事業規模3倍を早期に達成する方針

自己投資を軸に、提携先を含めてグループの規模を拡大していくことにより、経済圏として進化していくことがライザップの目標だ。さまざまな商品・サービスを提供することで、顧客とは長い付き合いの構築を目指す。顧客層の拡大に向けてはシニア層の取り込みに力を入れている様子。その方針もあってか、トレーニングジムのコマーシャルでは最近、年齢層が高めの人選が目立つようになっている。

ライザップのコマーシャルに出演している女優の石田えりさん。「シニア層の取り込み」について述べた段落の後に画像を掲出するのは申し訳ないほどの仕上がりだ(画像提供:RIZAPグループ)

経済圏というからには規模も重要になりそうだが、ライザップは2020年度に達成すべき目標として、グループの連結売上高で3000億円、連結営業利益で350億円を掲げる。ちなみに、2016年度の連結売上高は952億円、連結営業利益は102億円なので、つまりは規模を3倍以上に引き上げるということだ。

経済圏の拡大には投資も不可欠となるだろうが、ライザップは東証一部上場も視野に入れる。その時期は「そう遠くない」とのことだった。上場で獲得する資金の使い道については「やりたいことは沢山ある」とはぐらかされたが、面白いデータも聞けた。

瀬戸社長によると、一般的に、企業の自己資本利益率(ROE)は8%以上が理想的との研究がある。ライザップのROEは「40%~50%」で、これは日本でも有数の数値なのだという。上場で資本金が増えた場合、ライザップは高いROEを維持するためにも、成長を続け、利益を増大させていく必要があるわけだ。

海外にも拡大の余地

ライザップ経済圏の拡大を続けるため、ライザップは海外にも目を向けている。「三日坊主で悩んでいないところはない」というのが瀬戸社長の見立て。ジムではシンガポール、台湾、香港、上海に上陸済みだが、シンガポールと台湾では黒字化が見えてきたとのことだった。2017年度はローカルのトレーナーへの権限委譲も進めたいと瀬戸社長は語る。

インタビューでは、1つ聞けば5つ返ってくるといった感じの受け答えが印象的だった瀬戸社長。まだまだ手掛けたいことは山ほどあるという雰囲気だ

瀬戸社長の学生時代の体験をルーツとするライザップだが、顧客の自己実現を支援するビジネスモデルは順調に拡大している様子。自己投資という切り口の設定は絶妙で、これであれば幅広い分野に事業を拡大していっても不思議ではない。日本で成功したビジネスモデルは、これから成熟していくであろう多くの国でも通用するかもしれない。

“人は変われる”という理念の共感者をどれだけ増やせるかが今後の焦点となりそうだが、世の中にはおそらく、“自己投資”という言葉に何となく気恥ずかしさを感じたり、ライザップと自分とは関係ないと思い込んでいたりする人が少なからず存在するはずだ。個人的には、そういう人達にライザップがどのようにコミットしていくのかも今後の見所だと感じた。