広告ブロックと新たな広告システム

さて、Braveの特徴的な機能の1つである広告ブロックを試してみよう。図11は米国Yahoo!のトップページを表示したところである。

図11 米国Yahoo!ページを表示

ページの真ん中部分に何も表示されていない。本来は、この部分に広告が表示される。右上のBraveのマークには、小さく「13」と表示されている。このボタンをクリックすると、保護設定パネルが表示される。

図12 保護設定パネルを表示

ここで、いくつの広告や追跡をブロックしたかの統計が表示される。さらに、新しいタブを表示すると、ここでも広告ブロックなどの統計情報が表示される。結果として、どのくらい速く、表示が行えたかも示している。

図13 新しいタブ

また、プライベートモードもあるので併用すれば、より確実に個人情報などを守ることができるだろう。

図14 プライベートタブ

このようにBraveでは、かなり強力に広告をブロックできる。一見すると、ユーザーにとっては好都合かもしれない。しかし、広告主にとっては、広告収入がなくなり死活問題となる。Webサイトの運営者にとっては、優良なWebサイトであっても、運営を継続することが困難になり、最終的にはユーザーの利便を損なうことになってしまう。

現在の広告の仕組みは、ユーザーが商品などを購入したり広告を閲覧することで、広告主に一定の利益をもたらす。さらに利益の一部がWebサイトの運営者に還元される。ここで注意したいのは、お金の流れが、一方向である点である。そこで、Braveでは広告主からユーザーに向けてのお金の流れを定義した。いってみれば「広告を見てくれた謝礼」とでもいうべきであろう。これが、BraveはWeb閲覧するだけでBAT(上述のデジタル通貨)を得られるブラウザといわれる理由である。

さらに、ユーザーからWebの運営者へ直接、BATを送金することもできる。具体的には、この記事は役に立った、おもしろかったので、少しはお金を支払おうということになる。その試金石となるのが、Brave Paymentである。従来の寄付の方法では、なんらかの決済サービスを登録する必要があった。もしくは、サイトごとにクレジットカード番号を入力するといった大きな手間がかかる。Brave Paymentは匿名のシステムでもあり、その敷居を下げるものといえるだろう。

ユーザー、広告主、運営者の三者にそれぞれ、利益がでる仕組みとなっている。さらに、無駄な広告や改ざんされた広告といった、本来なくてもよい広告を減少させることが期待できる(結果として、表示の高速化につながる)。現時点で、問題点も存在する。最大の壁は「広告をブロックするブラウザには協力できない」という広告主や運営者の存在だろう。いかに仕組みとしては優れたものであっても、ユーザーを含めた三者の同意がなければ成立しない。今後、このあたりがどうなるかがポイントとなるだろう。

実際にBraveを使用しての感想であるが、表示は速いという印象である。特に、ポータルなどのような広告が多いサイトでは、広告ブロックの効果は確実に表れている。基本的な機能も今のWebブラウザとしては、ほぼ十分なレベルに達しているといえるだろう。しかし、もっとも否定的な意見をあげるとすれば、アドオンのような拡張機能を持っていないので、速くて当然といったものである。たしかにもっともな意見である。

Chromiumベースであるので、将来的にChrome用のアドオンが利用可能になる可能性もある(あまり多くは期待できないが)。Firfoxの代わりとなるかについては、この理由によりやや厳しいであろう。とはいえ、さまざまな新たな取り組みが行われているブラウザである点はまちがいない。その過程のなかで、将来、どういうブラウザになっていくか? 興味を持って見守りたい部分も存在している。期待してもいいかもしれない。