自転車好きにとって、パイオニアのイメージは"ペダモニのパイオニア"だ。パイオニアのサイクル事業の歴史はペダリングモニターシステム発売後わずか4年と浅いが、サイクリストにイメージを浸透できたのはどうしてなのか。第3回は国内市場で存在感を築けた理由に迫る。

話を伺ったサイクルスポーツ事業推進部 藤田隆二郎氏(左)とサイクルスポーツ事業推進部 碓井純一課長(右)

他の電機メーカーが成功できない理由

筆者はサイクリストだが、今回、パイオニアに話を聞くまで知らなかったことがある。それは、ここ数年の自転車ブームを背景として、電機メーカーがサイクルコンピュータを開発し、販売していたことだ。

製品の存在が知られないという事態はパイオニアにも起こりえたことである。パイオニアは2008年12月からパワーメーターの開発に取り組み、2013年7月に「ペダリングモニターシステム」を発売した。この間に、何らかの目立ったアクションがなければ、サイクリストに認知さえしてもらえない製品になったかもしれない。

しかし、パイオニアの場合、そうはならなかった。

「今だから言えますが、販路の開拓が本当に大変でした」と碓井氏は話す。2013年7月に製品をテスト発売するまで、自転車販売店に意見を聞いて回ったが、「あのパイオニアさんが、なぜ自転車部品を?」というような返しもあったという。

そればかりではない。パイオニアが開発したペダリングモニターシステムは、10万円台半ばの高額商品。トレーニング機材であり、売るべき相手は競技志向が比較的高い人だ。そのため、売り先は量販店ではなく、プロショップとなる。そのため、プロショップに強い販売代理店と組むのが定石なのだ。

とはいえ、販売代理店にとって、パイオニアは新参者。パイオニアさんがなぜ? という流れになる。そこへスムーズに食い込めたのは、ペダリングモニターシステムがすでに広く知れ渡っていたからだ。

前回も記したとおり、パイオニアはテスト販売前から、すでにワールドチームに機材供給を行っていた。それ以前も、日本最大級の自転車展示会、サイクルモードで話題を作っていた。認知度はあった。だからこそ、プロショップへの販路も比較的スムーズに開けたのだ。