シャープ 専務執行役員 スマートホームグループ長 兼 IoT通信事業本部長の長谷川 祥典氏は、「食品宅配市場は堅調に拡大しており、市場規模は、2兆782億円が見込まれ、そのうち約2000億円の市場が、カット野菜、料理キットなどを提供する食材市場。この市場をターゲットに展開し、2020年までに10%のシェア獲得を目指す」と話す。つまり、単純計算で言えばこの事業だけで200億円の売上を目指すことになる。

人に寄り添うIoT企業が目指す世界

ヘルシオデリで、シャープが目指しているのは、「食のIoT化によるバリューチェーン」を確立だ。例えば開発したレシピを料理キットとして提供するだけでなく、レシピのデータを配信することでヘルシオを通じ、シェアの技を再現できる。さらにユーザーからのフィードバックをシェフに反映するといったことも可能になる。

「東京にいながら、地方、世界の料理を、自宅にいながら楽しめる。シェフは離れた場所に住む人に提供することができるようになり、これをきっかけに、レストランにまたやってくるといった新たな機会の創出にもつながる」(シャープ・松本氏)

白物家電がIoT化すれば、料理キットをコンテンツに見立て、提供できる。これによって、食の世界にイノベーションを起こせるという狙いがある。2020年に約200億円という事業規模は、ヘルシオの事業規模と「ほぼ同等規模」(シャープ・長谷川氏)。この数字の達成には、週末向けプレミアム料理キットだけでなく、日常食といったメニューの拡充が必要になる。

事実、シャープは日常的に新たな収益を生むビジネスへの拡大を考えており、副社長の野村氏が株主総会で言及したような、冷蔵庫の在庫管理をベースにした食品流通ビジネスまで、青写真を描いている。これは、シャープが次々と打ち出しているハードウェアとしての家電依存から脱却した収益モデルの確立の一つの例だ。

シャープが目指す「人に寄り添うIoT企業」の回答の一つ、食品流通という新ジャンルが3年後にどう結実するかが、「今後のシャープらしさ」に繋がっていくことだろう。