Mozillaは8月8日 (米国時間)、Webブラウザ「Firefox」のバージョン55.0の安定版 (Windows/Mac/Linux)をリリースした。Windows版がWebVRをサポート、Firefox 54でデフォルト有効になったマルチプロセス機能をユーザーがコントロールできるようになり、またたくさんのタブを開いたセッションを高速に復元できるようになった。

WebVRは、Web技術を使ってWebブラウザで仮想現実 (VR)体験を実現するためのAPI仕様だ。ソフトウエアをインストールすることなく、手軽にVRコンテンツを利用できる。Firefox 55はOculus RiftやHTC ViveといったVRヘッドマウントディスプレイをサポートし、VR用コントローラで操作しながら没入型のVR体験を楽しめる。DaydreamやCardboardによるスマートフォンを使ったWebVR体験をサポートするGoogleのChrome、Windows Mixed RealityをサポートするMicrosoft Edgeに、RiftやViveをサポートするFirefoxが加わって、モバイルからPCまでWebVRを利用しやすくなった。

ほかにもFirefox 55では、Windows版でいくつかの重要な強化が行われた。64ビット版のWindowsで動作して2GB以上のRAMを搭載するPCにおいて、インストーラを使うと64ビット版のFirefoxがデフォルトでインストールされる。Mozillaのテストでは、4GBのRAMを搭載したPCでFirefoxがクラッシュする回数は64ビット版の方が39%少ない。なお、すでに32ビット版をインストールしているユーザーに対しては、次のリリースで64ビット版への自動移行を実施する予定だ。また、Windows 10 Anniversary EditionでVP9のハードウエアアクセラレーションを有効にする設定が設けられた。オンにすることで、VP9ビデオの視聴による消費電力やCPU利用を削減できる。

Firefox 54で正式導入されたマルチプロセス「e10s」をユーザーがカスタマイズできるようになった。設定の[一般]の[パフォーマンス]パネルで、最大4つに設定されていたe10sのコンテンツプロセスを変更できる。大量のRAMを搭載していてより多くのメモリーをFirefoxが消費しても問題ない場合は、コンテンツプロセスを増やすとFirefoxのパフォーマンスがさらに向上する。逆にコンテンツプロセスを減らしてメモリー消費を少なくすることも可能。

メモリー消費を抑えながら安定して応答性を向上させるe10s、ユーザーの環境に応じてコンテンツプロセスのカスタマイズが可能に

Quantum Flowプロジェクトの技術によって、数多くのタブの復元が短時間で行われるようになった。Mozillaが行った1691個のタブを開くテストで、Firefox 51は起動に8分近くを要し、2GB近いRAMを消費した。Firefox 55は15秒で起動し、RAM消費は500MB以下だったという。

アドレスバーのユーザーインターフェイスが改善され、これまで検索ボックスで利用できた検索サービスの切り替えをアドレスバーでも行えるようになった。アドレスバーに検索語を入力すると、ドロップダウンメニューの下に登録してある検索サービスが表示される。モバイルノートPCのように画面サイズが限られるデバイスで、検索ボックスを外してアドレスバーだけにしても、それまで同様の検索機能を利用できる。

これらの他、WebRTC対応のステレオマイクのサポート、ブックマーク/履歴のサイドバーを右側に表示するオプションの追加、リーダーモードの印刷プロセスの簡素化などが行われている。