分かれて一騎打ちする「ラウンド・オブ8」。4名が勝ち残る。
  • 決勝戦は4名が飛行して、タイムで順位を決定する「ファイナル4」。

最高速度は時速約300km、コース周回に要する時間は1分前後。アクロ用飛行機のダイナミックな動きとパイロットの繊細な操縦が魅力だ。

残り1戦、室屋選手は2位で優勝圏内

レッドブルエアレースは世界各地で年間8大会開催され、大会ごとの順位でポイントを加算し、年間王者が決定される。この競技に2009年、アジア人で初めて参戦したのが室屋義秀選手だ。以後、徐々に実力を高めた室屋選手は2016年の千葉大会で初優勝。2017年はこれまでの7大会中、千葉大会を含む3大会で優勝という大活躍を果たした。現在の上位5名とポイントは以下の通りだ。

  • 1位 マルティン・ソンカ(チェコ) 63点
  • 2位 室屋義秀(日本) 59点
  • 3位 ピート・マクロード(カナダ) 56点
  • 4位 カービー・チャンブリス(アメリカ) 52点
  • 5位 マット・ホール(オーストラリア) 37点

レッドブルエアレースは優勝選手に15点が与えられ、11位以下は0点。したがって1位から15点以内の上位4選手にチャンピオンの可能性が残されている。2位の室屋選手は4点差なので、室屋選手が優勝してソンカ選手が3位以下、あるいは室屋選手が2位でソンカ選手が4位以下であれば室屋選手が初の年間王者に輝くことになる。

最多優勝も現在2位、室屋選手を待っていた試練

千葉大会で優勝後、笑顔でインタビューに答える室屋選手。しかし予想外の試練が待っていた (c)大貫剛

ところで、各選手の優勝回数を見ると、室屋選手が3回なのに対し、ソンカ選手とチャンブリス選手は2回、マクロード選手は0回だ。最も優勝回数が多い室屋選手が2位に甘んじているのは、優勝した大会以外での順位が低いことを意味する。

室屋選手は初戦のアブダビ(UAE)で失格してしまい13位でスタート。続くサンディエゴ(アメリカ)と千葉で連続優勝し、ソンカ選手と並んでトップになった。このとき室屋選手は「すべての大会で優勝することは難しいが、「ファイナル4」に残り続ければ年間チャンピオンに立てる」と語っている。実際、次のブダペスト(ハンガリー)では「ファイナル4」に進出して3位となり、ソンカ選手を破って首位に立った。

ところが室屋選手は続くカザン(ロシア)で「ラウンド・オブ14」で敗退、ポルト(ポルトガル)でも「ラウンド・オブ8」で敗退。ポルトで優勝したソンカ選手にポイントを離されてしまう。どうしてこのようなことになってしまったのか。実は千葉大会のあと、室屋選手は筆者に自分の課題を語っていた。

王者に求められる「平常心」

インディアナポリスで公式練習に臨む室屋選手。その歩みはチャンピオンを目指す (c)大貫剛

室屋選手は2016年に千葉大会で優勝したものの、年間順位では6位に終わった。このことについて室屋選手は「ここ一発でタイムを縮めようと、つい突っ走ってしまった」と語った。平常心で確実に飛ぶことが重要というわけだ。しかしカザンでは悪天候に気を取られて集中力を欠いた。ポルトではソンカ選手との直接対決で、スタート速度が規定を上回るというペナルティにより敗退してしまった。

2大会連続で苦杯をなめ、後半戦は不調に終わるのかとも思われた室屋選手だが、第7戦のラウジッツ(ドイツ)では3回目の優勝を果たし、首位ソンカ選手と4点差の2位につけることができた。平常心を取り戻した室屋選手の復活劇は、最終決戦の地インディアナポリスにも続くだろうか。大会は予選・本戦とも日本時間で未明になるが、ネット中継で見られるほか、本戦はNHKのBS放送でも生中継される予定だ。

緑色の室屋機と室屋選手(操縦席部分に立っている人物)の横を、公式練習飛行で飛び抜けるソンカ選手。年間チャンピオンは誰の手に (c)大貫剛

レッドブルエアレース公式Webによるネット中継のスケジュール

  • 予選:10月15日 5:05~6:25
  • 本戦:10月16日 2:05~4:50 (※天候などにより遅れる可能性あり)

また、NHK BS1でも「エアレース世界選手権」として10月16日 2:00~5:00に放送が予定されている。

次回は引き続きインディアナポリス会場の紹介と、予選のレポートをお伝えする。