既報のとおりMicrosoftは「Windows 10 Pro for Workstations (以下、Windows 10 Workstations)」を発表した。ReFS (Resilient file system)、不揮発性メモリモジュール (NVDIMM-N)、SMBダイレクトのサポートと、最大4プロセッサに対応したことがその特徴だ。MicrosoftはビジネスシーンでのWindows 10普及を目指すため、ワークステーション領域でも存在感を示そうとしている。では、我々エンドユーザーに対して、Windows 10 Workstationsは何をもたらすのだろうか。

Windows 10 Pro for Workstationsの特徴

まずは各機能について簡単に解説する。ReFSは2012年9月にリリースしたWindows Server 2012が最初に実装したファイルシステム (開発コード名 : Protogon) だった。ストレージをグループ化し、可用性を高める「記憶域スペース」などでの利用を想定し、データ破損を防ぐ仕組みや自動修正機能などを備える。限界に達したNTFSに変わる存在だ。

だが、ReFSはサーバーOS専用という訳ではない。クライアントOSへはWindows 8.1から実装したが、この時点ではWindows Server 2012 R2と同じReFS 1.2。現在のWindows 10はReFS 3.2を実装している。

Windows 10 バージョン1703のReFSはバージョン3.2だった

下図はWindows 10 バージョン1703 (Creators Update) のダイアログだが、ReFSを利用するには1度NTFSでフォーマットしなければならない。この操作でLFS (Log File Structure) のバージョンが2.0に更新され、ReFSが選択可能になる。なお、USBメモリなどの外部ストレージはLFS 1.1を引き続き利用しているため、コンセプトも相まってReFSは利用できない。

Windows 10 バージョン1703では、ストレージをフォーマットする際にReFSを選択できる

蛇足だが、Windows 10 Insider Preview ビルド16257では、ReFSによるフォーマットは実行できなかったが、ドライブをマウントすると、バージョンは3.3に更新されるため、Windows 10 Workstationsも最新版を実装すると思われる。

メモリモジュールの話に移ろう。我々が普段使っているメモリはPCの電源を切るとデータも消えてしまう揮発性メモリだ。一方、非通電時もデータを保持するのが不揮発性メモリだが、大容量ストレージとしての普及には至っていない。だがこの5月、IntelはMicronと共同開発した不揮発メモリ技術「3D XPoint」をデモンストレーション発表した。2018年のリリースを予定している。

2017年5月にSAPが開催した「Sapphire Now 2017」でIntelが披露した「persistent memory」のデモマシン

不揮発性メモリの用途は幅広く、HDDやSSDに置き換わるストレージデバイスとなる可能性も高い。ただ、上図のデモマシンで実行しているのは、SAPのインメモリデータウェアハウスであるHANAの開発版。あくまでもワークステーションやサーバー向けであり、エンドユーザー向けのPCでも不揮発性メモリが利用されるのはかなり先となるだろう。

SMBダイレクトは目新しい機能ではない。CPU負荷低下とスループット向上などを実現するSMB 3.0の機能の一つだ。こちらも不揮発性メモリと同じく高額なため、我々が恩恵を受けるのは先の話だ。

Windows 10 ProでもSMBダイレクトは利用可能 (Homeは不可)

最後のCPUサポート数増加は自作PCユーザーであれば、メリットになる可能性がある。下図に示したのは、Windows 10の各エディションがサポートするCPUソケットと論理プロセッサ (LP) 数、最大メモリ容量をまとめたものだが、大半のユーザーが64ビット版のWindows 10 Proの制限を超えることはないだろう。

Windows 10の各エディションがサポートするCPUソケット数や最大メモリ容量

このように一部のPC好事家以外、個人としてWindows 10 Workstationsを選択するメリットは皆無である。名前が示すように業務利用が前提となるエディションであり、通常のPCにWindows 10 Workstationsを展開してもオーバースペックなのだ。それでも筆者のように最上位エディションに惹かれる方もいるだろう。まずは価格の発表を待ってから判断したい。

阿久津良和(Cactus)