AppleはWWDC 2017で、2017年秋に正式版がリリースされる予定のiPhone/iPad向け「iOS 11」を披露した。数々の新機能の中で、今後のAppleの業態変化にとって、非常に大きなインパクトを与えそうなのが「Apple Pay」の進化だ。今回のWWDC 2017で、Appleは、Apple Payに個人間送金の機能を持たせた。ユーザーはSiriやiMessageを通じて、簡単にお金を送ることができるようになる。この新しいサービスについて考えていこう。
Apple Payとして個人間送金をサポートした背景には、同種のサービスへのニーズの高まりがある。かつてはPayPalが個人や企業に対する送金、請求などのサービスを展開してきた。現在の個人間送金で最も勢いがあるのは、Venmoだ。VenmoはBraintreeに買収され、そのBraintreeがPayPalに買収されたことから、PayPal傘下の個人間決済アプリ、というポジションに落ち着いている。
Venmoや、競合となるSquare Cash、Facebookメッセンジャーの送金機能などの仕組みはほとんど同じだ。
ユーザーはセットアップの際に銀行のチェッキングアカウント(当座預金口座)を登録する。通常、銀行のカードはVisaなどのネットワークに対応しており、クレジットカードのような16桁の番号と有効期限、セキュリティコードを登録するだけだ。
このセットアップを行うことで、アプリを通じて、他の人に送金することができるようになる。送金を行うと、通常は、銀行口座の残高から引かれ、相手に送金される。送金を受け取った人は、サービスに残高がプールされ、自分の銀行口座にすぐに振り込める。銀行の口座を用いた資金の移動に手数料はかからない。
個人間送金は、最もカジュアルな用途であれば食事をした時の割り勘や、何かを頼んでいたときの立替のお金を支払う際、キャッシュを持ち歩かなくて良くなる、というメリットがある。また音楽のレッスンなど個人でサービスを提供している人にとっても、キャッシュを介在させずにお金がやりとりできる仕組みは利便性が高い。
Venmoは現在、2億300万人のアクティブユーザーを抱えており、2016年の年間トランザクションは、176億ドルだった。